テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

🍏リクエスト集

一覧ページ

「🍏リクエスト集」のメインビジュアル

🍏リクエスト集

3 - 病み ~完~

♥

675

2025年04月06日

シェアするシェアする
報告する

元貴

…どういう事?

元貴の声が、楽屋の空気を凍りつかせた。

元貴の目線の先には、俺の腕――袖の隙間から覗く、無数の赤い線。

袖を捲り上げられた瞬間、心臓が跳ね上がった。

見られた。

終わった。

もっと嫌われてしまう。

涼架

ち、ちがっ…!

涼架

これはっ…!!

口を開こうとするが喉が詰まって声にならない。手をぎゅっと握りしめ、後ずさる。

滉斗

涼ちゃん…なんで…?

若井の声が震えている。 二人の視線が痛いほど突き刺さる。

もうダメだ。

こんな俺が、一緒に居ていい訳ない。

逃げないと…。

涼架

っ、ごめんなさい…!

反射的に楽屋のドアを開け、飛び出した。

涼架

はっ、はっ…!

廊下を全力で駆ける。心臓が爆発しそうなほど速く脈打つ。

涼架

ごめん…っ、ごめんなさい…!!

息が苦しい。だけど止まれない。

元貴

涼ちゃん!!待って!!!

遠くで元貴の俺を呼ぶ声が聞こえる。 足音も追いかけてくる。

僕のせいで嫌なものを見せてしまった。 だからもう一緒に居られない。

無我夢中で走ってるうちに、俺は最悪な場所に辿り着いてしまった。

マネージャー

…まさか涼架から俺の所に来てくれるなんて!

低くねっとりとした声。 振り向くと、そこにはあのマネージャーが立っていた。

マネージャー

随分と慌ててるな、匿ってやろうか?

ニヤリと笑う男を見た瞬間、全身が凍りついた。

涼架

ひっ…!

体が思うように動かない。無意識に後ずさると背中が壁に当たった。

マネージャー

そう怖がるなよ、俺は涼架の味方だ。

そう言いながら、男の手が俺の腕をつかむ。

涼架

や、やめて!

振り払おうとするが、相手の方が力が強くてそのまま空き部屋に連れてかれた。

マネージャー

あぁ涼架…やっと2人きりになれた…!

うっとりと笑いながら俺の腰に手を回す。

ぞわりと嫌悪感が這い上がる。

涼架

やめて!離して!

必死に抵抗するも、マネージャーは容赦なく俺の体を押し倒した。

涼架

うっ、!!

マネージャー

お前は俺だけの物になればそれでいいんだ…

マネージャー

でも、なってくれない…

マネージャー

ならもう、無理やりやるしかないよな?

耳元で囁かれる。

このままじゃ――

涼架

いやだ…っ、助けて……!

涙が溢れる。 けれど、誰の助けもない。そんなこと分かりきってたのに。

マネージャー

誰も涼架の事は助けないよ。

マネージャー

何回も言ってるだろ?
俺だけなんだよ、涼架の事をちゃんと想ってるのは。

ビリッッ

涼架

ひゃっ!!?

男が無理やりシャツを裂いた。

マネージャー

あぁ、やっと見れた…♡

涼架

ひっ、やだっ、!

マネージャー

大丈夫、大丈夫…痛くないようにしてあげるから…♡

そう言いながらお腹に指を沿わすようになぞった。

マネージャー

はぁ…可愛い…可哀想で可愛い涼架…っ、お前を助けられるのは俺だけなんだよ…!!

お腹をねっとりと舐めながら興奮した様子でブツブツと何かを言っている。 だけどそれを聞くとる余裕は今はない。

涼架

やだぁ…っ!!

涼架

もとき…!わかい…!!

自然と二人の名前が出てきた自分に驚く。 あの二人が助けに来るわけないのに。

マネージャー

チッ…抵抗するなよ!

涼架

やだっ、やめて!!

マネージャー

うるせぇな、どうせ快感の虜になるんだから大人しくしとけ

涼架

ひっ、

胸をまさぐりながら弾力を楽しむように下から掴み上げられ、突起を指で強く擦られる。

涼架

〜〜〜〜っ!!!!!

マネージャー

誰にも触られたこと無いよな?

マネージャー

…でも涼架は可愛いし枕とかしたんじゃないか?

マネージャー

ふざけんな…!

涼架

い゛っ…!!!

噛みつかれて思わず痛みで涙が滲む。

マネージャー

俺がどれだけ計画してここまで来たと思ってるんだ!!!

マネージャー

いやでも、無理やり枕させられたかもしれない…

マネージャー

ごめんな、泣かせて?

マネージャー

これから俺が嫌な思い出全部上書きしてやるからな?

男の手がどんどん下にいってベルトに手をかけようとする。

抵抗したいのに、暴れたいほど嫌なのに、 ころころと人が変わったように言う事が変わる様子が怖くて体が動かない。

このままこの人に俺は…、

涼架

っ…!!

絶望と諦めで目をぎゅっと瞑った瞬間、

元貴

やめろ!!!!!!

轟くような怒声が響いた。

そして怒声が響いたと同時にマネージャーの体が吹き飛ばされた。

マネージャー

ぐあぁっ!!

マネージャー

お、まえ…っ!!

その声の主は元貴だった。

俺を庇うように前に立ち、拳を固く握っている。

元貴

お前、最近不自然に入ってきたマネージャーだよな…涼ちゃんに何してんだよ…っ!!!!

元貴の目は怒りに染まっている。

涼架

っう、ぇ…っげほっ、げほっ

恐怖で吐き気が込み上げてきて咳き込んでしまう。

滉斗

涼ちゃん大丈夫?!

若井が俺の元に駆け寄ってきた。

滉斗

っ、アイツこんなことまで…!!

俺のビリビリになったシャツを見て若井は自分のジャケットを俺にかけてくれた。

涼架

元貴、若井…

二人が助けに来てくれた。

安心した途端、全身の力が抜け前に倒れていった。

滉斗

涼ちゃん!

地面にぶつかる前に若井が咄嗟に支える。

マネージャー

クソ!!お前のせいで!!

マネージャー

お前のせいで人生めちゃくちゃだ!!!

マネージャー

お前なんか辞めちまえ!!!

涼架

あ、

あぁ、やっぱり俺は辞めないとなのか…

俺は若井に支えられたまま気を失ってしまった。

涼架

…あれ、

目を覚ますと、さっきまで居た空き部屋ではなく医務室に居た。

横を見ると若井と元貴が椅子に座ったまま眠っていた。 起きる前に出て行こうと思って立ち上がると、

元貴が顔をバッと上げた。

元貴

っ涼ちゃん!!

滉斗

えっ、涼ちゃん起きたの?!

元貴の声に若井も起きてしまった。

若井が俺に手を伸ばす様子に先程の事が重なり、無意識に後ずさってしまった。

涼架

ひっ…触らないで…!

涼架

や、やだ…!!やだ!

涼架

怖い…っ!!

自分の体を抱きしめるように腕をぎゅっと握る。まだアイツの手の感触が残っている気がして、吐き気がした。

涼架

うぇ…っ、げほっげほっ

元貴

っ…

元貴

涼ちゃん、大丈夫…大丈夫だから…!

滉斗

俺らが居るから!

元貴と若井が言ってるけど、

マネージャー

お前なんか辞めちまえ!

この言葉と触られてる感覚が残っていて全身が震えて冷や汗が止まらない。

滉斗

涼ちゃん…、大丈夫だよ

若井が優しく声をかけるが、俺は顔を伏せたまま動けない。

元貴がそっと視線に合わせるように顔を覗き込む。

元貴

涼ちゃん、俺たちは涼ちゃんの味方だよ

その言葉にゆっくりと顔を上げた。涙で潤んだ瞳が揺れる。

涼架

元貴…、俺どうして生きてるんだろう…

ポツリと零れた言葉に、元貴と若井の表情が一気に強張った。

涼架

俺なんかが居ない方が、上手くいくだろうし…

涼架

俺なんかが居ない方が、もっと楽しく活動できると思うんだ

涼架

スタッフさんにも、ファンの子にも言われてるんだ

涼架

辞めろって…

元貴

は、

涼架

俺だって辞めるべきだと思うよ。

涼架

でも本当は…

涼架

2人ともっと頑張りたい…!

涼架

だけどダメなんだ…

滉斗

涼架

だからもう、消えたい…

すごく静かだった。だけど、その静けさが余計に二人の胸を締め付けた。

元貴

ふざけんな…っ、

元貴が肩を震えた手で掴む。

元貴

どうして、そんなになるまで何も言ってくれなかったんだよ…!

涼架

俺なんか、2人からしたらいらない存在だから…

滉斗

っなら俺らがどんな気持ちで涼ちゃんの事探したか分かる?!

滉斗

もしあと少し遅かったら、俺は…俺は…っ!!

若井が拳を握りしめて震えている。

元貴

…涼ちゃんにそんな事言う奴らも、

元貴

涼ちゃんがそこまで追い詰められてるのにもっと早く気づけなかった俺って最低だな…

元貴

本当にごめん

滉斗

俺も、ごめん…

涼架

ど、どうして謝るの…

滉斗

涼ちゃんに悲しい事言わせた事と、腕の事だよ…

涼架

っ別に自分の意思だから2人は悪くない!

そうだ、こんな事言うのも、腕も嫌がらせや当てつけじゃない。

それに切って少しでも落ち着く事ができたから自分の意思で切ってたから2人は全く悪くない。

涼架

…こんな傷跡、他の人が見たら不愉快にさせちゃうし2人にもっと迷惑かけちゃう…

涼架

それに、俺が居なくても…

滉斗

涼ちゃん、それ以上言わないで

聞きなれない低い声に驚いて顔を上げると、若井が悔しそうに震えている。

滉斗

俺らがどれだけ涼ちゃんを大事に思ってるか、まだ分からないのかよ…!

元貴

涼ちゃんが居ないと、俺の歌は完成しないんだよ…

元貴か俺の頬に手を置いて静かに言う。

涼架

…慰めてくれてありがとう。

涼架

でも本当に、元貴と若井の2人ならもっとすごい所まで行けるよ

元貴

そんな訳ない!!

元貴が声を荒らげた。

元貴

そんなわけないだろ…っ、俺らはずっと3人で頑張ってきただろ…!!

元貴

誰か一人でも欠けたらそれはもうミセスじゃないんだよ!

心臓が強く跳ねる感覚がした。

涼架

っでも、でも…!

滉斗

滉斗

涼ちゃんが辞めるなら、俺らも辞める。

若井がハッキリと言い切り、俺は目を見開いた。

涼架

…え?

滉斗

涼ちゃんが居ないなら、俺もうギター弾かない。

元貴が大きく頷いた。

元貴

俺も、作曲もしないし歌わない。

元貴

涼ちゃんが居ないのに、どうやって曲を完成させればいいんだよ…。

喉が詰まって、言葉が出てこない。

滉斗

…ねぇ涼ちゃん

若井が優しい声で語りかけてくる。

滉斗

こうなっちゃうぐらい、俺ら涼ちゃんの事が大好きなんだよ…

滉斗

涼ちゃんが1人になりたくても、そうさせないぐらいそばに居るよ。

滉斗

だから…一緒に生きようよ

その言葉が、

凍りついていた心を少しずつ溶かしていく。

涼架

っ俺…、生きてていいの…?

元貴

あはは、泣くなよ涼ちゃん

元貴が苦しいほどギュッと抱きしめてくれる。

元貴

当たり前だろ?涼ちゃんは俺たちの大事な家族なんだから。

若井もそっと俺の背中を撫でながらほほ笑む。

滉斗

涼ちゃん、これからもずっと一緒に居よう。

ーーここに居ても大丈夫。

俺は泣きながら2人の温もりに身を預けながらそう思う事が出来た。

…あの後、3人でそのまま医務室から元貴の家に移動してから学生の頃に戻ったようにゲームをしながら夜更かしをした。

それから数日、色んなことが起きた。

まずひとつは…

マネージャー

元貴、ちょっと

元貴

ん?…あぁ、若井は涼ちゃんと待ってて

滉斗

おk

涼架

滉斗

涼ちゃん、腕痛まない?

涼架

うん、もうだいぶ良くなったよ

滉斗

俺ほんとあの時倒れるかと思ったからね…

あの時とは、前にお泊まり会をしたらお風呂で腕を引っ掻いてしまい血が思いっきり垂れ始めてしまった時の事。

涼架

俺も切ってた時は何も思わなかったのに、あの時はすごくびっくりして…

元貴

若井!ちょっと来て!

元貴

涼ちゃんはどうする?

涼架

どうするって、

元貴

…あの例のマネージャーについなんだよ

…すごく怖いけど、ここで聞かなかったら乗り越えられない気がする。

それに、2人がいるから…!

涼架

…聞くよ

元貴

…わかった、キツかったらすぐ言ってね?

優しい眼差しで頭を撫でてくれる元貴は俺が年上のはずなのにすごく大人びて見える。

涼架

あ、ありがとう…

滉斗

何照れてんだよ

涼架

て、照れてないから!

滉斗

はいはい笑

元貴

本題に行くけどいい?

涼架

…うん。

元貴

…あのマネージャー、どうやら他にもやらかしてたみたいであの後すぐ逮捕されたって。

滉斗

それは良かったけど…他にも?

元貴

うん。

元貴

まず強姦未遂に強制わいせつと盗撮でしょ?

涼架

盗撮?

元貴

うん

滉斗

…おいまさか、

元貴

…涼ちゃんの家に置いたって自白したんだよ。

涼架

っ、

元貴

それから

滉斗

まだあるの?!

元貴

名誉毀損、侮辱罪、教唆で一発アウトで逮捕だってさ

滉斗

一発アウトなのか?

でも良かった…逮捕されたんだ…!

滉斗

てか教唆って…

元貴

涼ちゃんが精神的にダメになって自分の所に来るように人を雇って悪口言わせたんだってさ。

滉斗

はあ?!

元貴

最初から涼ちゃん狙いのタチ悪い犯罪者だったんだよ。
だから不自然に新しく入ってきたし

元貴

涼ちゃんを遠ざける様な感じだったんだな

涼架

そうなの?

滉斗

うん、そうだよ!涼ちゃん1人だけ呼んだり逆にわざと涼ちゃんを1人にしたり…

滉斗

っ、1人で呼ばれてた時って…

涼架

…うん、実はね…。

思い出したくもない…。本当にあの時は死にたくて仕方なかった…。

元貴

…ごめん、気づけなくて。

涼架

2人は悪くないよ!

元貴

いや、俺は涼ちゃんを誰よりも愛してる自信があったから築けなくて悔しいよ…!

元貴

もう絶対そんな思いさせない。俺が涼ちゃんを一生大切にする!

滉斗

俺も!絶対にもうあんなこと起きさせない!俺が守るから!

2人からの告白みたいな言葉に思わず顔が暑くなった。

涼架

っ、ありがとう、でもなんか告白みたいで…

元貴

いや告白ぐらい本気だからこれ。

滉斗

覚悟しててね?

これが1つ目。

そしてもう2つ目は…

涼架

あ、ごめんトイレ行ってくるね

元貴

俺も〜

滉斗

俺も行く

涼架

え、みんなで?!

2つ目は、2人がすごく過保護になったってこと。

驚いて目を丸くすると、元貴は真顔で頷いて、若井は個室まで来るんじゃないかって思う程真剣な表情で立っている。

涼架

大丈夫だよ、そこまでは!

涼架

それになんかこの歳でみんなでトイレはちょっと恥ずかしいというか、

元貴

いやいや、念の為だよ

滉斗

そうそう、念の為。

涼架

もうあの人は居ないのに俺を何から守ってくれてるの?

少し恥ずかしいけど、心の奥がほんのり暖かくなるのを感じる。

あの件から、2人はずっと過保護スイッチがONになっているみたい。

飲み物を取ろうとすると、

元貴

俺が未開封のを取るから!

ちょっとくしゃみをすると、

滉斗

大丈夫?!体調悪いの?!熱は?!

と、駆け寄ってくれる。

それが正直照れくさいけど、嫌じゃない。

元貴

それじゃあトイレにしゅっぱーつ

涼架

っわ?!

元貴が軽々しく俺を横抱きする。

元貴

涼ちゃん太ったって言うけど全然だよね

滉斗

むしろより可愛くなってると思う

涼架

ほんと?俺も可愛くなったなって思う!

元貴

自分で言うなよ笑

滉斗

ほら早く行こ?

元貴

ちゃんと捕まっててね?

涼架

元貴

行くよ!

涼架

っちょ、わぁ!?

元貴

あははは!!

滉斗

ねぇ次俺が涼ちゃんの事持つ!!

――こんな日常が、当たり前のように続いたらいいな。

そう思ったのは、僕だけじゃなかったら嬉しいな。

元貴

俺もそう思うよ

涼架

え、

元貴

…ふふ、涼ちゃんの考えてる事なんてお見通しだよ

滉斗

涼ちゃんが思ってる100倍ぐらい、俺ら涼ちゃんの事大好きなんだからね?

なんか、この2人とならこれからも頑張れそう。

思わず涙が出たけど恥ずかしいから顔を元貴の肩にうずめた。

元貴

…大好きだよ、涼ちゃん。

滉斗

俺も、涼ちゃんの事大好き

滉斗

だから絶対俺らは涼ちゃんの味方だからね!

元貴

もう絶対に一人で抱え込まないでね

その言葉に、心から頷いた。 そして彼らと共に歩む未来が、どんなに素晴らしいものになるのかを、少しずつ感じることができた。

end

この作品はいかがでしたか?

675

コメント

5

ユーザー

最高すぎる😭 次のお話も楽しみにしてます!

ユーザー

最高でした…、!本当にありがとうございます!家宝にします!!

ユーザー

リクエスト1つ目完結!! 読んで頂きありがとうございました!また次のお話でお会いしましょう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚