元貴
元貴の声が、楽屋の空気を凍りつかせた。
元貴の目線の先には、俺の腕――袖の隙間から覗く、無数の赤い線。
袖を捲り上げられた瞬間、心臓が跳ね上がった。
見られた。
終わった。
もっと嫌われてしまう。
涼架
涼架
口を開こうとするが喉が詰まって声にならない。手をぎゅっと握りしめ、後ずさる。
滉斗
若井の声が震えている。 二人の視線が痛いほど突き刺さる。
もうダメだ。
こんな俺が、一緒に居ていい訳ない。
逃げないと…。
涼架
反射的に楽屋のドアを開け、飛び出した。
涼架
廊下を全力で駆ける。心臓が爆発しそうなほど速く脈打つ。
涼架
息が苦しい。だけど止まれない。
元貴
遠くで元貴の俺を呼ぶ声が聞こえる。 足音も追いかけてくる。
僕のせいで嫌なものを見せてしまった。 だからもう一緒に居られない。
無我夢中で走ってるうちに、俺は最悪な場所に辿り着いてしまった。
マネージャー
低くねっとりとした声。 振り向くと、そこにはあのマネージャーが立っていた。
マネージャー
ニヤリと笑う男を見た瞬間、全身が凍りついた。
涼架
体が思うように動かない。無意識に後ずさると背中が壁に当たった。
マネージャー
そう言いながら、男の手が俺の腕をつかむ。
涼架
振り払おうとするが、相手の方が力が強くてそのまま空き部屋に連れてかれた。
マネージャー
うっとりと笑いながら俺の腰に手を回す。
ぞわりと嫌悪感が這い上がる。
涼架
必死に抵抗するも、マネージャーは容赦なく俺の体を押し倒した。
涼架
マネージャー
マネージャー
マネージャー
耳元で囁かれる。
このままじゃ――
涼架
涙が溢れる。 けれど、誰の助けもない。そんなこと分かりきってたのに。
マネージャー
マネージャー
ビリッッ
涼架
男が無理やりシャツを裂いた。
マネージャー
涼架
マネージャー
そう言いながらお腹に指を沿わすようになぞった。
マネージャー
お腹をねっとりと舐めながら興奮した様子でブツブツと何かを言っている。 だけどそれを聞くとる余裕は今はない。
涼架
涼架
自然と二人の名前が出てきた自分に驚く。 あの二人が助けに来るわけないのに。
マネージャー
涼架
マネージャー
涼架
胸をまさぐりながら弾力を楽しむように下から掴み上げられ、突起を指で強く擦られる。
涼架
マネージャー
マネージャー
マネージャー
涼架
噛みつかれて思わず痛みで涙が滲む。
マネージャー
マネージャー
マネージャー
マネージャー
男の手がどんどん下にいってベルトに手をかけようとする。
抵抗したいのに、暴れたいほど嫌なのに、 ころころと人が変わったように言う事が変わる様子が怖くて体が動かない。
このままこの人に俺は…、
涼架
絶望と諦めで目をぎゅっと瞑った瞬間、
元貴
轟くような怒声が響いた。
そして怒声が響いたと同時にマネージャーの体が吹き飛ばされた。
マネージャー
マネージャー
その声の主は元貴だった。
俺を庇うように前に立ち、拳を固く握っている。
元貴
元貴の目は怒りに染まっている。
涼架
恐怖で吐き気が込み上げてきて咳き込んでしまう。
滉斗
若井が俺の元に駆け寄ってきた。
滉斗
俺のビリビリになったシャツを見て若井は自分のジャケットを俺にかけてくれた。
涼架
二人が助けに来てくれた。
安心した途端、全身の力が抜け前に倒れていった。
滉斗
地面にぶつかる前に若井が咄嗟に支える。
マネージャー
マネージャー
マネージャー
涼架
あぁ、やっぱり俺は辞めないとなのか…
俺は若井に支えられたまま気を失ってしまった。
涼架
目を覚ますと、さっきまで居た空き部屋ではなく医務室に居た。
横を見ると若井と元貴が椅子に座ったまま眠っていた。 起きる前に出て行こうと思って立ち上がると、
元貴が顔をバッと上げた。
元貴
滉斗
元貴の声に若井も起きてしまった。
若井が俺に手を伸ばす様子に先程の事が重なり、無意識に後ずさってしまった。
涼架
涼架
涼架
自分の体を抱きしめるように腕をぎゅっと握る。まだアイツの手の感触が残っている気がして、吐き気がした。
涼架
元貴
元貴
滉斗
元貴と若井が言ってるけど、
マネージャー
この言葉と触られてる感覚が残っていて全身が震えて冷や汗が止まらない。
滉斗
若井が優しく声をかけるが、俺は顔を伏せたまま動けない。
元貴がそっと視線に合わせるように顔を覗き込む。
元貴
その言葉にゆっくりと顔を上げた。涙で潤んだ瞳が揺れる。
涼架
ポツリと零れた言葉に、元貴と若井の表情が一気に強張った。
涼架
涼架
涼架
涼架
元貴
涼架
涼架
涼架
涼架
滉斗
涼架
すごく静かだった。だけど、その静けさが余計に二人の胸を締め付けた。
元貴
元貴が肩を震えた手で掴む。
元貴
涼架
滉斗
滉斗
若井が拳を握りしめて震えている。
元貴
元貴
元貴
滉斗
涼架
滉斗
涼架
そうだ、こんな事言うのも、腕も嫌がらせや当てつけじゃない。
それに切って少しでも落ち着く事ができたから自分の意思で切ってたから2人は全く悪くない。
涼架
涼架
滉斗
聞きなれない低い声に驚いて顔を上げると、若井が悔しそうに震えている。
滉斗
元貴
元貴か俺の頬に手を置いて静かに言う。
涼架
涼架
元貴
元貴が声を荒らげた。
元貴
元貴
心臓が強く跳ねる感覚がした。
涼架
滉斗
滉斗
若井がハッキリと言い切り、俺は目を見開いた。
涼架
滉斗
元貴が大きく頷いた。
元貴
元貴
喉が詰まって、言葉が出てこない。
滉斗
若井が優しい声で語りかけてくる。
滉斗
滉斗
滉斗
その言葉が、
凍りついていた心を少しずつ溶かしていく。
涼架
元貴
元貴が苦しいほどギュッと抱きしめてくれる。
元貴
若井もそっと俺の背中を撫でながらほほ笑む。
滉斗
ーーここに居ても大丈夫。
俺は泣きながら2人の温もりに身を預けながらそう思う事が出来た。
…あの後、3人でそのまま医務室から元貴の家に移動してから学生の頃に戻ったようにゲームをしながら夜更かしをした。
それから数日、色んなことが起きた。
まずひとつは…
マネージャー
元貴
滉斗
涼架
滉斗
涼架
滉斗
あの時とは、前にお泊まり会をしたらお風呂で腕を引っ掻いてしまい血が思いっきり垂れ始めてしまった時の事。
涼架
元貴
元貴
涼架
元貴
…すごく怖いけど、ここで聞かなかったら乗り越えられない気がする。
それに、2人がいるから…!
涼架
元貴
優しい眼差しで頭を撫でてくれる元貴は俺が年上のはずなのにすごく大人びて見える。
涼架
滉斗
涼架
滉斗
元貴
涼架
元貴
滉斗
元貴
元貴
涼架
元貴
滉斗
元貴
涼架
元貴
滉斗
元貴
滉斗
でも良かった…逮捕されたんだ…!
滉斗
元貴
滉斗
元貴
元貴
涼架
滉斗
滉斗
涼架
思い出したくもない…。本当にあの時は死にたくて仕方なかった…。
元貴
涼架
元貴
元貴
滉斗
2人からの告白みたいな言葉に思わず顔が暑くなった。
涼架
元貴
滉斗
これが1つ目。
そしてもう2つ目は…
涼架
元貴
滉斗
涼架
2つ目は、2人がすごく過保護になったってこと。
驚いて目を丸くすると、元貴は真顔で頷いて、若井は個室まで来るんじゃないかって思う程真剣な表情で立っている。
涼架
涼架
元貴
滉斗
涼架
少し恥ずかしいけど、心の奥がほんのり暖かくなるのを感じる。
あの件から、2人はずっと過保護スイッチがONになっているみたい。
飲み物を取ろうとすると、
元貴
ちょっとくしゃみをすると、
滉斗
と、駆け寄ってくれる。
それが正直照れくさいけど、嫌じゃない。
元貴
涼架
元貴が軽々しく俺を横抱きする。
元貴
滉斗
涼架
元貴
滉斗
元貴
涼架
元貴
涼架
元貴
滉斗
――こんな日常が、当たり前のように続いたらいいな。
そう思ったのは、僕だけじゃなかったら嬉しいな。
元貴
涼架
元貴
滉斗
なんか、この2人とならこれからも頑張れそう。
思わず涙が出たけど恥ずかしいから顔を元貴の肩にうずめた。
元貴
滉斗
滉斗
元貴
その言葉に、心から頷いた。 そして彼らと共に歩む未来が、どんなに素晴らしいものになるのかを、少しずつ感じることができた。
end
コメント
5件
最高すぎる😭 次のお話も楽しみにしてます!
最高でした…、!本当にありがとうございます!家宝にします!!
リクエスト1つ目完結!! 読んで頂きありがとうございました!また次のお話でお会いしましょう!