テラーノベル
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雨の音は、いつだって君を思い出させる
アスファルトに落ちる水滴が、夜の街を滲ませる度に
胸の奥に溜まっていたものが静かに溢れだす
tt
誰もいない部屋で独り言みたいに呟く
答えは返ってこない
分かってる
もう、君はいない
それでもまだ君の影を探してしまう
カーテンの隙間
濡れた窓
どこかで君がかぜになって、
星になって
笑ってる気がして
気持ちだけが取り残されたみたいだった
言えなかった言葉が、今も胸の中で膨らんでいく
君にプロポーズしようと思ったのはあの夜だった
「結婚しよう」
そう言えば君は笑ってくれると思ってた
当たり前みたいに未来が続くと思ってた
なのに
だけど、何となく言えなくて
喧嘩みたいになって
その夜は言えなかった
明日言おう、君が帰ってきたら
昨日はごめんねって
だけど
次の日、君は帰ってこなかった
電話も
メッセージも
既読のつかないまま
動かない
俺の世界が
突然止まった
傘を刺さずに歩く癖があって
よく濡れて帰ったっけな、
hr
hr
そう言って笑った顔が今も胸に浮かぶ
二人で話したこと覚えてる?
hr
tt
tt
hr
hr
その時はただの冗談で
まさか、こんなにも早く君が星になるなんて
想像もしなかった
君にプロポーズしようと思って
指輪まで買ってた
小さな箱をポケットに入れたまま、何度も練習して
tt
tt
tt
tt
tt
鏡の前で練習してみても
上手く言えなかった
でも、君の前なら大丈夫だって
なぜか思ってた
でも
本当に喜んでくれるんだろうか
ほんとに俺で良いんだろうか
むしろ俺じゃない方が
幸せになれるんじゃないだろうか
言うのが照れくさいとか、
プロポーズの言葉が決まらないとか
そういうのだけじゃなくて
俺じゃなくてもいいんじゃないか
そういう思いがあって、
中々言い出せなかった
あの夜も
そう、君がいなくなる前の日、プロポーズしようと思っていたその夜
君は言った
hr
tt
hr
tt
君は驚いた顔で俺を見た
hr
tt
tt
tt
言った瞬間、後悔した
でも、嘘じゃなかった
hr
tt
hr
涙をこらえた君の目が揺れていた
hr
その問いに言葉が出なかった
別れたくない
でも、怖い
幸せと喪失が
胸の中でせめぎ合う
tt
俺はポケットの中の小さな箱を握りしめた
開けるか
置いて去るか
答えは出なくて
ただ1つ確かなのは
君を愛しているということだけだった
雨が降っていたから
視界が悪かったんだろうって
そう聞かされた
連絡があって
どう辿り着いたかも覚えていない病院
白い廊下、冷たいベンチ
「残念ながら」
そう言われて
tt
何に対しての謝罪かもわからない
分からないまま、ただ泣いた
止められなかったこと
言えなかったこと
全部が胸に刺さっていた
夢の中では君はまだ生きていて
嬉しそうに白いドレスを着ていて
俺はタキシード姿でぎこちなく手を伸ばすんだ
だけどこれより先に進まない
俺が想像できる未来は
ここまでだったからなんだろうか
もしあの夜に戻れるなら
ちゃんと言う
tt
tt
でも今は、星に向かって呟くだけ
もっと抱きしめていれば
もっと話を聞いていれば
後悔は数え切れない
tt
今さら遅いってわかってる
それでも言いたかった
星に向かってそっと呟く
tt
空の上で君が幸せでありますように
この言葉が君に届きますように
俺はまだここで生きてる
君を愛したまま
おわり