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青葉城西女監督

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青葉城西女監督

9 - MISSYONN6 用具室の人物に会え!

♥

333

2023年05月09日

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ナチュラルにいけ…!

ナチュラルに…!

夏休みが終わったと言え8月下旬の空はまだまだ夏空だ

彼の黒いTシャツが日向を吸収してどんどん熱くなってゆく

そして——第三体育館で活動中の青葉城西バレーボール部の部員は

まだ影山飛雄の侵入に気づいていない——

用具室からスコアボードを運んできた

——金田一勇太郎は

少し緊張していた

いつもバレー部が単独専用していた体育館は

いつもより頭数が多い

今日は大学のOBと練習試合の日だった

でけー、強そー、てかまだ夏休みなのか、羨ましー

と他愛のないことを考えやることを探していたら

金田一の背中にゾクリと寒気が走った

金田一勇太郎

……なんだ、今の?

女監督

金田一くん?

寒気が走った先にはいつもの女子大生がいた

女子にしては大きすぎる身長に短めの髪を結っている

その透き通るような目

なにかゾッとする物の感じがする

彼女がこちらの心情を読み取るようにして、後ろに立っていた

国見英

なーにやってんだ、金田一

国見英

ほら、どけ

キュッと肩をあげた中途半端な姿勢で固まっている金田一に声をかけたのは

ボールの入ってるカゴを、運んできた国見英だった

金田一勇太郎

いや、なんか今後ろから殺気が…

女監督

それってあたし…?

金田一勇太郎

いや…なんと言うか…女監督じゃない気が…

素直にそう告げた金田一だったが

国見の冷たい視線に気づくとバカなこと言った自分が恥ずかしくなった

そして普段通り開いた窓を確認すると

国見英

……緊張、してんだな…

金田一勇太郎

まあ、デカいしな

金田一勇太郎

いるだけで存在感あるわ

国見英

アレと試合すんのか

金田一勇太郎

やりたくねーわ

金田一勇太郎

て言うか、まだ大学は夏休みなんすか?

女監督

そうよ、もうすぐ終わるけど

女監督

まあ、あたしの場合

女監督

今回は部のためにどこも行けなかったけどねー…

国見英

行く相手いるんすか?

女監督

失礼ね!行く相手くらい…

女監督

行く相手くらい…

国見英

いないじゃないですか

女監督

うっさい!時間なくてつくんない!

彼女と国見の他愛のない話に金田一は苦笑いを浮かばせる

まあ、この人なりに頑張ってはいるんだろう…と

金田一勇太郎

ッシ…!

金田一勇太郎

OB来てくれてるんだから、あんまり手ェ抜くなよ

金田一勇太郎

やる気ないとか思われたら先輩達にも迷惑かけるからな

国見英

はいはい、わかった…ん?

国見英

なんか悪寒がしたけど、気のせいか

金田一勇太郎

なに、おまえも殺気感じたのか

国見英

いや、殺気とか訳わかんねぇし、冷たい風でも入ってきたんだろ

金田一勇太郎

ん…?

金田一勇太郎

俺、さっき国見と出たあとちゃんと閉めたよな…

そう言って異常なことに気づいたのが、用具室の扉だった

金田一勇太郎

俺、異常ないか見てくるわ

国見がなにバカなことを…

と言いたげな表情だったが、金田一は至って真剣だった

引き戸の取手を開け威嚇するように言葉を放った

女監督

あーら、どうせ気のせいよ

彼女がそう言いながら遠くから彼を見守る

女監督

………まあ、なんかあったら心配だけど…

国見英

素直に怖いって言えばいいんすよ

女監督

あのねぇ、怖いわけじゃないの!

女監督

それで国見くんとか金田一くんが試合に集中出来なかったらイヤでしょ!

国見英

そんなんで集中切らしませんよ

地味な言い合いをしている2人に代わって金田一が用具室を見渡す

金田一勇太郎

サーセン、誰かいますか!

しかし、薄暗い部屋にいつもの用具が並ぶだけで

人の気配は感じられなかった

金田一は扉に手をかけたまま呟く

金田一勇太郎

気のせいか…

国見英

バカ…

薄笑いで近づいてきた国見に気づいて金田一は扉を静かに閉めた

金田一勇太郎

絶対なにか隠れてると思ったんだかな…

国見英

なにかってなにが?何のためにに?

金田一勇太郎

わかんねーけど、なんかこう…いろいろあるだろ、そうゆうの!

国見英

そうゆうのって…まさか幽霊とか言わないよな

金田一勇太郎

……幽霊?おい変なこと言うなよ。国見

金田一勇太郎

俺は猫とか犬とか迷い込んだじゃないかと思っただけだ

金田一勇太郎

幽霊とかふざけるなよ

苛立ったように睨む金田一に気付き、国見が薄く笑った

国見英

へぇ、知らないのか?

国見英

この体育館、出るって噂

金田一勇太郎

なんだよそれ、聞いたことねえよ。

金田一勇太郎

どうゆうことだよ

国見英

………ただの冗談だよ

国見英

そんな怖がるなって

国見英

早く準備しないとドヤされるぞ

金田一勇太郎

怖がってんじゃねえよ、俺は…!

と、金田一が言い返そうとすると

ちょうど2人を呼ぶ声がした

2年の矢巾秀が急かすように手を振っている

国見英

うーす

国見が駆け出す

それに続いて金田一も走り出したが

もう1度用具室をチラリと見た

女監督

もう…

なにもなかったのはいいが

彼女も少し用具室を気にしていた

自分のメンテナンス道具がもし荒らされているのもイヤだし

これだと2人が試合に集中出来ないとも思ったし

女監督

しかたないですね…

彼女は1人用具室の扉を開けた

影山飛雄

危ねぇ…

金田一がこちらにやってきた時は焦ったが

なんとかマットの近くに隠れ、やり過ごした

ほっと、息を吐いた時だった

??

セッター魂…

すぐ耳元で、囁かれるような

冷たい声がした

影山飛雄

なっ…!

やばい、見つかったか…!

と思い声の先を振り返ると

そこには1人の女が立っていた

女監督

あんた、だれ?

見抜かれるような、冷たい顔つき

影山飛雄

俺は烏野高校1年、影山飛雄です!

影山飛雄

偵察しに来ました!

彼女が静かに腕を組み、こちらを睨む

女監督

ふーん

女監督

他校って勝手に入っていいんだっけ

影山飛雄

………ダメっす

俺がそう言うと彼女がニッと笑う

女監督

わかってるならよろしい

女監督

でもね、勝手に入っちゃダメだから

女監督

あんまりこうゆうことだやめよーね

影山飛雄

…うっ、す…

さっきとは打って変わっての態度だ

誰だこいつは…?

女監督

あなた…確か烏野の…

女監督

9番…?だったかしら

女監督

セッターの

影山飛雄

あ、そうっす

女監督

一次予選見に行った

女監督

2メートル相手にすごいじゃん

影山飛雄

あざっす

女監督

及川くんが言ってたわ

女監督

あの飛雄には手がかかるって

影山飛雄

本当っすか!

女監督

えーっと、北川第一出身だよね

女監督

2人とも

影山飛雄

…及川さんはすごい人です

影山飛雄

1人で大学生のチームにセッターとして入って

影山飛雄

すぐにスパイカーに合わせられる能力

影山飛雄

尊敬、します

女監督

そりゃあ、うちのセッターですからね!

女監督

でも、影山くんのトス回し

女監督

すごかった

女監督

最初あの速攻見た時本当に

女監督

綺麗だなぁ‥って

影山飛雄

…個人の能力では及川さんに及びません

影山飛雄

スパイカーの100%を引き出すセットアップ

影山飛雄

俺には真似出来ません

女監督

………?

わからなそうに彼女が首を傾ける

この人に話しても意味がない

だけど、聞いて欲しかった

俺はしゃがみ、ゆっくりと口を開いた

影山飛雄

中学の頃…

影山飛雄

普通はセッターはスパイカーに合わせるようにセットをします

影山飛雄

…俺はそれが出来なかった

影山飛雄

最後の中総体の決勝

影山飛雄

相手のマッチポイントで、トスをあげた先には

影山飛雄

…誰もいなかった

影山飛雄

仲間がもう俺にはついていかない…

影山飛雄

と言った一球だった

影山飛雄

今でもそれがずっと怖ぇです

しばらく彼女は俯いていた

下唇をキュッと噛み

頬にかかっている触覚を耳にかけた

女監督

…似ている

女監督

あたしとあなた似ている

女監督

終わり方が

女監督

そっくりね

彼女は俯いたまま、薄く笑った

彼女の顔は……

影山飛雄

…………

影山飛雄

あなたは一体…

俺が言いかけた途端

金田一勇太郎

俺見てくるわ!

体育館側から誰かの声がした

見てくるってまさかこっちに来るのか…?

女監督

げっ、やばっ…!

女監督

どこだ、どこに隠れる!?

影山飛雄

あの声金田一か…?

女監督

ちょっとそんなこと考えて場合じゃない!

彼女は少し考え

ぴっと窓の方向に親指を立てた

女監督

じゃあ、影山くん

女監督

逃げて

影山飛雄

あ…うっす

女監督

そこに窓があるから

女監督

もういいでしょ?

影山飛雄

大体は見れたんで

影山飛雄

大丈夫っす

俺は外の光が刺している窓に飛び乗り

きゅっと後ろを向く

影山飛雄

今日はあざした

女監督

ねぇ影山くん

女監督

偵察ってやっぱり役に立つ?

影山飛雄

まあ、相手の練習とか動きとか…

女監督

自分よりも強いチームを見てもいいの?

影山飛雄

ン…?俺みたい不法侵入はダメじゃないすか

女監督

わかった

女監督

じゃあ、うちに勝てるくらいに成長して来てね!

女監督

またなっ、影山くん!

彼女は最後に誇らしげなVサインを送った

影山飛雄

うす…

影山飛雄

絶対、倒すんで…!

そう言って俺は用具室を出て行った

出てから思った

あの人は一体

誰だったんだろう

この作品はいかがでしたか?

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コメント

2

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待って物語の作り方うますぎますよ!真剣に見ちゃってた…流石です!

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