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太宰は首の後ろを押さえ乍ら保健室へ戻ってきた。

其の表情は軽い疲労に塗られて居る。

太宰はふと気付いた。

__人の気配が無い。

太宰 治

…中也?

昼休み。

体育館倉庫。

中原 中也

(嗚呼、もう…)

中原 中也

来るなら来い…

跳び箱、バット、柔軟用のマット…雑然とした景色を眺め、中也が服の裾を握り込む。

微かに足音が聞こえ、中也は振り向いた。

白瀬 撫一郎

よぉ、中也

予想通り__白瀬だ。中也は、先刻から考えて居た科白を淡々と告げる。

中原 中也

…一つだけ

中原 中也

頼みがある

白瀬 撫一郎

何だよ

中原 中也

服、着てても見える位置には傷を作りたくねぇ

中原 中也

家の人が心配する

白瀬 撫一郎

…分かった

白瀬とて、大人を交えた問題に発展するのは好ましくないだろう。

太宰に、バレない様に。 中也は其れだけを頭に入れて居た。

中原 中也

中原 中也

一人か?

白瀬 撫一郎

嗚呼

近くに柚杏と亜矢は居ない。 気配を感じないから、本当に居ないのだろう。

中原 中也

…何故

白瀬 撫一郎

何だって良いだろ

白瀬はじりじりと中也に近付く。

白瀬 撫一郎

で?気分は如何よ…罠に嵌った劣等生くん?

中原 中也

っ…!

矢っ張り。 白瀬は亜矢に騙されては居なかった。亜矢と組んでいたのだ。

固まった中也に、白瀬が蹴りを入れた。 鈍い音が響く。

中原 中也

い"っ…

腹を押さえ、中也が蹌踉めく。

白瀬 撫一郎

はっ、様ァねぇな

中原 中也

く、そ…

白瀬 撫一郎

…遣り返してみろよ

白瀬は二発、三発、と中也を蹴り続ける。

中原 中也

ゲホッ…

中也はただ、其れを受けるだけ。

決して、遣り返そうとも、殺意を見せようとも、

攻撃を避けようともしなかった。

白瀬 撫一郎

チッ…何だよ、其の目

白瀬は舌を打ち、中也を睨み付ける。

白瀬 撫一郎

…何か云えよ

中原 中也

ぁがっ…

中也は襟首を掴み上げられ、苦しそうな声を上げる。

ぎりぎりと締め付けられる感覚に、白瀬の腕を咄嗟に掴む中也。

中原 中也

…一つ、っ聞かせて、くれ…っ

白瀬 撫一郎

は?

中原 中也

何でっ…だ…?

白瀬 撫一郎

…云ってる意味が解んねぇな

中原 中也

俺と、お前…は、ただのっ…級友、だっただろ…?

白瀬 撫一郎

嗚呼、そうだな

中原 中也

謂わば…同じ組織…に、属してる…っ、って事、だ…なのに、何で…っ!

白瀬の手に力が入り、中也の首へ掛かる負荷が大きくなる。

中原 中也

っ…ゲホッ…何が憎いんだよ…

白瀬 撫一郎

…じゃあ先に聞かせてくれよ、中也

白瀬 撫一郎

何故遣り返さなかった?何故避けなかった?

中原 中也

…俺を殴って、手前の気が、っ済むなら…好きなだけ殴れ…

中也の其の言葉に白瀬は歯を食い縛り、傍に在ったバットを握る。

白瀬 撫一郎

そう云う処だよ…

白瀬 撫一郎

なぁ、中也…

中原 中也

っ…白、瀬…?

白瀬 撫一郎

黙れ

白瀬 撫一郎

お前の、そう云う処が気に入らないんだ…

白瀬 撫一郎

優等生で、勉強も運動も

白瀬 撫一郎

人間関係も…

白瀬 撫一郎

皆に良い顔して、気に入られて

白瀬 撫一郎

何でも出来る、お前を

白瀬 撫一郎

見てると苛々するんだよ…!

中原 中也

…そうか

御免。

中也がそう云った瞬間に、白瀬はバットを振った。

中原 中也

ぐ…あ"…っ

白瀬 撫一郎

そう云う処も!

バットが、中也の横腹を打ち続ける。

白瀬 撫一郎

全部…全部、此れは、お前への罰なんだよ…!

中原 中也

い"、っ…

罰。

其れ、は。

中原 中也

ど…いう…っ"…

中原 中也

っ、…ぅ、ぐ…っ…

目の前がくらくらする。

白瀬が手を離し、中也は頽れた。

呼吸をするので漸と。

昼休みが終わる迄、後何分だろう。

昼休み終了迄に、保健室に戻らないと。 太宰を心配させる。

荒い呼吸を吐き、此方に憎悪を向ける白瀬が見えた。

白瀬の目元からは、何故だか涙が溢れ落ちて居る__

何故だか…。

中学生殺し屋は養護教諭に恋をした。  太中※学スト改変

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