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24 - 赤×水_過去を慶びで上書きしませんか。

♥

243

2025年04月01日

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辛 い 過 去 を 、 慶 び で 上 書 き 出 来 る 様 に 。

水_Hto

ね ~ 、これってさ、あの日と同じ天気だよね ~ …?

彼がふと口にした言葉に、俺は目を瞬いた。

赤_Liu

………あの日?

水_Hto

そ ~ 、_月_日‼︎

水_Hto

空は曇ってたけど、午後には晴れて、

水_Hto

風が少し強かったあの日

赤_Liu

……流石、良く覚えてるね

水_Hto

…覚えてるよ、だって僕は——

彼が微かに笑う。

それは誰から見たって笑顔の筈なのに、俺には思い詰めている様にしか見えなかった。

水_Hto

覚えた事、忘れられないから……ッ笑

彼がそう呟くと、胸の奥に冷たい痛みが走る。

__俺は自然に、出会った時の事を思い出してしまった。

初めて彼を見たのは、高校の入学式の時だった。

桜が舞う中、校門の前に立つ君を見た時、一目で『特別』だと感じた。

背筋を伸ばして、何処か張り詰めた表情。

でもその瞳の奥には、警戒心と孤独が混じっていた様に感じる。

赤_Liu

……あ

そして偶然、彼が鞄から落としたキーホルダーを拾った。

それを差し出した時、彼が驚いた様に俺を見つめた瞬間…、

ふっと胸が詰まる感覚に陥る。

赤_Liu

君、これ落とした?

水_Hto

あッ…、うん…

水_Hto

ありがとッ……‼︎

彼の声は驚く程綺麗で、でも何処か硬い。

それを和らげたくて、俺は自然と笑っていた。

赤_Liu

同じクラス…、だよね?

赤_Liu

一緒に行こ

そう声を掛けると、彼が小さく頷いた。

桜の花弁が肩に舞い落ちる。

彼はその花弁にそっ…と手を伸ばして、それを指先で挟む。

 ——その仕草が、どうしようもなく綺麗だった。

彼が"特別"だと気付いたのは、それから間も無くだった。

授業中、先生が黒板に書いた数式を、彼は1度もノートに書き写す事なく解いて見せる。

教科書を一目読んだだけで内容を丸暗記し、

漢字テストは常に満点。

赤_Liu

水って凄いよね ~ ……

水_Hto

凄い……??

赤_Liu

問題解くの、めっちゃ早いし

水_Hto

そ ~ かな…?

赤_Liu

ど ~ したらそんな覚えられんの ~ ……?

休み時間にそう聞いた時、彼は視線を落とした。

その瞬間、自分の愚かさを肌で感じる。

水自身のテリトリーに入ってしまった事に、申し訳なさで言葉が詰まる。

赤_Liu

あッ、…無理に答えなくて大丈夫ッ__……

水_Hto

……生まれつき、だから

赤_Liu

生まれつき……ッ、?

水_Hto

瞬間記憶能力って、聞いた事ある?

赤_Liu

瞬間記憶能力……?

水_Hto

目に映ったものを、そのまま記憶してしまう

水_Hto

凄いでしょッ…?笑

赤_Liu

……ッッ

赤_Liu

……過去に、何かあった?

水_Hto

ぇッッ……何で、そ ~ 思ったの…、?

赤_Liu

今…、凄い思い詰めた顔してるから

水_Hto

っ……

赤_Liu

屋上に行って話そッ……?

赤_Liu

…もし話せるなら、俺には頼って欲しいし

水_Hto

うんッ……

瞬間記憶能力。

それは、目に映る全ての情報を、一瞬で脳に刻み込む力。

僕がそれに気付いたのは幼稚園の頃だった。

ある日、先生が読み聞かせてくれた絵本。

その絵本の内容を、僕は一語一句間違える事なく暗唱した。

先生は驚き、それから両親も試しに同じ様に本を読んでみたけれど、

僕はその全てを完璧に再現してみせた。

『この子は天才だ』

大人達はそう言って笑う。

でも、僕はそれが『天才』何かじゃない事をすぐ理解した。

人と違う、ということは孤独を生む。

そして、孤独はやがて『異端』と呼ばれる。

水_Hto

……人と違うって、理解されないんだよね…笑

小学校に入ると、僕はクラスの誰よりも成績が良かった。

先生が黒板に書いた文字や、教科書の内容を一瞬で覚えられるから当然の話。

『水くん凄いねっ‼︎』

水_Hto

えへへッ…ありがと…‼︎

僕が『凄いね』と褒められたのは最初だけで、

やがてクラスメイトの視線は冷たいものに変わっていった。

『何でそんなに出来るの?』

『カンニングしてるんじゃない?』

『気持ち悪い』

何て、最初は遠巻きにされていただけだった。

でもある日を境に、誰かが僕の机の中に塵を入れる様になる。

水_Hto

ぇッ……、塵っ、?

持ち物が隠され、教科書は破られ、僕の名前が廊下の壁に汚く書かれた。

水_Hto

ッッ………

泣きたかった。その場で。

でも泣いたらまたやられるかもしれない、そんな恐怖心がいつの間にか芽生えていた。

__そしてある日、誰かに突き飛ばされて階段から落ちた。

水_Hto

いッ…た、…

意識が薄れる中で、同級生達がくすくすと笑っているのが聞こえた。

『覚え過ぎるからだよ笑』

『"お前なんか"が居なきゃ、普通に楽しかったのに』

僕は彼らの顔とその言葉を、一言一句、脳に焼き付けた。

忘れられない。

忘れたいのに、絶対消えない。

それから僕は人と距離を取る様になった。

勉強は適度に手を抜き、記憶力を見せびらかす様な事は絶対にしなかった。

人との会話も、僕を『普通の人間』と同じ様に接してくれる人とだけ。

狭く、深く。

何より『普通』で居る事を、常に意識してきた。

——でも、彼だけは違った。

彼に初めて会ったのは、高校の入学式の日。

桜が舞う中、僕は校門の前で1人で立っていた。

赤_Liu

……あ、君

声がした方に顔を向けると、彼が居た。

長身で、整った顔立ち。

綺麗な赤髪と、優しげな赤の瞳。

赤_Liu

君、これ落とした?

水_Hto

あッ…、うん…‼︎

水_Hto

ありがとッ……‼︎

鞄のストラップにかけていたキーホルダーを差し出されて、僕は自然と驚く。

赤_Liu

同じクラス…、だよね?

赤_Liu

一緒に行こ

その会話が、彼との始まりだった。

彼は、僕に積極的に話しかけてくれた。

昼休みに誘ってくれて、一緒に帰ってくれて。

テスト前には一緒に勉強しようと声を掛けてくれた。

赤_Liu

ッ…‼︎

赤_Liu

水 ~ っ‼︎

水_Hto

あ、赤ちゃんッ、‼︎

赤_Liu

一緒に購買行こッ、食べたいパンある…‼︎

水_Hto

うんッ、勿論…‼︎

何の変哲もない日常。

それが僕にとってとても心地が良い。

彼は僕を『普通とは違う』と感じていながらも、普通の親友の様に接してくれた。

勿論今も。

だからこそ、彼になら伝えれる。

今まで隠してきた僕の秘密を。

水_Hto

小学校の時……僕、嫌われてたんだ

赤_Liu

ッ、ど ~ して…?

水_Hto

…覚え過ぎるから

その言葉に、俺の胸が一瞬で締め付けられる。

水_Hto

出来すぎる事が……、

水_Hto

人を傷付ける事になるなんて、知らなかったッ……

赤_Liu

それで……、虐められてたのッ…、?

水_Hto

うんっ……

赤_Liu

…そんなの可笑しいでしょッ…

水_Hto

でもッ……忘れられないのっ…

水_Hto

全部、今でも覚えてる……

赤_Liu

全部……?

水_Hto

顔も、声も、言葉も

水_Hto

『気持ち悪い』って言われた事も……忘れられない

その時、俺は決心した。

——彼の記憶の中にある痛みを、俺なりに全部抱きしめようと。

赤_Liu

……じゃあさッ、

水_Hto

っ…?

赤_Liu

これからは…、俺の事をもっと覚えてよ

水_Hto

えッ、?

赤_Liu

楽しい事も、嬉しい事も全部……

赤_Liu

全部、俺が水に忘れられないくらい与えるからッ…、‼︎

水_Hto

そッ、それって……

赤_Liu

水の記憶の中に、俺を刻み込むって事ッ……笑

『不器用』だって、そんなん『不可能』だって言われても良い。

不器用な俺にとって最適な方法がこれだっただけだから。

これくらいの事で、水の記憶に楽しさを入れれるなら、何だって良い。

水_Hto

それなら……忘れたくないかもッ……笑

赤_Liu

忘れなくてい ~ よ

赤_Liu

俺が水を守るからッ、笑

それから俺は、水の隣に居続けた。

人と接するのが苦手な水が困った時は、俺が代わりに答えたし、

教室で水が1人にならない様に、いつも隣の席を確保した。

……まぁ、俺が隣に居て欲しかっただけなんだけど。

極偶に、過去の事を思い出して寂しそうな顔をする事がある。

そういった時には隣で無理やり笑わせた。

笑顔がこんなにも素敵なのに…、寂しい顔をしてばかりいては勿体無い。

水_Hto

……赤ちゃんが居れば、大丈夫かもッ‼︎笑

赤_Liu

…‼︎

赤_Liu

それなら良かったよッ…♪

水にそう言われた時、心底嬉しくなった。

俺の存在が、水を支えている。

そう思うだけで、苦しい事もすぐ乗り越えられた。

赤_Liu

……今も辛いよね

水_Hto

うん……ッ便利だけど、少しだけ辛い…笑

彼は小さく微笑んだまま、空を見上げた。

——瞬間記憶能力。

水は目にしたもの、耳にしたもの、感じた事を一瞬で覚えてしまう。

そして、それを決して忘れる事が出来ない。

『1度見た景色は絶対に忘れない』

それが水の才能であり、呪いだった。

赤_Liu

……過去の奴らぶっ飛ばしたい

水_Hto

こ ~ ら、そんな事思わないの ~ 笑

赤_Liu

……メンバーには、言わないの?

水_Hto

う ~ ん……言わないかなぁッ…

水_Hto

知ったら、きっと皆困るし…笑

赤_Liu

でもッッ………、

水_Hto

赤ちゃんだけは知っててくれてるから

水_Hto

それだけで、僕は大丈夫だよ

赤_Liu

ッッ、………

昔の事なんて、そんなの過去にすぎない。

何て言う人いるけど、水にそれが通用するかと言ったら、何とも言えない。

だって…、記憶はどれだけ昔のものだって鮮明に映ってしまうのだから。

例え10年以上前だとしても、

"そんなの過去でしかない"なんて言葉で済まされる程軽い傷じゃないし。

どれだけ水に心を寄せていても、

どれだけ側に居たとしても、

水を心から笑わせられる事は数少なかった。

そんな俺を、熟憎く思う。

水_Hto

…辛い事は、確かに多かった

水_Hto

でもねッ、?

ふっと彼が笑う。

水_Hto

楽しい事も、忘れないんだよッ?笑

赤_Liu

…楽しい、事…?

水_Hto

例えば…、赤ちゃんが側に居てくれた毎日。

水_Hto

メンバー皆で笑った事。

水_Hto

そ ~ いうのも、ちゃんと覚えてる

赤_Liu

……そっか

水_Hto

だから、僕は大丈夫ッ…‼︎笑

そう言って、水は微笑んだ。

でもその笑顔の裏に、沢山の孤独が隠されているのを俺は知っている。

そこでまた決心した。

もし、メンバーに打ち明ける事があるのならば。

メンバーが心から批判したとしても、俺が水の1番近くで守ってあげようと。

紫_Sho

な ~ 、最近水くんの様子、何か可笑しない…?

赤_Liu

……そ ~ ?

黄_Yu

それ俺も思ったんよなぁ ~ ……

黄_Yu

元気が無いって言うか…、

黄_Yu

何か無理してる様に見えるんよ……

青_If

せやなぁ……

正直、俺も気付いていた。

でも__どうする事も出来ない。

桃_Nai

……俺、水に何も出来ないのかな

赤_Liu

何も出来ない、って…?

桃_Nai

……言いたい事、聞きたい事、沢山ある

桃_Nai

まぁ、俺リーダーだしッ…笑

桃_Nai

でも……

赤_Liu

でも…?

桃_Nai

聞いたら、壊れそうな気がするんだよね

沈黙が落ちる。

その時、ぱたんッ、とドアが開いた。

赤_Liu

__あッ、

そこに立っていたのは、水だった。

赤_Liu

水……ッ?

水_Hto

……話が、あるの

声が震えていた。

水が俺を真っ直ぐ見つめる。

水_Hto

みんなにもッ…話したい事ある

桃_Nai

ん…、思う存分話しなよ

静かな空気が流れる中、リビングのテーブル周辺に、皆が集められた。

水は立ったまま手を震わせている。

水_Hto

……僕は、覚えた事を忘れられませんッ、

水_Hto

僕は…、瞬間記憶能力を持っています……

驚きと、戸惑いと、理解が入り混じった沈黙。

青_If

……それって、凄くね?

桃_Nai

便利そ ~ じゃん……?

水_Hto

__そ ~ 思うでしょ?

水_Hto

でもねッ……

言葉を詰まらせて、唇を噛む。

水_Hto

僕は、過去に……虐められていましたっ……

水_Hto

それも……忘れられないんです

彼の声が震える。

水_Hto

罵られた事も、陰口も、全部……忘れられないんです

水_Hto

毎日、頭の中に蘇ってッ……

俺は水の震える手をぎゅっ…と握る事しか出来なかった。

水_Hto

だから……怖かったんですッ、

水_Hto

また、皆が僕を嫌いになるんじゃ無いかって…ッ

紫_Sho

水くんッッ………

水_Hto

でもッ……でもねッ…?

水が涙を零す。

水_Hto

赤ちゃんだけはッ、僕を受け入れてくれたッッ…

水の瞳が、俺を真っ直ぐに見つめる。

水_Hto

だからッ、…信頼出来る皆にも、知って欲しかった

メンバーの涙が頬を伝うのがこの目に映る。

水_Hto

これが僕の、全部ですっ……

静寂が降りた。

その静寂を破ったのは__…

赤_Liu

……ありがとう

水_Hto

ぇっ、?

俺は水の手を取って、優しく、そっと握る。

赤_Liu

俺を信じてくれて、ありがとう

その瞬間——水の肩が震えた。

赤_Liu

大丈夫だよ、これから先も

赤_Liu

水は1人じゃ無いからッ……

腕を伸ばして、想いを存分に込めて抱きしめてみる。

赤_Liu

俺が居るじゃんッ、…?

水_Hto

……っ、赤ちゃんが居るから……僕は……

赤_Liu

これからも隣に居るよ ~ っ…?

赤_Liu

4人のメンバーと共にねッ、…

紫_Sho

せやで、辛い事あったらすぐ言いや ~ ッ……?

青_If

水の事迷惑やって思う奴居らんしなッ、

黄_Yu

メンバーである以上に、家族みたいなもんやん…‼︎

桃_Nai

水はさ、このメンバーの事…、

桃_Nai

たった1つの事で批判する最低な奴らだと思う?

桃_Nai

それとも……

桃_Nai

全部受け入れてくれる、最高の仲間?

水_Hto

最高のッ、仲間……っ‼︎

桃_Nai

でしょッ…?笑

桃_Nai

だから……沢山迷惑掛けてい ~ の

桃_Nai

迷惑掛けてこその仲間なんだから

桃_Nai

ねッ…?♪

水_Hto

うんッ…みんなありがとっ…、‼︎

赤_Liu

…水ッ、?

水_Hto

ん ~ ッ、?

赤_Liu

…全部、俺が守るからね

水の目が、再度潤んでいくのが分かる。

赤_Liu

大丈夫、泣いてもい ~ よ…?

赤_Liu

俺が全部受け止めるから

——その夜、メンバー達が全員寝静まるまで、

俺達は珍しく起きていた。

ただ静かに、温もりを分け合った。

覚えた事は消えない。

でも——

赤_Liu

俺が側に居る限り、絶対大丈夫だよっ……

水_Hto

ふふッ……ありがとね、赤ちゃん…

水が微かに笑った。

それは、今までで1番綺麗な笑顔だった。

リクエストくれた方本当にありがとうございます…‼︎ めっちゃ長くなってしまいすみません…😭😭 リクエスト募集中です‼︎ 何かあればすぐ申し付けてくださいね…🥹🫶

この作品はいかがでしたか?

243

コメント

40

ユーザー

わらにぃさんお久しぶりです 🥲 久々のコメント失礼いたします ! 最近はもうわらにぃさんがどんどん遠い存在になっているような気がして寂しいです 😿🤍 リクエストは思いついたらまたコメントさせていただきます !! これからも陰ながら応援させてください 😽🌷

ユーザー

( TДT)ゴメンヨー見るの遅くなった!🙏💦 いや、普通にすきなんだが?? 普通に泣いたんだが?? 最高かよ。…………ww(?) また、次も待ってるね!

ユーザー

わーん😿😿‪ 最高すぎる😭😭👏✨ え、リクエストで(( 💎くんが性同一性障害だったら((今回の性同一性障害ばーじょんで もしかしたらもうリクしてるかも…そしたらごめんちょ

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