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家の前。 駅からずっと、左右にぴったりくっつかれて歩いてきた。
颯真が俺の鞄を肩に掛けたまま、さりげなく玄関の鍵を受け取る。
颯真
凪
颯真
凪
俺が反射的に返すと、海翔が笑いながら俺の頬を指でつついた。
海翔
凪
海翔
凪
海翔
海翔が、ぐっと顔を近づける。
ほのかにシャンプーの匂いがした。 指先で俺の髪をすくって、耳の後ろにそっとかけてくれる。
凪
海翔
茶色い瞳が、真っ直ぐに俺を映していた。
颯真が、その隣で無言のまま俺の肩に上着をかけてくる。
気づけば、俺の体は2人の間にすっぽりと囲まれていた。
颯真
凪
思わず小さく呟くと、颯真の目がやわらかくなった。
颯真
海翔がすかさず俺の髪をくしゃっと撫でる。
海翔
凪
海翔
肩に回された腕が、少しだけ強くなる。
胸の奥が、ざわざわと揺れる。 見知らぬはずの手のひらに、なぜか懐かしい温もりを感じてしまう。
凪
颯真
颯真が、低い声で囁いた。
颯真
その言葉の響きが、玄関先の夜気に溶ける。
海翔が笑顔のまま、俺の頬を両手で包んだ。
海翔
そのまま、彼の指先が俺の頬を撫でる。 親指で、眉の上をなぞる。
凪
海翔
距離が近すぎて、息が詰まりそうだった。
記憶がなくても、体が勝手に反応してしまう。 温もりを、知ってしまっているように。
凪
俺はかすかに笑ってしまっていた。 2人は顔を見合わせて、同時に微笑んだ。
颯真
海翔
その言葉と一緒に、2人の手が俺の背中に触れる。
優しい手のひら。 知らないはずの温もり。 なのに、もう抗えないくらい懐かしい。
俺はそのまま、玄関の中に押し込まれていった。
颯真
海翔
2人は名残惜しそうに手を離して、夜の闇に消えていった。
ドアを閉めた瞬間、俺の頬はまだ熱いままだった。
朝。 玄関のチャイムが鳴るよりも早く、部屋のドアがコンコン、と軽く叩かれた。
海翔
凪
返事をする前に、鍵の音がした。 まさか──と思った瞬間、ドアがゆっくり開く。
颯真
颯真が、無表情で朝の光を背負って立っていた。 その後ろから海翔がひょこっと顔を出す。
海翔
凪
颯真
凪
海翔
凪
海翔
海翔はベッドの端に腰を下ろし、 そのまま俺の布団をぐいっとめくった。
海翔
凪
海翔
凪
海翔
そう言って、もう遠慮なく俺の髪を手ぐしで撫で始める。 シャンプーのいい匂いがして、指先がやたら優しい。
颯真は無言でクローゼットを開け、制服を取り出してアイロンを当てている。
颯真
凪
颯真
凪
颯真
海翔が笑いながら、俺の寝癖を直す。
海翔
凪
海翔
凪
颯真
その一言に、胸がちくりとする。 気づけば、颯真が靴下を出してきて膝を折った。
颯真
凪
颯真
凪
颯真の指先が、ゆっくり俺の足首に触れた。 冷たい肌を、温めるみたいに。
颯真
海翔がその横でお弁当を掲げる。
海翔
凪
海翔
凪
颯真
海翔が、にこにこしながら俺の頬を軽くつまむ。
海翔
颯真は、静かにネクタイを結んでくれる。 その距離、呼吸が触れるほど近い。
颯真
凪
颯真
2人の手が同時に俺の肩に触れた。
颯真
海翔
海翔が当然のように俺の手を取る。 颯真はもう片方の手を握った。
両手を、2人に握られたまま、 玄関の外に出ていく自分がいた。
凪
海翔
颯真
2人の声が、朝の光に溶けていく。
俺は、恥ずかしいのに、 なぜかほんの少しだけ安心している自分に気づいてしまった。