この作品はいかがでしたか?
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ふわっ、と春の香りがした
桃色に彩られた桜の花びらが宙に舞った
賑やかな校内を背景に、運動場には青空に映えた桜が立ち並んでいた
それを眺めていた
誰かの足音が聞こえたような気がした
じゃり、じゃり、じゃり。
やがて足音は止まった
風に揺られながら、少し目を伏せた
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ふと、そんな声が聞こえた
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どこか寂しそうな声色だった
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そうぽつりと呟きながら、ゆっくりと振り返った
いつもと変わらない君が立っていた
君が、少し微笑んだような気がした
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ふと、校庭に目を向けた
卒業式が終わったばかりの校庭はとても賑やかで。
同級生と泣いている人
思い出話をしている人
__告白をしている人
この校庭には、様々な人で溢れかえっていた
私も来年になったらここを卒業すると思ったら、なんだか虚しい気持ちになった
.
君と目があった
君の綺麗な瞳
翡翠色の眼
それが少し、潤んだように見えた
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そう寂しそうに呟いた君の姿は、風に舞う花びらでよく見えなかった
ざわざわ、と桜の木が揺れた
私の心を表しているかのようだった
意味がわからなかった
あまりの衝撃に声も出せないまま、君を見つめた
「留年」
その一言が頭をよぎる
けれど、成績優秀で普段の素行も優等生な君が留年なんて するはず無かった
大人すぎると思ったぐらいだ
.
.
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満面の笑みで、君はそう言った
満開に咲いた桜のような笑顔だった
ほろり、と君の目から零れた涙は地面に落ちて。
小さな水たまりを作った
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花びらが、君の身体を包んだ
ふわり、と君の香りがした
花びらが去ると、そこに居たはずの君の姿はなかった
なにもなかった
.
君って誰?
誰?
剣_?
_也??
思い、出せない
.
「僕は、貴方のことが」
「ずっと好きでした」
永遠の高校2年生を過ごす不死の僕が
普通の女の子に、恋をしてしまった
何十年、何百年と同じ日を繰り返す僕にとって
こんなに想える人が出来たのは、生まれて初めてだった
できることなら、ずっと一緒に居たいと思った
不老なんかじゃなかったら、貴方と付き合えたのかな。
貴方はこれから生きていく中で
恋をして
結婚して
子供を授かって
普通の人生を歩んでいくんだろうなあ
貴方は僕のことを忘れてしまうかもしれない
けれど僕は、
俺は
貴方のことをいつでも思っています
敬具、
剣持刀也。
コメント
10件
剣ちゃんそうやって僕を泣かせんなよ.ᐟ.ᐟ
うわあぁ…泣きそうになっちゃった。あれ藍ちゃん、また上手になってる…??
短編集を書くのにハマりました😌剣持めちゃくちゃ描きやすいです