コメント
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おっふ...(( 文章が凄く的確で小節を読んでいるかと思いました、、。 とても素敵な作品をありがとうございます!!
港の倉庫街に、夜の雨が細く降っていた いつものように太宰は仕事を放り出し、濡れた手すりに寄りかかって海を眺めている。 低く響く足音が、彼を振り返らせた。
中也
中也がコートを軽く揺らしながら近づいてくる。
雨の匂いよりも先に、懐かしい砂糖菓子のような甘い酒の香りが鼻をかすめた。
太宰
中也
太宰
中也は言葉に詰まり、舌打ちを一つ落とした。 太宰はその反応が可笑しくて、何も言わず薄く笑う。 しばし、雨音だけが二人の間を満たした。
中也
不意に、中也が低い声で切り出した。
中也
太宰の指先が一瞬だけ止まる。 しかし彼は、すぐにいつもの調子で肩をすくめた。
太宰
中也
中也の耳がわずかに赤くなる。 それを見逃す太宰ではなかった。 太宰はゆっくりと近づき、中也の帽子のつばをそっと持ち上げる。 雨に濡れた青い瞳と視線が合った。
太宰
中也
太宰
太宰の声は、雨よりも静かで温かかった。 中也は小さく息を吐き、太宰の胸倉を軽く掴む。
中也
太宰
中也
掴んだ手は乱暴に見えて、その力はほんのわずか震えている。 太宰はその手を包み込むように握り返した。
太宰
中也は視線をそらしながら、
中也
とだけ言う。 それは、中也なりの優しさであり、 太宰が求めていた答えでもあった。 雨は相変わらず降り続けている。 しかし二人の歩幅は、ぴたりと同じだった。