偽りの愛。＿

そういうと、俺の手を握ってきた。

まぁ、なつのこんなスキンシップには慣れっ子だけど。

…らんがこれ見たら、きっと怒るんだろうな…

子供みたいな笑顔を見せるなつ。

その笑顔に、少し安心した。

ノリノリで歩くなつ。

今にも走り出しそうだけど、大丈夫か…？

ショッピングモール…？

買い物でもしに来たのだろうか。

まぁ、新しい服買おうと思ってたし丁度いいか。

店員がニコニコとお店の奥の方へ行った。

あ"~…まぁ、なつイケメンやしそうなるわな…

それにしても…誰かへのプレゼントか…？

かなり綺麗なラッピングされてんな…

プレゼントを渡す相手はまさかの俺だった。

持ってみると、袋越しからでも分かるほど柔らかい。

形をなんとなく手で触ってみると、大体どんな物か分かった。

声のした方を見ると、そこにはらんが立っていた。

…やっぱり、らんはなつのことが好きなのだろう。

さっきだって、俺も居るのになつだけ呼んだし。

どうせなつからのプレゼントだって気づいてるくせに。

案の定、らんが怖い顔をしてこちらを見ていた。

正直、さっきの会議室のこともあり、今は距離を置きたい時だったのに。

ノートの買い足しと、ついでに夕食の買い出しをしにショッピングモールへ来ると、見覚えのある2人の後ろ姿があった。

なっちゃんといるまだ。

見ると、なっちゃんがいるまに何か渡しているまが凄く喜んでいる。

その喜ぶいるまを見て、なっちゃんは愛しそうに笑っている。

…俺には一回もプレゼントなんてしてくれたことないのに。

あんな顔、したことないのに。

つくづく腹立つなぁ…

俺は、"ついさっき"見かけたフリをする。

俺の声かけにいるまの体が怯えた様に跳ねた。

少し意地悪なところがほんとに沼で、俺はもうこの沼からは抜け出せないと思う。

…やっぱりプレゼントなんだ。

ま、そうだよね。

だけど、やっぱ俺もいるまみたいになっちゃんからプレゼント貰いたいなぁ…

なんだよそれ。

デート？

はぁ…もうやば…

笑わないといけないのに。

勝手に口角が下がってしまう。

どうせ、いるまと2人っきりがいいとか思ったんだろうな。

だけど、このまま帰るなんて嫌だし。

いるまを見てみると、気まづそうな嫌そうな顔をしていた。

2人っきりなんてさせない。

なっちゃんなんかより、俺を常に見て、早く俺に堕ちてね。

小動物みたいに小さな口で食べ物を頬張っているなっちゃん。

その姿が本当に可愛くて、つい笑顔になってしまう。

照れてるの丸わかりだよ。

まぁ、そんなとこも大好きなんだけど。

無言でくまのぬいぐるみを少し袋から出して見つめるいるま。

瞳がキラキラしていて、少し可愛いと思った。

可愛いって言っても、赤ちゃんとかに向けるそういう可愛いね？

俺が本気で恋愛対象として可愛いと思うのはなっちゃんだけ。

ひとまず気持ち悪いと思ってないだけ良かった。

いるまの言葉に安心した様子を見せるなっちゃん。

少しくらい、こっち向いてよ。

断りにくいよな。

らんと一緒に帰る以外の選択をしたららんが傷付く。

なつは優しいからちゃんと考えるはずだ。

それでいい。

そのままらんと帰ってくれたら、らんはまた…元に戻るかもしれない。

俺のこと好きなフリなんてする必要ないって分かるかもしれないから。

ｷﾞｭｯ

俺が行こうとした瞬間、手を握ってきた。

俺は手を握ってきた本人を確認するために後ろを向いた。

すると…

手を握っていたのは、予想外の人物だった。

手にピリッとした痛みが走る。

らんが握る力を強めたからだ。

明らかに拗ねたなつ。

それを可愛いと言いたげな目で見つめるらん。

子供の様に情緒不安定だが、それもなつの可愛くて良いところだ。

その後は、なつが嬉しそうに帰るのをらんと見送った。