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haikeiokashikutemokinishina~i
hennnatokoattemokinishina~i
Let's go.
歌を歌うのは寂しいから。 気を紛らわせないと、ダメになってしまう。
目を閉じるといつもあなたの声が聞こえてくる。
でもそれすらも忘れかけていることが恐ろしいのだ。
だから、出来るだけ貴方のやっていたことを思い出しながらあなた自身を近くに感じたいんです。
皆を明るく照らす明かりとなった貴方へ、俺が追い付く準備を終わらせるまで待ってください。
明かりになった貴方の、光を俺は見ることができるのでしょうか?
もう一度あなたという光を、感じることができるのでしょうか?
「ふざけんな!」
「お前のせいで!」
ノイズが聞こえないようにするために歌う。それでも涙が溢れてしまいそうになったので、目を閉じて必死にこらえた。
暫くして涙が引っ込むと、俺は部屋を出た。
何日ぶりだろうか。部屋の外をこんな風に歩くのは。
仕事は長い事休暇を貰い、ずっとあなたの事を追いかける準備をしていた。
そんな中でも、たまに思い出されるのは、休日なのに早起きで元気なあなたの姿。
皆のためにと休みの日も朝の放送を怠らずにいるあなたの姿。
そして相棒である俺の部屋には直接やって来て、カーテンを開けながら優しく「朝やで!」と笑うあなたの姿。
久しぶりに部屋から出たのは、それを思い出すため。
そして早くあなたに会いに行くための、準備。
廊下を歩いているとコネシマさんと出会った。
あの人が居なくなってから一切外に出る事の なかった俺が出歩いてるのを発見すると、似つかわしくない顔で驚いた。
でもすぐに表情を戻した。
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にかっと笑って見せる。
貴方も見てますか?コネシマさんこんなに元気なくなったんですよ。
もう一切うるさくない。少し哀しくなるが、首を振って言った。
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普段の俺からは想像もできない大声。それこそ貴方の自慢の声量。
だからコネシマさんは大きく肩を震わせた。目を真ん丸にしている。
でも早くあの人に会いたい俺は、またすぐに歩き出した。
その場所につく。本来ならあなたがいたはずの席。
その光景に少し悲しくなり、また泣きそ うになってしまう。
泣いてしまう前にとそこに座り、ボタンを押して口を開けた。
syp
放送を終えて一目散にそこから逃げた。
周りだって煩く騒めいているし、きっとトントンさんとかは駆けつけてくるだ ろうから。
そして俺は、貴方と俺しか知らないその場所にいた。
ここで何時間時間をつぶしたことだろう。もうすでに日は暮れていた。
まだ大丈夫。まだきっとバレてない。
俺はカモフラージュのためドアの鍵を閉め窓から軍基地を抜け出してきたのだ。
何をしようとしているのかなんて、言わなくともわかる事だろう。
その後も時間はどんどんと過ぎて行った。ついに日は完全に暮れ、星が出はじめた。
星になってしまった貴方へ、其方へ届くまで待っていて。
俺のせいで星になってしまった貴方はまだ俺のことを相棒として見てくれているんでしょうか。
死ぬ前に歌うなんて変な話かもしれない。でも、俺は貴方の歌っていた歌をまた歌いたいのです。
そうすれば星になった貴方にも、俺の姿が届くかもしれない。だから。
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歌い終わると冷たい海の中に身を投げ出した。ほのかに明かりが見えた気がしたがきっと気のせいだろう。
俺は眠るようにゆっくりと目を閉じた。
目を覚ますと真っ白な部屋にいた。
死んだのかと思ったが、そうではなかったらしく視界の端にはトントンさんが眠っている。
あの時の光はトントンさんのライトだったのかと思い返す。
そしてゆっくりと起き上がり、静かに自分の部屋へ戻った。
失敗した。貴方の下へ行くつもりだったのに。
皆さん本当にひどい方ですね。実際には正しい事をしているのでしょうけどね。
皮肉なことを考えながら俺は眠りについた。
勢いよく扉が開かれた音で目を覚ました。最悪の目覚めだった。
でも扉を開けた張本人は安心した顔で床にへたり込んだ。
というか鍵を閉めていたはずなのにまさか壊してきたのだろうか。なんてしょうもない事を考えていると、他にも幹部の皆さんが集まってきた。
そういえば昨日は医務室を抜けだしてきたんだったっけな。
確かに、全身ボロボロで医務室にいたあなたが、朝いなくなってた時は焦りましたっけ?
そんな感じなんでしょうかね。
貴方も俺が急に医務室から消えていたら誰よりも早く俺の部屋に来ていましたもんね。
そう 言えばあなたが居た頃は少し不用心かもでしたけど、扉に鍵なんてつけてなかったですね。
そんな楽しかった頃も今となってはもう拙い記憶でしかない。
どうして俺じゃなくて、貴方 が、、。
自然と溢れて来た涙はとどまる事を知らず、見られるのが嫌だったの で二度寝を装って布団で隠すことにした。
今日もまた夜がやってきた。綺麗で一面に広がる星空は俺には皮肉ったらしかった。
でも俺 はそれをあなたからの催促だと思ってるんです。
だから、と俺はその場所に立つ。
俺のせい で死んでしまった貴方へ、天国で会えるまで待っていてください。
いや、でも俺は地獄です ね。だってこんな死に方を選んだんですもん。
そして俺は海の方を見る。これが最後になればいいけど、無理かもしれない。
もうすでに足音が近いから。それでも、と飛び込み貴方の歌を歌う。
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水が入り込んできて呼吸もうまくできない海の中で、必死に歌を歌う。
少しでもあなたに近 付くために。
syp
目から何か出てきた気がするがそれが涙なのか何かすら分からない。
そのうち意識が遠のいてそろそろ終わりを感じた。
ハズだったのに、目を開けると兄さんがいた。
俺よりも美しい紫の兄さんが少し羨ましかった。
それでも俺の紫を褒めてくれたあなたに会いたいのに、どうして許してくれないんですか?
なんて声は届かないことは知っていた。
ちょうど正午の鐘が鳴り兄さんも起きていたので、その場で布団に蹲ってまた静かに一人泣いていた。
早く、気、、、よ!、、お前に、、死、、で、、、ほ、、い、!
起きると午後一時。どうやらあのまま小一時間ほど寝てしまっていたらしい。
体を起こすと 目の前にいた兄さんが驚きと喜びの混ざったぐちゃぐちゃな顔をして、はっとするとインカムにつなぎ始めた。
それよりも先ほどの声。あれは絶対に貴方の声だった。なんて言ってい たのかうまく聞き取れなかったけど、、?
早く、死ねよ?お前に死んでほしい、、?
嘘だ嘘だ。そんな訳ない。貴方はそんなことを言わない。これはきっと悪魔からのささやき だ。
あれ?でも、俺のせいで死んでしまった貴方なら、俺の事恨むべきですね。
失笑しか出なくなって、俺はすべてを紛らわすため歌い始めた。貴方の曲を。
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そうして何度も歌っているうちに兄さんに呼ばれたであろう人達が部屋へ急いできた。
でも そんなのは関係ないと、歌い続ける。
しばらく静かに聞いていた皆さんの中で、ふと、トン トンさんが口を開いた。
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その言葉に目を見開く。モールス信号?確かにぽいなと歌いながら思う事はあった。でも確証がなくて何もできていなかったのだ。
もし本当にそうなら、俺は貴方が思っていたことが 分かるかもしれない。
でも。
その時あまたに思い浮かんだ一つの言葉。
「お前に死んでほしい。」
貴方がそれほどに俺に怒りを持っているのなら、俺にそれを知る権利はないのではないか?
そう思った。
その刹那。
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ゾムさんが叫んだ。
でもそれはゾムさんの意思ではなかったようだった。正確には、ゾムさ んの言葉ではなかった、だろうか。
ゾムさんはフードを手で深くかぶり、今にも泣きだしてしまいそう な気持を押し殺していった。
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あいつ。それはきっと誰もが同じ人物を想像したはずだ。
この場にいなくなってしまった一 人の幹部。
いないはずの彼が伝えたかった言葉に、誰もが目を見開いた。
もう聞くはずがな いと思っていた彼の想いに、彼の優しい怒りに。
久しぶりに”生きたい”と思った。
貴方が許してくれるのなら、俺は気持ちを知らなければいけない。貴方が、俺に何を思っていたのか。
それから俺は部屋に引きこもって研究をした。
正直あまり難しい内容ではなかったが、 少々書き方がややこしいものもあった。
だからずいぶんと時間がかかってしまったが、なん とか形にすることができた。
そして俺は向かう。その場所へ。
貴方が俺のために歌を歌うときも、俺と内緒話をするときも、貴方が俺のために何かをする ときはいつもこの場所だった。
見慣れたはずのこの場所がなんだか今日は一段と輝いて見えた。
いや、多分貴方と見たこの景色を忘れていただけなんだ。 怖かった。貴方が居なくなったのを自覚するのが。
でももう逃げてなんていられない。貴方が何を思い何 を歌っていようと、俺は受けとめなければいけない。
貴方の想いも。この現状も。全て。
だから、貴方の名前も呼ばなければ。
ねぇ、そうでしょ?
__ロボロさん。
いつの間にか皆さんが周りに集まっていた。
きっと言葉の意味を知った俺の行く末を見 守るつもりなのだろう。
歌おう。まだ意味も分からないけど、きっとロボロさんの 事だから、温かくて優しい言葉なんだろう。
そして俺は歌う。皆を明るく照らす星となった”彼”に向けて。
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目を見開く。涙が溢れる。
違う。これは、この歌は暖かくて、優しくて。でもそれだけじゃない。不器用で俺の大好きなロボロさんの歌なんだ。
ボロボロとこぼれる雫を拭いもせずにただひたすらに歌い続けた。
”貴方に向けて、俺からもこの歌を送ります。”
俺も愛してますよ。ロボロさん。
その時だった。空から流れた一筋の星の光が、確かに言ったのだ。
いや、きっとあれはロボロさんだ。
溢れる涙は止まる事を知らない。それこそ空に流れる流れ星のように、いやそれ以上に。
そんな俺に皆さんが心配してくれたが説明する余裕がなかったため、後で説明することにした。
そして屋内へ戻り、泣き止むまで待っていてくださった皆さんの方へ向き、言った。
syp
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「me too」