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言葉

1 - 言葉

♥

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2024年02月02日

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長編

言葉の大切さ

話題が話題なので投稿するか迷いましたが

今この状況だからこそ伝えたい

そんな思いで書き上げました

ぶーっぶーっぶーっ

この音...

アラームなんかじゃない

...動こう

そう気づいてからは早かった

ガチャッ

よし...

鍵を開け、玄関の扉を開く

揺れで扉が歪まないように

緊急地震速報の後は

一刻の猶予もない

んっ...しょっと...

すぐさま机の下に潜り込み

落下物から体を守る

彼は冷静だった

突然の緊急地震速報にも慌てず

今自分のすべきことをこなす

今この場にいない

5人の兄弟を心配しつつも

今どんな行動を取るべきか

きちんと考えていた

オープンキャンパスの為に

大阪にある高校へ来ていた五男、ジェル

どうしても学びたいことがあって

合う高校が大阪にあったのだ

ありがたいな...

都内、もしくは関東ではダメなのか?

兄は当たり前だが中々許してくれず

何回も何回も話し合いを重ねた

そうして決めたいくつかの志望校

そのうちの一校のオーキャン

ジェルは兄弟に対する感謝を胸に

たった1人、大阪の地へ出向いた

ちょうどその頃

ぶーっぶーっぶーっ

参加者、そして教員の携帯から

一斉に緊急地震速報の音がなる

落ち着いて!

机の下に隠れてください

皆ぞろぞろと机の下に身を隠す

そして感じる激しい揺れ

グラグラッ

はぁっ...はぁっ...

先程の地震の後

津波警報が発令され、

高台にある体育館に向かっている

ほんと...ガレキしかない...

地震直前の行動が功を奏したのか

玄関から難なく外に出る事が出来た

災害時用の荷物は

6人分用意してあった

同じ避難所じゃないと思うけど...

例え同じ避難場所じゃなかったとしても

皆この荷物を取りに家に帰っては来れない

それなら避難所の人に配る方が役に立つ

幸い道もほとんど地割れがなく

車が使えると判断して

全て車で運ぶことにした

着いた...

ここは高台にあるとある高校の体育館

名簿名簿...

この周辺では避難所に来た人は皆

名前を書くことが決まっている

それは行方不明者を把握するため

苺崎ころん...

苺崎莉犬...

2人とも来てるのか...

苺崎梛々(なな)っと...

ななにぃ...ですか?

へ?

やっぱりななにぃですよね

この避難所だと思いました

こっちに来てたんだ

講義が休講になっちゃって

その講義で今日終わりだったから

そっか

...場所、取ろっか

...そうですね

!?

ななに...?

莉犬くん!

ふっ...ふぇ...

ふぇぇぇぇぇぇぇんっ...(手 伸

よしよし...怖かったね...

もう大丈夫だよ

そりゃ怖いですよね

大きかったですもん

そうだね

取った場所案内してくれる?

ん...

あのね...あっちの奥...

あそこ?(指 指

そう...

ころん

ななにぃ...

大丈夫?怪我ない?

うん、大丈夫

潜り込んだ机から出る時
頭軽くぶつけたくらい

そっか

ころんと莉犬くんは
どこであったの?

最初に来たのは莉犬くん

後から僕が来たんだけど

うんうん

不安だったのか入口で
1人しくしく泣いてて

それで一緒に名前書いて...
って感じかな

そっか

6人兄弟の末っ子、莉犬くん

中学2年生の甘えたな子

初めての大きな地震に巻き込まれ

避難所に来ても兄弟が居ない

かなり不安だったんだろう

さとジェルと連絡取れた?

..(首 横 振

緊急地震速報速報の時
携帯を手に持ってたので

その時から電話はかけて
ますが繋がりません

僕も試したんだけど
無理だった...

大阪は震度小さいけど...

大丈夫かな...

地震の影響でネットがやられたのか

次男のさとみくんと

5男のジェルくんと連絡が取れない

さとみくんに至ってはもう大学3年生

どこ行くにもあまり干渉しておらず

今日何をしにどこへ行ったのか

それすら分かっていない

最後の会話はほぼ喧嘩だった

卒業後の進路をどうするのか

お金の問題が原因となった

大学院へ行くか否か

彼は俺らを気遣って就職を考え

俺は行きたいなら大学院いきなと

進学を進めてもいる

そこで軽く揉めてしまったのだ

無事で...

いて欲しいなぁ...

...そうですね

きっと大丈夫だよ...

さとにぃ強いもん...

大丈夫だよというころんの声は 少し...いや、かなり震えていて

自分に言い聞かせようとしているのが ひしひしと伝わってきた

次の日

地震と津波の影響で

町は原型を留めていなかった

もはや見る影もない

時間が進むにつれ

行方不明者数は増えていく

俺らの家も津波で壊れ

避難所生活を余儀なくされた

一日やそこらでネットが 回復するはずもなく

変わらず連絡も取れないまま

もしもう命がなければ...なんて

そんなタラレバを考えると

とても不安になり

言葉の大切さに気付かされた

いつの会話が最後になるかなんて

誰にも分からないのだから

常に"言葉"を伝えることが

すごく大切なのだ、と

喧嘩するのも、ことわざにもあるように

仲が良くていいことだろう

だけど大事なのはそのまま離れないこと

ちゃんと言葉で"ごめんね"と

謝って仲直りをする

こんな当たり前のことを

どうして今まで気づけなかったのか

ただただ後悔しかない

数ヶ月後

地震や津波で倒壊した家屋が多く

未だ手付かずのところも多々あるが

1部片付いたところや

比較的被害の少なかった所に

仮設住宅の設置が進んでいる

地震当時家にいたのが俺1人 ということもあり、

家に財布と携帯は置いていなかった

荷物が多く場所もとるため

完成したら仮設住宅に移り住もうと

そう4人で話し合って決めた

ねむい...

寝ててもいいよ

俺のお膝使う?

つかう...

枕もなく寝心地が悪い体育館では

満足に眠れない

成長期の莉犬くんは特に

すぐに眠くなりやすくて

こうして日中俺の膝を枕に

すやすやと眠りに落ちている

…zzZ

あ、そうだ

連絡まだ取れない?

繋がりはするんですけど...

出ないんですよね

僕も留守電残したけど
聞くかどうか...

やっぱり繋がりはするよね...

俺も一緒だよ

ジェルくんとは連絡取れたよ

ほんと?よかったぁ...

大阪あんまり揺れなかったし
すぐ帰ろうと思ったんだけど

交通手段全滅らしくて

東京近くまではこれても
ここまで来れないって

うわぁ...まじか...

今は学校側が手配した
ホテルで過ごしてるみたい

怪我なく無事って?

うん、そう言ってた

帰れるようになったら
すぐに帰るって

おけおけ

あの、ななにぃ

ん?

僕...ちょっと考えたんですけど

このまま仮設住宅に住んで
復興するまでってなると

正直しんどくないですか

まぁそうだね...

僕の大学付近はそこまで
被害が大きくないらしくて

多分すぐに再開するんです

通えないか...

そうなんです...

生まれ育った街ですし
離れ難いんですけど

引越しの方が日常に
戻れるんじゃないかなって

うーん...

確かにるぅとくんの言う通りではある

下3人の高校と中学校は

体育館が避難所指定されていて

授業がいつ再開されるのか

全く見通しが立たない

引越しにしようか...

はい...

幸い俺の仕事はフルリモートで

環境があればどこでも仕事が出来る

そのため避難所生活しながらも

充電残量を気にしながら仕事はしていた

収入がゼロになった訳では無いから

お金は蓄えもあるし収入もある

それならと少し離れた地区で

小さくはあるが家を購入することに

幸いなことにテンポよく決まり

新しい家への移動中

元の家は津波で全て壊された

思い出も荷物も何もかも流された

原型も留めていなかったから

もう一度あそこに建てるとなると

かなりの費用と時間がかかる

もう戻れないのだ

荷物全然ないね...

防災カバンしか
持ってきてなかったからね

後は...全部流されちゃった...

ッ...

もう瓦礫の山しかない

一瞬で無くなりましたね...

ほんとにね...

道中色々買っていこうか

ぬいぐるみ...

そうだね、買おっか

ひろい!

ね、ひろいねぇ

お金...大丈夫なんですか?

うーん...裕福とは言えないよ

ただ俺の収入はあるし

給料日まで少し節約すれば...
って感じかなあ

ならいいですけど...

皆電気はこまめに消してね

水は出しっぱなしにしない

暖房は短時間なら切らない

この3つだけ協力してね!

わかった、!

はーい!

僕家にお金入れますよ?

気にしないでいいの!

大学生のうちは思いっきり
遊びなさい!

でも..

いいから!気にしない!

遊べるの今のうちなんだよ

そうですけど...

たっくさん遊んどきな

わかりました...

数日後

ただいまぁ!

おぉ!おかえり!

ジェルにぃ!

帰ってこれたの!?

避難所付近はまだ
止まってんねんけどな

こっちはギリ動いとったわ

よかったぁ

迷わなかった?

おん!大丈夫やったで〜

関西弁だ...

いやぁすっかり染まったわ

なんか新鮮...

確かにね笑

そういえばさとにぃは?

まだ連絡取れてないよ...

え...?

うそやろ...?

いや...ほんと...

僕も連絡取れてない...

ただいまで〜す

おかえり〜はやかったね

一限だけだったんです

なるほどね

るぅにぃただいま〜

あれ、おかえりなさい

ほんでおかえり

ただいまです笑

ww

俺もさっき帰ってきたとこ

ほんと数分の差だね

だねぇ

その数日後

長男の部屋兼仕事場

え...

え...?

電話...

ちょ、ちょっとまって...

もしもし!?

ちょ、声大きい

にいちゃんうるさい

ばかたれ!

あほ!

ごめんて...

ほんとまじでごめん

どこで何してたの!

連絡も今まで返さないで!

ほんっとごめん...

ちょい色々説明したくて

1回2人で会いたい

は?

いやいや...ばかなの?

みんな心配してるんだよ

や、それは分かってる

連絡から痛いほど伝わる

ならなんで...!

だからこそだよ

とにかく会ったらわかる

はぁ...

どこまで行けばいいの

2時頃に苺病院のカフェ

りょうかい

にいちゃん!

こっち!

さとみくん!?

ど...どうしたのその怪我...

さとみくんは

両足に包帯が巻かれていて

車椅子姿だった

頭にも包帯が巻かれていて

腕にはいくつもの絆創膏

とりま俺の話聞いて

うん...

地震の影響でネット壊れて
連絡取れなかったじゃん

一時期そうだったね

その時点で心配かけてるやん

うん

その後ネット回復した時にさ

この姿で会ってみろよ

たしかに心配になるけど...

これでも回復した方なんよ

え?

足はずっとギプスだったし

手にも包帯あったし

右手首もギプスしてたし

...

頭もこれ数針縫っててさ

まだ完全に大丈夫とは
言えないわけよ

え?

もしかしたら麻痺残る

両足粉砕骨折してて

そう言いながら

さとみくんは右手で自らの足を撫でた

もう骨自体はくっついたけど

神経やったかもしれない

ほんとに...?

麻痺なのか、

単に動いてなかったから
筋肉が固まってるだけか

まだわかんないんだよね

そうなんだ...

最初に揺れで転倒して
そこで頭切った

窓のとこだったから
ガラス砕けててさ

うん...

んで、揺れ収まったから
ドアの方に移動してたら

本棚倒れてきちゃって

咄嗟に手着いたら
上からの力が強すぎて骨折

それに挟まれた足は
骨が砕けた

えぇ...

まだ入院生活中

そうなんだ...

この後診察だから

出来れば着いてきて欲しい

それはいいけど...

まだ退院出来ないの?

わかんない

そっか

どっちみち歩けないし

あぁ...

下2人俺にベッタリじゃん?

この体で帰ってもさ
心配かけるし構えないし

それは確かに

安易に無事って言いたくなくて

なるほどね...

とりあえず無事なのは良かったけど...

あんまり無事とも言えないよなぁ...

ただ今日の診察で頭の包帯は取れたし

足はリハビリを続けるしかないみたいで

家に帰れる日はまだ遠そうだ

今回は命あったから良かったけど

あの喧嘩が永遠の別れになる 可能性もあった

尚更言葉って大事だなと

そう思った

後日談

ただいま

心配かけてごめんな

さとにぃ!!!!

うおっ...

こーら、飛びつかないの

疲れてるんだし
休ませてあげなさい

ありがと(口パク

こくっ(頷く

うしょ...

さとみくんが帰ってきて

飛びつくのをとめさせたあと

さとみくんがソファに腰を下ろすと

みなワラワラとかけよっていく

ソファの下に座り足の間に頭を預けたり

隣に座って肩にもたれかかったり

勝手に膝を枕にしたり

お前ら近づきすぎ

絶対退かない

僕このまま寝る~...

おれも~...おやすみ~

ちょ、たすけて

ごめん、助けられない

えぇ...

結局足の指先に軽度の麻痺が残った

ただ歩くのにそこまで支障はないようで

見た感じはいつも通りだ

みんなの連絡を返さなかったのは

麻痺が残るか分からない状態で

完全に大丈夫だと安心させられない

それなら大丈夫とわかり怪我が治ってから

連絡を返した方がいいと思っていたとの事

あの後も定期的に報告が来るだけで

俺以外返していなかったらしい

この作品はいかがでしたか?

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