コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
遊作が突然「チョコ食べたい」と駄々をこねてこねてこねまわしたがために、猛暑の厳しい日差しが照り付ける中、近くのディスカウントストアまで足を運ぶ羽目になった。
ジュディ
店から少し離れた曲がり角の電柱の傍で、ジュディはふわりと身体を浮かせて上空に向かった。
電柱の上に座り、レジ袋の中を探る。
チョコのついでに買った棒付きキャンディーを一つ取り出し、包み紙を剥がす。少しくらいアシスタント業をさぼっても問題ないだろう。どうせ自分に出来るのはベタと消しゴムかけぐらいのものなのだから。
キャンディーを口に含む。甘ったるいコーラ味が舌の上に広がる。
包み紙を右手に一旦握り込み、ゆっくり開くと、そこにあった包み紙は灰となって風にさらわれていった。
華乃衣
不意に聞こえてきた声に下を見下ろすと、緑色のエプロンを付けたベリーショートの女性が、キョロキョロと忙しなく辺りを見回していた。
その女性には見覚えがある。ついさっきディスカウントストアのレジにいた店員だ。
金はちゃんと払ったはずだが、と思いつつ、女性の隣に音もなく降り立つ。
華乃衣
よほど急いで駆けてきたのか、女性は額に汗を滲ませ息を切らしている。それでも、ジュディの姿を見ると、彼女はにっこりと愛嬌のある笑みを浮かべた。
華乃衣
女性がジュディの手を取り渡したのは、一円玉三枚。
ジュディ
ジュディは呆れ顔だが、女性は笑顔を崩さない。
三円程度ならレジ金に誤差が出ても厳しく叱られることはないだろう。ごまかすのもそう難しくはない。こっそり募金箱にでも入れてしまえばいいのだ。
彼女の笑顔がいわゆる営業用スマイルというやつなのか、心からのものなのか、ジュディには見当も付かない。だからといって追求する気もない。
華乃衣
一度は背中を向けた女性が、何かを思い出したように振り向いた。
華乃衣
そう言い残し、彼女は颯爽と走り去っていく。後ろ姿を見つめながら、ジュディはキャンディーをくわえたままポツリと呟いた。
ジュディ
日向華乃衣――彼女の胸に付けられた名札には、フリガナ付きでそう書いてあった。
何故か脳裏に焼き付いた、彼女の顔と名前。
これがジュディと華乃衣との最初の出会いだった。