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あの日も同じように、私はフェンスの前に立っていた。隣には、今日のように奏がいた。
彼女に誘われて一緒に来たはいいものの、運動部の練習風景にさほど興味のなかった私は、何も考えずにただぼんやりと見ていた。グランドの上に果てしなく広がる澄んだ空を。
その時、突然、ただ真っ青だった私の視界に、彼が入って来たのだ。
彼のその飛び方に何も言えずに、ただひたすら感動していた。
一目惚れなんてありえない。と思っていたのに、私は彼を初めて見た瞬間に彼のことを好きになってしまったのだそして次の瞬間には、失恋をした。
奏
隣でささやく奏の言葉が耳に入った瞬間に、私は、その恋を終わらせた。
彼の姿から目を背けて、もう二度と見ない。と心に決めた。
奏は、グランドに向けていた視線をチラリと私に移して、恥ずかしそうに頬を赤らめながら言った。
奏
知らない、と私は首を横に振った。少しも興味がないと思わせるために私はそっぽを向いて
遠香
なんていじらしいことを言った。言いながら思い出していた。
奏が少し前に
奏
と、春夏と菜々美に話していた事を。
確か、校内で気分が悪くなってうずくまっていた時に、最初に声をかけてくれて保健室まで連れて行ってくれた人だとか。