タッタッタッ.....
藍
今日も今日とて部活帰り。
そしてその僕が行く先とは...
そう、銭湯である。
「毎日部活で汗だく!湯船に浸かって綺麗にしたい!!」
「でも片親だから毎日お湯を張る余裕は無い!」
そんな願いと悩みを解決してくれるのが銭湯なのだ。
僕の家近の銭湯には混浴がある。
なんとその混浴銭湯が、
80円なのだ。
こんなにも格安なのに、混浴だから人は来ない。
...夜は女狙いの男子大学生が結構いるけどね。
だからこそ、部活が終わってすぐ銭湯に向かっているのだ。
藍
藍
藍
藍
そうして僕は手短に身体を洗い、湯船に向かった。
疲弊した身体がまだかまだかとあの快楽を求めている。
それほどに湯船というのは絶大な効果があるのだ。
だがしかし...
藍
唯衣
身体のみならず、精神も疲弊しきることとなってしまった...。
僕は本当に焦っていた。
貸切だと思っていた湯船には、クラスメイトの唯衣が居た。
頭が真っ白だった。
湯船に足を進めることも、脱衣所に戻ることも出来ず、ただ呆然と固まってしまった。
唯衣
唯衣
唯衣はタオルで身体を隠しながらも手で目を覆い、僕のことを見ないでいてくれた。
その一言で我に返った僕はすぐに真横の流し場の陰に隠れた。
唯衣
藍
唯衣
唯衣は僕を見なくていいようになったからか、少し落ち着いた様子だった。
しかし、当の僕はお湯に浸かっていないのに身体がとても熱くなっていた。
ひとまず陰に隠れたはいいものの...
...出ることが出来ない。
僕がどうしたら良いのか皆目見当もつかないでいると...
唯衣
藍
唯衣
藍
唯衣
藍
唯衣
唯衣
藍
唯衣
藍
なんて彼女は優しいのだろう。
彼女は普段教室では静かな方で、あまり話したことは無い。
てっきり「今すぐ帰って!」とはね返されるものとばかり思っていたのだが...。
僕はしばし迷ったが、彼女の善意を無下にしたくもない。
それに、お湯に浸かりたいのも事実だし。
藍
そうして僕は、目を瞑って湯船に足を進めた。
とても時間が長く感じれた__
こんなこと初めてだった。
私は普段はもう少し前にここに来ている。
今日は〜...そうだ。委員会のせいで来るのが遅れたんだ。
まさか少し遅れたからって彼と鉢合わせるなんて...。
.....そういえば.......。
...そういえば私は、彼に身体を見らてしまったのだろうか。
私は手で目を塞いでいた。それ故に彼が私のことを見ていたのか分からない。
それ以前に焦っていてタオルできちんと身体を隠すことが出来ていたかすら確証がない。
...こればかりは、彼に直接聞くしかないのか...。
唯衣
藍
彼の声が裏返っていた。どうやら私以上に落ち着けていないようだ。ちょっとかわいい。
唯衣
唯衣
藍
...どうやらだいぶ動揺しているようだ。その様子をみてこっちは落ち着いてきてしまった。
にしても見てないか...
彼はいい人だ。それは普段の学校生活を見ていればわかる。
だからこそ恐らく今のは演技では無さそうだし、下心もなさそうだ。
いや...前言撤回。男が何を考えてるかなんてわかったつもりでいたら足元すくわれる。
だがひとまずは身体を見られていなくてよかった。誰にも見られていない私の身体を、そこまで関わりもない男に事故で1番を取らせる訳にはいかない。
...と言っても、特にそういう関係になりたい相手がいる訳でもないが。
...なんのために銭湯まで来たんだか...。
そうして私はしばらくの間、じっと湯船に身を委ねた__
どうしようどうしようどうしよう...。
とりあえず言われた通りに目を瞑ってはいるが、まったく休まらない。
僕は長風呂が苦手だから、このまま落ち着くまで待っていたらのぼせてしまうかもしれない。
...僕は小さい頃のぼせて倒れたことがある。
当時は長く入っていたら良くないことなど知らず、周りの大人のようにじっと頑張って湯船に浸かっていた。
それ以来、その事が若干トラウマなのだ。
...彼女には申し訳ないが、今回は諦めて早めにあがろう。
...そうだ。
この後の時間帯には、不定期とはいえよく来る男性客がいる。
きっと彼女がこの時間に来ることは無いだろうから、その事を知らないはずだ。
だとしたら、もうじき彼女にもあがってもらわないとまずいんじゃなかろうか?
...でも彼女が上がるのをのんびり待っていると、僕も正直危ないかもしれない。
....さっき来たばかりと言っていたけど、今すぐに上がってもらうしかないかぁ...。
藍
藍
...よし、言えた。
唯衣
唯衣
今回はまだクラスメイトだから会話出来たし目を瞑って貰えた。
だが知らない人となると話は全く変わってくる。
お風呂で男の人と2対1になったり、脱衣所で鉢合わせるようなことになれば本当にまずい。
いつもより入浴時間が短いとはいえ、ある程度は休めた。
...疲れが取れたかと聞かれたら、あまり良い顔は出来ないけど。
チャプン...
視覚が奪われているからか、立ち上がると鳴る水の音が本当に綺麗に聴こえる。
私は毎日のようにここに通っている訳では無いから、目を瞑っていると自分がどこにいるかが分からなくなる。
それでも目を開けることは出来ないから、両手を使って慎重に進んで行くしかない。
...両手を使う...。
つまり身体をタオルで隠すことが出来ない。
こればかりは本当にどうしようもない。
彼がちゃんと目を瞑ってくれていることを信じることしかできない...。
そうして私は歩を進めた。
...長い。
私は湯船の1番奥の角にいたから、湯船の壁に沿って曲がって進めば彼を通り越して、あとは目を開けて脱衣所に駆け込むだけだろう。
しかし本当に長い...。
もうじき湯船の端まで来て目を開けれようになる頃だと思うのだが.....。
そんなことを思いながら足を進めていたら...、
唯衣
藍
いきなり真横で彼の声がした。
その突然の出来事に、私は目を見開いてしまった。
そこには彼の後ろ姿があった。
私は、彼の肩に触れてしまったらしい。
今更目を閉じたってもう遅い。
私は彼からすぐに視線を外し、脱衣所まで急いで...
何も言えずにそこから去った.....。
銭湯の翌日、僕らは学校で話すどころか、目を合わせることすら出来なかった。
だかあんなことがあったのだ。このまま無言で終わってしまうのも傷つけてしまうかもしれないし、モヤっとくる。
そうして、クラスLINEから彼女の個チャを入手し、何を送ればいいか考えていたら...
唯衣
終わった。0秒既読をしてしまった。
それになんと言うか...怒ってる...?
唯衣
なんか言って、と言われても何を言ったらいいと言うのだ!??
とりあえず...
藍
唯衣
藍
唯衣
何も言い返せない...。
だって実際数十秒は眺めてしまったし、その光景だって脳裏に焼き付いてしまっている。
唯衣
あー。やはり怒っているようだ。正直に観念しよう。
藍
唯衣
唯衣
藍
唯衣
唯衣
唯衣
あの時、少しくらくらし始めていてはやく上がりたい一心だったから、まさか見られていたとは思ってもいなかった。
ただ、僕も見ているし、お互い様だろう。
唯衣
藍
唯衣
短めの入浴時間でしっかりと休むためにも、その彼女からの申し出は本当にありがたいものだった。
そうして僕らは、それぞれが銭湯に行って良い時間帯を決めた。
時間帯を決めた。これで彼と鉢合わせることはなくなる。
それにしても、彼の反応、かわいかったなぁ〜...。
...
...またいつか、少し時間を遅らせて銭湯に行こうかな...。
コメント
1件
続き気になりすぎるー!!!