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2人だけの音の世界(前編)

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2人だけの音の世界(前編)

1 - 2人だけの音の世界(前編)

♥

26

2021年07月31日

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あれは,とある高校の 新入生説明会の時の話だ。

莉華

高校第一志望受かって良かったな

莉華

華のJK!楽しもう!

莉華

いきなりでも友達出来るかな...?

私はそんな淡い期待を抱きながら 高校へ歩いていった。

説明会は体育館で行われる予定

莉華

説明会は体育館でだから...

莉華

体育館...有った!

早歩きで自席へと着く

莉華

みんな同じ中3なんだ...

莉華

大人っぽいなぁ

司会の人が挨拶をして 説明会は始まった。

不意に私の左肩を誰かが叩いた。 視線を向けると男の子が何か ジェスチャーをしている。

莉華

何?

慌てて男の子がメモ帳を 取り出し書き始めた。

莉華

『僕,耳が聴こえなくて、なんて
 言ってるか書いてくれない?』

莉華

いいけど...?

メモ帳に司会の人が言っていることを 要約して書き,差し出す。

^_^

『ありがとう』

莉華

どういたしまして...あっ。
『どういたしまして』

『名前,何て言うの?』

莉華

『莉華』

『僕は晴。よろしくね。』

説明会が終わり、帰る支度を始める

『どこから来てるの?
 一緒に帰らない?』

莉華

『C市。遠くない?』

『全然!僕はF市!』

嬉しいからか笑みが溢れる。

莉華

『晴は何でこの学校に来たの?』

『ん〜。別に聾学校でも
 良かったんだけど、
 やっぱり色んな人と
 一緒に学びたいから。
 かな』

莉華

『いいね。
 私はただ何となく
 進学先が充実してる
 からかな。本当に大した
 理由じゃないよ。』

『へ〜。でもいいね!』

莉華

『訊いていいのか
 わかんないけどさ、
 どうして晴は耳が
 聞こえないの?』

『全然いいよ。
 僕は生まれつき。
 だから音楽とか
 人の声とか,
 音って言われる
 ものはわかんない』

莉華

『そうなんだ。
 筆談って大変だね。
 手話覚えてみるよ!』

『本当⁉︎嬉しい!
 僕も教えるの
 手伝うよ!』

莉華

あっ。
『ごめん,ここでお別れだ。
 入学式で会おうね!』

『待って!
 LINE交換しない?』

LINEを交換する。

莉華

バイバイ!

⦅手を振る⦆

自分の部屋で余韻に浸る

莉華

入学早々男の子とLINE交換かぁ

莉華

何か嬉しい。

YouTubeの手話動画を観始める

朝陽

おーい莉華ー!

姉の朝陽が入ってくる

莉華

何。朝陽。

朝陽

何してんの?
てか何観てるの?

莉華

動画。

朝陽

手話?なんで?

莉華

別にいいでしょ。

朝陽

へーへー

動画を観ながら実際にやってみる

朝陽

好きな子でも出来たの?

莉華

ん〜

莉華

朝陽なら言ってもいいか。

事の経緯を説明中...

朝陽

ふーん。あんたにしては
頑張ってんじゃん。

莉華

だから邪魔しないでね。

朝陽

了解

入学式の日

莉華

あ!晴くん居た!

晴くんに駆け寄る

莉華

【晴くん!】

‼︎

『莉華ちゃん!』

莉華

【手話覚えてみたんだ!
 辿々しいかもだけど、
 よろしくね!】

【嬉しい!こちらこそ
 改めてよろしくね!】

莉華

【同じクラスで
 席隣みたいだね!
 通訳する?
 途中で筆談に
 なっちゃうかもだけど...】

【全然!
 お願いしてもいい?】

式も順調に進み、 もっと仲良くなった。

それから授業中でも休み時間でも 一杯話した。 冗談とかも言い合える仲になった。

【でさ,この前
 出掛けてさ...】

クラスのリーダー格の男子 和也が来る。

和也

おいお前。おい。

莉華

どうかしたの?

和也

オメェじゃねぇ。

和也

俺はこの男に
話しかけてるんだよ!

莉華

あっそう。
【晴,話があるんだって。】

『どうしたの?』

和也

は?喋れよ。
書くなんて面倒くせぇ。

和也

喋れば通じるだろうが。

莉華

晴は耳が聞こえないから
筆談してあげてよ。

和也

は?面倒。
お前は何でこんなのと
つるんでんの?

莉華

別によくない?
てか書くの面倒なら
私に言えばいいじゃん。
私から伝えるよ。

和也

それも面倒くせぇ。
いーや。冷めた。

和也はどっかに行く

【何て言ってたの?】

莉華

【別に。やっぱいいって。】

【そう。】

次の日

【ちょっとお手洗いに
 行ってくるね。】

莉華

【行ってらっしゃい。】

和也

おい。女。

莉華

私?

和也

オメェ以外誰が居んだよ。

莉華

何よ?

和也

お前アイツと
付き合ってんの?

莉華

いや。ただの友達。

和也

へー。じゃあ何であんなに
イチャイチャしてんの?

莉華

イチャイチャしてないでしょ。

和也

ごちゃごちゃ
うっせえな。

莉華

だからなんだよ。
いきなり。

和也

お前,噂で聞いたけど、
生粋の男垂らしだって?

莉華

はぁ?何だよそれ。

和也

クソビッチなんだろ?
(クソデカい声)

クラスの視線が自分に注がれる。 小声でヒソヒソ話す人や 痛い目線が飛んでくる。

【ただいま〜
 あれ?どうしたの?】

莉華

【いや,なんでもない...】

和也

相変わらずキメェやw

和也

人外は人外同士
お似合いだなw

をい。おまぁ、
りあにあにいっあ!
(おい。お前,
 莉華に何言った!)

莉華

【晴,いいよ。
 別に関係ないよ!】

和也

www
何唸ってんだよwww
なんの鳴き声だよwww

莉華

お前!そろそろ
いい加減にしやがれ!

和也

あーうるせぇ。
今日はこれくらいに
してやる。

この日を境に私と晴は無視されたり いじめられ始めた。

この日もまたいじめられていた。 でも晴が居るし、孤独と感じる事は ないからどうにでもなった。

莉華

【晴は最近何にハマってるの?】

【ん〜。
 聞こえないけど
 ヘッドホンで
 音量大きくして
 音楽を聴くこと
 かな?】

莉華

【へぇ!振動を
 楽しむ感じ?】

【そんな感じ!】

ズキッ(頭が痛いな...)
【ごめん,
 ちょっと席外すね】

莉華

【うん。】

立ち上がる晴。 しかし,よろめき倒れてしまう。

莉華

晴!

莉華

誰か保健の先生呼んできて!

誰も動かない

丁度通りかかった先生が 慌てて保健の先生を呼びに行った

しばらくして保健の先生が来て 救急車が呼ばれた。

その日は丁度この後に授業がないから 急いで搬送された病院に行った。

病院の受け付けに急いだ。

莉華

ダダダダダ(早歩き)

救命救急の棟に急ぎ、 検査が終わるのを待った。

医者

ご親族が誰かですか?

莉華

いえ。友達です...

医者

そうかい。すまないが
親族以外入れないんだ。

2時間ほど1人で待った。

莉華

(晴,大丈夫かな...)

ダダダダダ(早歩き)

ハァハァ。貴方誰?
知り合い?

莉華

あっ...晴くんの友達です。

あら。そう。晴は?
どこかしら?

莉華

そこの集中治療室です。

そう。ありがとう。

不安が渦巻く。 そこから2時間経ったか。

貴方,まだ居たの?
そろそろ帰らなくて
いいの?

莉華

心配ですし...

優しいのね...
少しお話し
いいかしら。

莉華

はい...

あのね...
晴の事、なんだけど...

莉華

はい...

ショックを
受けないようにね...

お医者さんが
言ってたのだけど、
晴の頭にね,
脳腫瘍が有ったの。

もともと、
生まれた時から
脳に腫瘍が
あったのは
知ってたんだけど、
それは良性の腫瘍だし、
下手に取ろうとすると
神経を傷つけてしまう
かも知れないから,
聴覚を代償に
今まで生きてたの。

でも今,
晴の頭にいるのは
悪性の腫瘍。
しかもとても
進行してしまってるもので
切除する事は
出来ないらしいの。

だから残りの時間,
一緒に過ごして
くれないかしら?

莉華

私なんかで良いなら...

そうだった。
名前聞き忘れてたわ。

莉華

莉華と言います。

あぁ!晴がいつも
ニコニコして話して
くれる子ね!

晴の母の海です。

莉華

よろしくお願いします。
では,学校帰りなどに
寄らせて頂きます。

よろしくお願いね。

あら。こんな時間。
そろそろ帰りなさいね。
心配されるだろうから。

莉華

はい。
では失礼します。

晴の病室にて。

晴はあの3日後に目を覚ました。

莉華

【晴、遊びにきたよ。】

【いつもごめんね。
 ありがとう。】

莉華

【体調大丈夫なの?】

【うん。そこまで
 酷くないかな。】

それから3ヶ月くらい この取り留めのない会話で 盛り上がっていた。

ただ日に日に晴の体は 弱っていった。

莉華

【今日はどんな感じ?】

【そこまで
 変わらないけど、
 髪の毛が
 抜けてきちゃったね。】

【しかも最近は体に
 力が入らなくなって、
 1人で歩けなく
 なっちゃった。】

数日後... その日も学校帰りに 晴の病室に寄った。

医者

晴くん!しっかり!

晴!起きて!

隙間から覗くと 晴が癲癇発作で震えていた。

慌ててベットに駆け寄った

莉華

晴!しっかり!
晴!起きて!

3人で晴に向かって叫び続けた。

すぐ後にナースが鎮静剤を 打ってくれてすぐに落ち着いた。

莉華

どんどん進行していって
しまってるんだ。

晴の身体の変化に, 自分に与えられた時間の短さに 痛感した。

晴との時間の短さを痛感した日から 1ヶ月が経った頃か、

晴の癲癇発作は 1日に一度のペースで 増えてしまっていた。

莉華

(晴の癲癇,
 増えてしまってるな...)

莉華

(私には何が出来るんだろ...)

いつの間にか 朝陽が隣に居てくれてた。

朝陽

浮かない顔してんね。

朝陽

晴くんの事?

莉華

うん...

朝陽

何が出来るか
わからないんだろ?

朝陽

私ならいつもと同じ様に
接して欲しいかな。

朝陽

下手に距離を取られても
不安しかないだろうし。

朝陽

実際私はそうしたよ。

私はハッとした。

莉華

そうだね。

姉も高校の時に 当時付き合っていた彼氏が 白血病に侵され 亡くなってしまったのだ。

朝陽

自分が正しいと思う事を
一生懸命やったら
ちゃんと伝わるよ。

朝陽

人生の先輩の私からの
アドバイスだよ。

莉華

こういう時だけ
気が利くな〜

朝陽

一言余計だわ!

次の日

莉華

【今日も来ちゃった】

【週一とかでいいのに...】

莉華

【いや,そんなに少ないのは
 自分が寂しいよ😅】

【あのさ,僕が癲癇を
 起こしたタイミングって
 見ちゃったりした?】

莉華

【見ちゃった事あるよ...?】

【気持ち悪かったり
 しない?】

【気になるんだけど。】

莉華

【いや,別に気持ち悪いとか
 思う事ないよ?】

【そっか。】

その後もいつも 取り留めのない会話で 盛り上がっている。

そこから1週間経ったか

【あのさ,
 抗がん剤でさ
 腫瘍が切除出来る
 くらいの小ささに
 なったから
 手術を受けようと
 思うんだ】

莉華

【そうなんだ。
 怖くないの?】

【そりゃ怖いよ。】

【でもさ、
 命には
 変えられないよ。】

莉華

【そうだね。】

【莉華の方が
 怖がって
 どうすんだよw】

莉華

【そうだねw
 晴が怖がってないのに
 私が怖がるのは変だねw】

手術前日

莉華

明日は晴の手術の日か...

ポキポキ(着信音)

莉華

晴からだ...

夜遅くにごめんね。

莉華

いや。全然!
どうしたの?

明日,手術当日じゃん?
気負わない様に
紛らわせたいから。

莉華

やっぱり怖いの?

怖いよ。
凄く怖い。

怖くて堪らないよ。

でも大丈夫だよ。

莉華

そうだよ。
大丈夫だよ。きっと。
手術前に会いに行くから。

やっぱり心強いな。

ありがとう。

莉華

頑張ろうね。
お互いに。

それじゃ。明日,
生きて会おうね。

莉華

物騒だなw。
バイバイ!

手術当日の朝

莉華

【おはよう,晴。】

【おはよ〜】

【いよいよだね〜w】

莉華

【能天気だなぁ〜w】

【ww。怖い通り越して
 物怖じしなくなったw】

莉華

【ww。頑張れ👍】

今日も来てくれたのね。
ありがとう。

看護師

では手術室に
移動しますので
ストレッチャーに。

【行ってきまーす】

莉華

【行ってらっしゃい。】

晴について手術室前まで 行く。

じゃあここで
待ってましょうかね。

莉華

はい。

莉華

(大丈夫だよね?
 成功するよね?)

莉華さんは、
どうして晴と
仲良くしてくれるの?

莉華

単に放っておけなかった
だけです。

莉華

学校に手話通訳士さんも
居ないし手話が出来る人も
居ない中で頑張っている姿は
とても凄いですが、
やはり困ってる姿を見てると
助けたいといいますか...

でも,手話は晴と
出会ってから
始めたんでしょう?

凄い努力で、晴の為に
身を粉にしてないか
心配になってしまうのよ。

莉華

今のところ大丈夫ですし、
テリトリーはお互い守って
干渉しないようにしてるので
大丈夫ですよ😊

そう。私ね、晴が
「普通の高校に行きたい」
って言った時に
猛反対してしまったのよ。

昔から漫画とかで
聴覚障害の子を
虐める描写が
一定数あるから...
しかも
手話通訳士さん無しで
行くって言った時は
もっと怖くて、
ずっと心配だったのよ。

でも熱意が
伝わってきて
了承せざるを
得なかったわ。
だから高校で
仲良くなった子が
居ると知った時は
もの凄く
嬉しかったわ。

莉華

そうなんですね。
これから先も
出来る事は全て
担います。
だから,困った時は
頼ってください。

晴の手術は6時間程かかる 手術だったが、 私達には途轍もなく 長く感じた。

医者

晴君の手術は
無事成功しましたが
転移してる可能性や
再発の可能性が
否めませんので
ご理解ください。

とりあえず良かった...

莉華

良かった...

この作品はいかがでしたか?

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