テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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その先に、君がいるから。

第20話 - 8月28日。

108

2022年09月24日

#白血病

#橙

R -アール -

無菌室に入る前、俺は原田くんと会話を交わした

橙

原田くんも無菌室入ったことあるよね？

原田くん

そりゃあ勿論っすよ！

橙

どんな感じ？

原田くん

まぁじで、ただただ暇

原田くん

プラス体調も最悪だから楽しいことほぼなかったですよw

橙

…ふーん

原田くん

あっそうだ！

彼は爽やかな笑みを浮かべて言った

原田くん

橙さん、LINE交換しません？

橙

…ふぇっ？

原田くん

俺の形だけの受験生なんで、そこまで会話できないですけどw

原田くん

俺、

『橙さんと、もっと話したいなぁ」

彼はそう言っていた

橙

(原田くんとは話したい。けど俺は…)

腐っても、活動者だ

原田くんは、本当に信用できるのか

本当に、俺の味方なのか

はっきりとはまだ、分からない

でも…

橙

(彼のことは信用したい)

橙

(彼との会話に、彼との出会いに、疑いを持ちたくない)

橙

(彼と、もっと仲良くなりたい…)

橙

(もう、疑心暗鬼のまま人と関わりたくない…！)

原田くん

ダメ…ですかね…w

橙

…いや、

橙

俺も、…交換したいな！

となって原田くんとLINE交換したものの、彼から通知がくることはあまりなかった

橙

(勉強頑張ってるのか…)

橙

(凄いな…)

俺も、頑張らなきゃ。

焦るような感情が込み上げてくる

橙

……

橙

…そういえば今日は、

ライブだった日なんだよな

橙

うわぁガチめに暇や

橙

今度おかんに頼んで家にある本持ってきてもらお…

橙

ってか今日の俺元気やな…

橙

…急にみんなしてどうしたんやろ

橙

まあ、検査もろもろは昼からやし…

橙

…スマホの音質悪いんよな

橙

まあ、ええか

桃

あ橙来た

青

やっほー

橙

よう！

黄

体調どう？

橙

なんか今日は元気やでー！

橙

ハゲへの進化は止まらんけどなw

青

ちょwwwやめろwww

赤

どのくらい抜けたの？

橙

まだそこまでやな

橙

明日くらいには一気に抜けると思うでw

赤

…そっか

橙

んで、急にどした？

黄

あの…その…ね？

桃

今日って、ライブだった日じゃん

桃

公式放送で、そのことについて少し触れた方がいいんじゃないかなって

桃

話してたんだ。みんなと

橙

…

青

やっぱり、楽しみにしてくれてたリスナーさんは沢山いるんよね

青

その中には、橙くんに対して否定的な人もいるし

青

…よく分からない状況なんだよ、今。

青

リスナーさんが、僕らの判断に対して本当に理解してくれているのか…

桃

本当に、俺らの決断を支持しているのか

桃

ここは放送で触れて、しっかりリスナーさんに伝えようと思ってる

桃

急遽中止になったから、迷惑をかけてしまったり、悲しい思いをさせてしまったリスナーさんも沢山いるしな

黄

橙くん…放送、これる？

黄

橙くんの言葉を待ってる人もいるし…

黄

もちろん、橙くんの体調が第一だけど

橙

…そ、やな

「自分の言葉で」

赤

みんなに、伝えよう

赤

俺らの決断と、その思いを

赤

…ね？

橙

…うん

橙

また20時に、よろしく

8月28日　　　　　　　　　　　　最近の中では一番調子が良かった。食欲も普通にあり、久しぶりに美味しいと思えた。頭を掻いていると手に髪の毛が引っ付いてくるのは少し気がかりだが。入院して初めて、放送に出た。今日はライブだった日が、メンバーが一人ずつ自分の思いを伝える放送の日に…。先生に20分という制限をかけられたので、少ししか出ることは出来なかったが、とても満足した。全員ではないにしろ、リスナーさんは俺のことを、俺たちの決断を認めてくれた。嬉しかった。それと同時に、リスナーさんとメンバーの『ライブ』という楽しい時間を奪ってしまったことに、罪悪感が湧いてしまった。仕方がない決断にしても、やはり責任を感じてしまう。みんな、ごめんね。完全に復活するまでは、公式放送に出るのは遠慮することにした。あくまでも今は四人でのグループになるから。今の俺には、四人のグループを応援することしかできないから。体調さえ良ければ、個人放送はしようと思う。待ってくれているリスナーさんの為に。