あれは,とある高校の 新入生説明会の時の話だ。
莉華
莉華
莉華
私はそんな淡い期待を抱きながら 高校へ歩いていった。
説明会は体育館で行われる予定
莉華
莉華
早歩きで自席へと着く
莉華
莉華
司会の人が挨拶をして 説明会は始まった。
不意に私の左肩を誰かが叩いた。 視線を向けると男の子が何か ジェスチャーをしている。
莉華
慌てて男の子がメモ帳を 取り出し書き始めた。
莉華
言ってるか書いてくれない?』
莉華
メモ帳に司会の人が言っていることを 要約して書き,差し出す。
晴
晴
莉華
『どういたしまして』
晴
莉華
晴
説明会が終わり、帰る支度を始める
晴
一緒に帰らない?』
莉華
晴
嬉しいからか笑みが溢れる。
莉華
晴
良かったんだけど、
やっぱり色んな人と
一緒に学びたいから。
かな』
莉華
私はただ何となく
進学先が充実してる
からかな。本当に大した
理由じゃないよ。』
晴
莉華
わかんないけどさ、
どうして晴は耳が
聞こえないの?』
晴
僕は生まれつき。
だから音楽とか
人の声とか,
音って言われる
ものはわかんない』
莉華
筆談って大変だね。
手話覚えてみるよ!』
晴
僕も教えるの
手伝うよ!』
莉華
『ごめん,ここでお別れだ。
入学式で会おうね!』
晴
LINE交換しない?』
LINEを交換する。
莉華
晴
自分の部屋で余韻に浸る
莉華
莉華
YouTubeの手話動画を観始める
朝陽
姉の朝陽が入ってくる
莉華
朝陽
てか何観てるの?
莉華
朝陽
莉華
朝陽
動画を観ながら実際にやってみる
朝陽
莉華
莉華
事の経緯を説明中...
朝陽
頑張ってんじゃん。
莉華
朝陽
入学式の日
莉華
晴くんに駆け寄る
莉華
晴
晴
莉華
辿々しいかもだけど、
よろしくね!】
晴
改めてよろしくね!】
莉華
席隣みたいだね!
通訳する?
途中で筆談に
なっちゃうかもだけど...】
晴
お願いしてもいい?】
式も順調に進み、 もっと仲良くなった。
それから授業中でも休み時間でも 一杯話した。 冗談とかも言い合える仲になった。
晴
出掛けてさ...】
クラスのリーダー格の男子 和也が来る。
和也
莉華
和也
和也
話しかけてるんだよ!
莉華
【晴,話があるんだって。】
晴
和也
書くなんて面倒くせぇ。
和也
莉華
筆談してあげてよ。
和也
お前は何でこんなのと
つるんでんの?
莉華
てか書くの面倒なら
私に言えばいいじゃん。
私から伝えるよ。
和也
いーや。冷めた。
和也はどっかに行く
晴
莉華
晴
次の日
晴
行ってくるね。】
莉華
和也
莉華
和也
莉華
和也
付き合ってんの?
莉華
和也
イチャイチャしてんの?
莉華
和也
うっせえな。
莉華
いきなり。
和也
生粋の男垂らしだって?
莉華
和也
(クソデカい声)
クラスの視線が自分に注がれる。 小声でヒソヒソ話す人や 痛い目線が飛んでくる。
晴
あれ?どうしたの?】
莉華
和也
和也
お似合いだなw
晴
りあにあにいっあ!
(おい。お前,
莉華に何言った!)
莉華
別に関係ないよ!】
和也
何唸ってんだよwww
なんの鳴き声だよwww
莉華
いい加減にしやがれ!
和也
今日はこれくらいに
してやる。
この日を境に私と晴は無視されたり いじめられ始めた。
この日もまたいじめられていた。 でも晴が居るし、孤独と感じる事は ないからどうにでもなった。
莉華
晴
聞こえないけど
ヘッドホンで
音量大きくして
音楽を聴くこと
かな?】
莉華
楽しむ感じ?】
晴
晴
【ごめん,
ちょっと席外すね】
莉華
立ち上がる晴。 しかし,よろめき倒れてしまう。
莉華
莉華
誰も動かない
丁度通りかかった先生が 慌てて保健の先生を呼びに行った
しばらくして保健の先生が来て 救急車が呼ばれた。
その日は丁度この後に授業がないから 急いで搬送された病院に行った。
病院の受け付けに急いだ。
莉華
救命救急の棟に急ぎ、 検査が終わるのを待った。
医者
莉華
医者
親族以外入れないんだ。
2時間ほど1人で待った。
莉華
海
海
知り合い?
莉華
海
どこかしら?
莉華
海
不安が渦巻く。 そこから2時間経ったか。
海
そろそろ帰らなくて
いいの?
莉華
海
少しお話し
いいかしら。
莉華
海
晴の事、なんだけど...
莉華
海
受けないようにね...
海
言ってたのだけど、
晴の頭にね,
脳腫瘍が有ったの。
海
生まれた時から
脳に腫瘍が
あったのは
知ってたんだけど、
それは良性の腫瘍だし、
下手に取ろうとすると
神経を傷つけてしまう
かも知れないから,
聴覚を代償に
今まで生きてたの。
海
晴の頭にいるのは
悪性の腫瘍。
しかもとても
進行してしまってるもので
切除する事は
出来ないらしいの。
海
一緒に過ごして
くれないかしら?
莉華
海
名前聞き忘れてたわ。
莉華
海
ニコニコして話して
くれる子ね!
海
莉華
では,学校帰りなどに
寄らせて頂きます。
海
海
そろそろ帰りなさいね。
心配されるだろうから。
莉華
では失礼します。
晴の病室にて。
晴はあの3日後に目を覚ました。
莉華
晴
ありがとう。】
莉華
晴
酷くないかな。】
それから3ヶ月くらい この取り留めのない会話で 盛り上がっていた。
ただ日に日に晴の体は 弱っていった。
莉華
晴
変わらないけど、
髪の毛が
抜けてきちゃったね。】
晴
力が入らなくなって、
1人で歩けなく
なっちゃった。】
数日後... その日も学校帰りに 晴の病室に寄った。
医者
海
隙間から覗くと 晴が癲癇発作で震えていた。
慌ててベットに駆け寄った
莉華
晴!起きて!
3人で晴に向かって叫び続けた。
すぐ後にナースが鎮静剤を 打ってくれてすぐに落ち着いた。
莉華
しまってるんだ。
晴の身体の変化に, 自分に与えられた時間の短さに 痛感した。
晴との時間の短さを痛感した日から 1ヶ月が経った頃か、
晴の癲癇発作は 1日に一度のペースで 増えてしまっていた。
莉華
増えてしまってるな...)
莉華
いつの間にか 朝陽が隣に居てくれてた。
朝陽
朝陽
莉華
朝陽
わからないんだろ?
朝陽
接して欲しいかな。
朝陽
不安しかないだろうし。
朝陽
私はハッとした。
莉華
姉も高校の時に 当時付き合っていた彼氏が 白血病に侵され 亡くなってしまったのだ。
朝陽
一生懸命やったら
ちゃんと伝わるよ。
朝陽
アドバイスだよ。
莉華
気が利くな〜
朝陽
次の日
莉華
晴
莉華
自分が寂しいよ😅】
晴
起こしたタイミングって
見ちゃったりした?】
莉華
晴
しない?】
晴
莉華
思う事ないよ?】
晴
その後もいつも 取り留めのない会話で 盛り上がっている。
そこから1週間経ったか
晴
抗がん剤でさ
腫瘍が切除出来る
くらいの小ささに
なったから
手術を受けようと
思うんだ】
莉華
怖くないの?】
晴
晴
命には
変えられないよ。】
莉華
晴
怖がって
どうすんだよw】
莉華
晴が怖がってないのに
私が怖がるのは変だねw】
手術前日
莉華
ポキポキ(着信音)
莉華
晴
莉華
どうしたの?
晴
気負わない様に
紛らわせたいから。
莉華
晴
晴
凄く怖い。
晴
晴
莉華
大丈夫だよ。きっと。
手術前に会いに行くから。
晴
晴
莉華
お互いに。
晴
生きて会おうね。
莉華
バイバイ!
手術当日の朝
莉華
晴
晴
莉華
晴
物怖じしなくなったw】
莉華
海
ありがとう。
看護師
移動しますので
ストレッチャーに。
晴
莉華
晴について手術室前まで 行く。
海
待ってましょうかね。
莉華
莉華
成功するよね?)
海
どうして晴と
仲良くしてくれるの?
莉華
だけです。
莉華
居ないし手話が出来る人も
居ない中で頑張っている姿は
とても凄いですが、
やはり困ってる姿を見てると
助けたいといいますか...
海
出会ってから
始めたんでしょう?
海
身を粉にしてないか
心配になってしまうのよ。
莉華
テリトリーはお互い守って
干渉しないようにしてるので
大丈夫ですよ😊
海
「普通の高校に行きたい」
って言った時に
猛反対してしまったのよ。
海
聴覚障害の子を
虐める描写が
一定数あるから...
しかも
手話通訳士さん無しで
行くって言った時は
もっと怖くて、
ずっと心配だったのよ。
海
伝わってきて
了承せざるを
得なかったわ。
だから高校で
仲良くなった子が
居ると知った時は
もの凄く
嬉しかったわ。
莉華
これから先も
出来る事は全て
担います。
だから,困った時は
頼ってください。
晴の手術は6時間程かかる 手術だったが、 私達には途轍もなく 長く感じた。
医者
無事成功しましたが
転移してる可能性や
再発の可能性が
否めませんので
ご理解ください。
海
莉華