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杏
ベッドの上、毛布に身をくるんで息を潜める
部屋はどこか湿気を帯び、外の雨が窓を叩く音が壁の向こうから聞こえる会話を不鮮明にしていた
ドクン…ドクン……
杏の体は熱を帯び、心臓は激しく鳴り響く
濡れた制服が肌に張り付き、喉の奥からは吐き気のような、これまでに経験したことないような感覚が込み上げていた
杏
杏
田舎のおばあちゃんの家、蝉の声が降り注いで、土の匂いのする風が吹き抜けるような、まったりとした夏の午後だった
どこかへ行く途中だったか、それとも帰りだったか...覚えているのは少し大きな手が私の手を優しく握ってくれていたこと
︎︎
強い日差しを遮るように麦わら帽子を被せてくれて
その帽子は私には大きくて、ずり落ちてくるのを抑えてた
︎︎
私の返事にお姉ちゃんは小さく笑った
︎︎
いつも綺麗で優しくて、そんなお姉ちゃんは
ずっと、私の憧れだった
楓
ピピピピ……ピピピピ……
スマホのアラームが鳴り響く
杏
楓
杏
目を擦りながら起き上がると、既に制服を着こなしている楓がそこに立っていた
楓
杏
楓
そう言って部屋から出ていってしまった
杏
ピーナッツバターの塗られたトーストを食べながら聞く
楓
二人でテレビのニュースを見ながら、お姉ちゃんはマグカップでカフェオレを飲んでいる
杏
楓
そう言って一気にマグカップを傾けた
楓
柚さん
杏
柚さん
楓
そう言って手を振るお姉ちゃんに手を振り返す
杏
ガチャン
ドアの閉まる音が響いて、部屋が少し静かになった