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フッ

はぁ....やっぱパレスに比べると、ここすっごく窮屈。

そう呟き溜息をつくと、急に扉がバン!と開かれた。

うわっ

ドクター

うわ、とは生意気な奴だな...っておい、被検体01、その姿は....!?

あ...

これは...その、実験が終わったしばらく後に、急に....

ドクター

やった...やったぞ....ついにあの薬は成功したんだ....

研究者はどこか虚ろな目で、ブツブツと呟きながら覚の髪に触れた。

ひっ...

ドクター

羽までは再現出来なかったが....これで十分だな....よし

......??

ドクター

おい、被検体01。
お前は今日から「天使」だ。

て、天使って...。

ドクター

お前が住む場所を変更する。
ついてこい。

え、あ、はい。

覚は訳が分からなかったが、研究者の言う通りついていくことにした。

牢獄の廊下

(久しぶりにちゃんと見たら...死体が大量に...)

ドクター

おい、何を見てる。
早くこい。

すいません。

医務室

えっ、ここは....

ドクター

医務室だ。

ドクター

お前にはこれから、ここで過ごして貰う。

は、はぁ

ドクター

そして、俺の計画を伝える。
お前にはそれに協力をしてもらう。

け、計画ですか

(何か話がよく理解出来てないから難しいんですけど)

ドクター

まず、お前、母親に売り飛ばされたのは覚えてるな?

っ.....!!!

ドクター

今回の計画は、お前の母親からの依頼を達成するためのものだ。

ドクター

俺はその為に、無理難題を引き受けて、ここまで実験をしてきたんだよ

ドクター

もちろん、金のためだけどな

.....。

その、無理難題って?

ドクター

あぁ、お前を天使に作り替える事だよ。

ど、どうして....?

ドクター

どうしても何も、お前が生まれた故郷に問題があるんじゃねぇのか

私、故郷の事なんて覚えてません。
これから何か私の身に、良くない事が起こるのは予想がついてます。

ドクター

だから何だ

教えて下さい、ドクター。
母は、何がしたいのですか。

ドクター

.....それは、自分で調べた方がいい。

研究者はそう言うと、持っていた大量の資料を机の上に音をたてて乗せた。

ありがとうございます。

ドクター

礼はいらん。
どうせお前には協力してもらうんだからな

ドクター

まぁ、ここまでの実験に耐え抜いた事は褒めてやる。

......いえ。

研究者はそれだけ言うと、部屋から出ていった。

........。

うっ..…うぅ....。

(酷い....何、これ....。)

資料には、自分の故郷の風習が事細かく書かれていた。

覚の故郷....「天使村」には、20年に1度だけ現れると言う天使に、住民一同、祈りを捧げるのだそうだが、天使が現れない場合、天使が怒っていると見なし、生贄を捧げるのだという。

(生贄を出すのが嫌になったから、私が天使役をする事になった、って事なの...??)

(どうして...どうしてよ...お母さん.....!!)

(.......。言ってくれれば。お母さんの為だと思えば。喜んでこの身を差し出したのに。)

(ドクターとお母さんは、やっぱり共犯だったんだね。)

(今まで...誘拐されたんだって...思う努力をしていたけれど)

(結局は貴方も。金に目がくらんだ、ただの金の亡者なんだ)

(金を貰って。救世主扱いされるがために、私をここに売り飛ばしたんだ)

(だったら、私が生まれ落ちたその瞬間に、私を手放して欲しかった)

........。

パレスに行かなきゃ

ベリアン

主様!

ただいま

ベリアン

帰ってきて下さって...本当に嬉しいです。

そう。

ベリアン

今お紅茶を淹れますからね。

.......。

覚はふらふらとした足取りで、自室へと向かった。

ルカス

.....あれは、主様...?

自室

(どうしよう。この感情をどこに捨てれば楽になるの)

(っ....お母さん...)

(悲しい時は、歌を歌うのが良いって、教えてくれたよね。)

(じゃあ私は、貴方のせいで負った癒せない傷口を抉るために歌うよ)

ベリアン

(主様が帰ってきて下さって、本当に良かった...。)

〜♪

ベリアン

おや、何か聞こえますね...。

ベリアン

(これは、主様のお部屋からですね)

ベリアン

(盗み聞き....は良くない...ですが....)

ベリアン

(少しだけ...。)

寂しさの中 僕らは生きる

光の先で 孤独を歌う

ベリアン

(孤独...)

このまま明日が 来なけりゃいいの

疲れたくらい 言わせてくれよ....

ベリアン

(主様....何だか、こちらまで泣きたくなってきました...。)

夢の中君の声だけが

聞こえたような 問いかけるような

嗚呼

『この世界で煌めくような』

『生きる意味を探しているの』

ベリアン

.......!

『泣いちゃうみたい 夜の瞬きすらも』

『今日は、愛させてくれ』

ベリアン

(.....何でしょう...この、歌の感情に引き込まれるような感覚は...)

『きっと明日も最期もそうやって』

『ココロの何処かに絆創膏』

『貼れないままで生きていく』

『痛いの、痛いの傷口が...』

ベリアン

(主様....)

『生まれた意味は考えない』

『考えたら辛く、なるの...』

ベリアン

(っ....)

『でも君の音だけは暖かいから』

『このままで、居てもいいの?』

『ありのままで、居てもいいの?』

『独り分からない事ばかりすらも』

ベリアン

(独り....ですか)

『全部、愛していいの?』

『この世界で煌めくような』

『生きる意味を、探しているの....!』

『泣いちゃうみたい 夜の瞬きすらも』

『今日は、愛させてくれ』

ベリアン

(っ....どうしましょう、涙が....)

ベリアン

(初めて主様の歌声を聞きましたが....心に直接響くような歌声ですね...。)

ベリアン

(主様の感情が、そのまま入ってくるような感覚でした...。)

ベリアン

おっと、紅茶が冷める前にお出ししなくては

コンコン

(ふふっ、貴方が付けた傷口に、絆創膏なんて貼ってやらない。)

(一生残して...後悔させてやる)

コンコン

ベリアン

主様、お紅茶をお持ち致しましたよ。

どうぞ

ガチャ

ベリアン

失礼します。

......?ベリアン、もしかしてさっき泣いたりした?

ベリアン

えっ?

だって、目が赤く腫れてるような...

ベリアン

あの...これは...

もしかして、歌、聞こえてた?

ベリアン

.....申し訳ありません....。

謝る必要は無いよ。だって、私のせいだから

ベリアン

いえ、主様は何も悪くないですよ...。
勝手に聞いた私の責任ですので...。

ううん、ベリアンが泣きたくなったのは私に原因があるの。
だから、ごめんなさい

ベリアン

.....。
主様、1つ伺っても宜しいですか?

何?

ベリアン

主様は...今、孤独だと感じているのですか?

.....!

ベリアン

主様、どうか今だけは、本当の気持ちを聞かせてくれませんか?

ベリアンがそう言うと、覚の顔から表情が抜け落ち、まるで人形のように固まってしまった。

........たいの

ベリアン

主様....?

....にたいの....。

ベリアン

主様、呼吸が荒くなっています。ゆっくりでいいですから...

死にたいの

ベリアン

え....

もう、どうでもいい。
今、無性に死にたいの。
この感情は行き場を無くしてるから、私が死んで葬らなきゃ

そうしたら私は役ただずって言われるのかなぁ

この世は本当にシビアだよね。

あと何日で死ぬかも分からない人に、こんなにたくさん責任が覆いかぶさって。

それでも当の本人に拒否権なんて存在しなくて

周りはどれだけその人が苦しんでるのか理解出来ずにその人の傷口を抉るんだよ

でも傷口なんてもうとっくに腐り果てて痛みなんて感じなくなってるのに

その腐った傷口を炙って腐敗をとめて。
今日も生き続けなきゃって言う圧力に潰されながら生きてるの

否定も何も通用しないなら、その人はどうやって呼吸していけばいい?

心はもうドロドロに腐りきってるのに、どうやってその心臓を動かして行けばいい??

止まってしまった神経はもう生き返ることは無いのに

切れてしてしまったその意味をなさない糸をどうすればいい??

そもそも、捨てられて行き場が無くなったこの肉体自体をどうすればいい!?

ベリアン

主様!!

頭を抱えてうずくまる覚をベリアンが慌てて制止させると、覚は小刻みに肩を震わせた。

.....せめて、理解されたかった

......死ぬ前に、思いっきり愛して欲しかった

ベリアン

主様...大丈夫ですよ。
私は貴方の味方。
絶対に孤独な思いはさせません。

.....。足りないの。それだけだと、満たされない。

ベリアン

.......。

.......私が歩んできた15年間は、寂しさと、辛さと、苦しみと...痛みで出来てる。

本当に無理だと思ってしまったら、その感覚達だけはどうしても遮断する事が不可能だから。

私はね、捨て子なの。
ベリアン、貴方と違って、私は10年間独りで、辛い実験に耐えてきた。

ベリアン

……

お母さんは.....私が幼いのをいいことに。

事実は何も話してはくれなかった。

話してくれれば。協力した。

でも....お母さんは話してくれなかったから。

ベリアン

主様....。

私は....あいつに協力したくない.....。

でも私には...『自由』っていう選択肢がない

今逃げても。
パレスから帰らずに現実を捨てても。

新しい死者が増え続けるだけだから...。

だから私は....この身を削って仕事を全うしなければならない...。

それに....

覚は虚ろな目で小さく微笑んだ。

私、生まれてから....たったの10回でさえ、名前を呼んでもらったことがない。

ベリアン

......!

ベリアン

(だから主様は...事ある毎に名前を呼んでくれて居たのですね...。)

お母さんがつけてくれたこの『覚』って名前はね、文字の通り、何かを呼び覚ますって意味があるの

でも、結果的には私は覚めるの真逆で。
眠ろうとしてるのにね。

ベリアン

っ.....!!!

「あはは。」と小さく無理やり笑ってみせる覚を見て、ベリアンは耐えきれず覚を抱きしめた。

どうしたの、ベリアン。

ベリアン

っ....。
主様、辛いのでしょう.....?

そうだね

ベリアン

苦しいのでしょう....?

うん

ベリアン

ならば、どうして笑うのですか?

.....笑えば、笑えてくるから、って言っておくね

ベリアン

主様。
辛い時は、泣いたっていいんですよ。

その涙が出てくるかどうかの問題だね

ベリアン

泣きたいと願うのであれば無理にでも泣かせますが

ふふっ、それは勘弁して欲しいなぁ

覚は、「病体に響く」という言い訳をしてベリアンの腕から逃れようとしたが、逆にがっちりと捕らえられてしまった。

そろそろ離して、ベリアン。

ベリアン

......。

......はぁ。全く......

(ここで泣いてくれる貴方にちょっとだけ救われてる私は変なのかな)

覚にしがみついたまま泣いてくれるベリアンにちょっとほっこりしながらも、覚はベリアンの柔らかい髪を撫でるのだった

幽蓮

はい。今回はここまでです。

結構長くなってしまってすみませんでした

幽蓮

ワードセンスが無いもので...。

幽蓮

今回、覚ちゃんが歌っていた曲は、MIMIさんの「愛するように」です。

幽蓮

良くないのは分かってるんですけど勝手に漢字を変更させて頂いておりますすみません

句読点をいれましょう。

幽蓮

はい...。

幽蓮

途中で画面の上の方でちらちらとベリアンの通知がきて癒されながら書きました!

内容結構重たいのに癒されてたって凄いな

幽蓮

これが最推しへの愛ってやつですよ

はいはい心の声漏れてる、漏れてます。

幽蓮

ではまた次回もお時間が許してくれれば是非呼んで下さいね✨

今回も呼んでくれてありがとうございます

幽蓮

では!

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