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灰猫
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あたしはずっと、病院で独りだった
お兄ちゃんやお母さん達はたまにお見舞いに来たけど、ずっと仲がよかった幼なじみはお見舞いには来なかった
それでも、退院すればまたみんなと一緒に居られるんだ、そう思っていた
だから退院できるって知ったときはとても嬉しかった。あたしもマンガみたいな青春を送れるんだって…。
だけど、退院して学校に行った時には、みんながバラバラになっていた
夢見ていた青春はどこにもなかった
みんなが前に進んでいるなか、あたしだけが時間が止まっていたんだ…
咲希
天馬咲希は少し重い足取りで学校に向かった
学校に着くや否や、自分のクラスとは反対方向に向かう
咲希
咲希は幼なじみである望月穂波の席を見る。その席が空席であることを確認する
咲希の顔は少し悲しみに沈んだ
咲希
志歩
しかし志歩は咲希を一瞥して…目をそらした
咲希
志歩の冷ややかな視線と、踏み込ませない拒絶
咲希は、かつて当たり前のように隣にいたはずの二人の背中が、今は何光年も先にあるように感じた
咲希
一歌
遥
咲希
一歌
咲希は少し流れそうになった涙を抑えて一歌達に受け答えする
同じクラスの一歌と遥は、いつも通り自分を輪に入れてくれる。それは本当にありがたいし、救いのはずなのに
咲希
優しくされればされるほど、自分が「異物」のように思えてくる。いっそ消えてしまえたら、この胸の痛みも、醜い執着も全部なくなるのに
その日の夜、咲希は自室に戻り、明かりを消す。パソコンのディスプレイだけが、暗闇の中で青白く光っている
ここには、病弱だった自分も、居場所を失った自分もいない。ただの「アマサキ」という存在になれる場所
咲希
げんない
パンケーキ
雪
スピーカー越しに聞こえる、顔も知らない仲間の声
パンケーキのぶっきらぼうなツッコミや、げんないの芝居がかったトーン。そして、どこか空っぽで、だからこそ心地よい雪の声
咲希
咲希は、キーボードを叩きながら小さく笑う。学校で押し殺していた感情が、この冷たいデジタルの波音の中でだけ、ゆっくりと溶けていく
咲希
咲希
げんない
げんない
一見バラバラな4人を繋いでいるのは、アマサキが作る、泣きたくなるほど優しい旋律
咲希
咲希
深夜、世界が眠りにつく頃、居場所を失った4人の「本当の時間」が動き出す