長編
言葉の大切さ
話題が話題なので投稿するか迷いましたが
今この状況だからこそ伝えたい
そんな思いで書き上げました
ぶーっぶーっぶーっ
紫
この音...
アラームなんかじゃない
紫
そう気づいてからは早かった
ガチャッ
紫
鍵を開け、玄関の扉を開く
揺れで扉が歪まないように
緊急地震速報の後は
一刻の猶予もない
紫
すぐさま机の下に潜り込み
落下物から体を守る
彼は冷静だった
突然の緊急地震速報にも慌てず
今自分のすべきことをこなす
今この場にいない
5人の兄弟を心配しつつも
今どんな行動を取るべきか
きちんと考えていた
オープンキャンパスの為に
大阪にある高校へ来ていた五男、ジェル
どうしても学びたいことがあって
合う高校が大阪にあったのだ
橙
都内、もしくは関東ではダメなのか?
兄は当たり前だが中々許してくれず
何回も何回も話し合いを重ねた
そうして決めたいくつかの志望校
そのうちの一校のオーキャン
ジェルは兄弟に対する感謝を胸に
たった1人、大阪の地へ出向いた
ちょうどその頃
ぶーっぶーっぶーっ
参加者、そして教員の携帯から
一斉に緊急地震速報の音がなる
落ち着いて!
机の下に隠れてください
皆ぞろぞろと机の下に身を隠す
そして感じる激しい揺れ
グラグラッ
紫
先程の地震の後
津波警報が発令され、
高台にある体育館に向かっている
紫
地震直前の行動が功を奏したのか
玄関から難なく外に出る事が出来た
災害時用の荷物は
6人分用意してあった
紫
例え同じ避難場所じゃなかったとしても
皆この荷物を取りに家に帰っては来れない
それなら避難所の人に配る方が役に立つ
幸い道もほとんど地割れがなく
車が使えると判断して
全て車で運ぶことにした
紫
ここは高台にあるとある高校の体育館
紫
この周辺では避難所に来た人は皆
名前を書くことが決まっている
それは行方不明者を把握するため
紫
紫
紫
紫
黄
紫
黄
黄
紫
黄
黄
紫
紫
黄
赤
赤
紫
赤
赤
紫
紫
黄
黄
紫
紫
赤
赤
紫
赤
紫
青
紫
青
青
紫
紫
青
青
紫
青
青
紫
6人兄弟の末っ子、莉犬くん
中学2年生の甘えたな子
初めての大きな地震に巻き込まれ
避難所に来ても兄弟が居ない
かなり不安だったんだろう
紫
黄
黄
黄
青
紫
紫
地震の影響でネットがやられたのか
次男のさとみくんと
5男のジェルくんと連絡が取れない
さとみくんに至ってはもう大学3年生
どこ行くにもあまり干渉しておらず
今日何をしにどこへ行ったのか
それすら分かっていない
最後の会話はほぼ喧嘩だった
卒業後の進路をどうするのか
お金の問題が原因となった
大学院へ行くか否か
彼は俺らを気遣って就職を考え
俺は行きたいなら大学院いきなと
進学を進めてもいる
そこで軽く揉めてしまったのだ
紫
紫
黄
青
青
大丈夫だよというころんの声は 少し...いや、かなり震えていて
自分に言い聞かせようとしているのが ひしひしと伝わってきた
次の日
地震と津波の影響で
町は原型を留めていなかった
もはや見る影もない
時間が進むにつれ
行方不明者数は増えていく
俺らの家も津波で壊れ
避難所生活を余儀なくされた
一日やそこらでネットが 回復するはずもなく
変わらず連絡も取れないまま
もしもう命がなければ...なんて
そんなタラレバを考えると
とても不安になり
言葉の大切さに気付かされた
いつの会話が最後になるかなんて
誰にも分からないのだから
常に"言葉"を伝えることが
すごく大切なのだ、と
喧嘩するのも、ことわざにもあるように
仲が良くていいことだろう
だけど大事なのはそのまま離れないこと
ちゃんと言葉で"ごめんね"と
謝って仲直りをする
こんな当たり前のことを
どうして今まで気づけなかったのか
ただただ後悔しかない
数ヶ月後
地震や津波で倒壊した家屋が多く
未だ手付かずのところも多々あるが
1部片付いたところや
比較的被害の少なかった所に
仮設住宅の設置が進んでいる
地震当時家にいたのが俺1人 ということもあり、
家に財布と携帯は置いていなかった
荷物が多く場所もとるため
完成したら仮設住宅に移り住もうと
そう4人で話し合って決めた
赤
紫
紫
赤
枕もなく寝心地が悪い体育館では
満足に眠れない
成長期の莉犬くんは特に
すぐに眠くなりやすくて
こうして日中俺の膝を枕に
すやすやと眠りに落ちている
赤
紫
紫
黄
黄
青
紫
紫
青
紫
青
青
青
紫
青
紫
青
青
紫
黄
紫
黄
黄
黄
紫
黄
黄
紫
黄
黄
黄
紫
確かにるぅとくんの言う通りではある
下3人の高校と中学校は
体育館が避難所指定されていて
授業がいつ再開されるのか
全く見通しが立たない
紫
黄
幸い俺の仕事はフルリモートで
環境があればどこでも仕事が出来る
そのため避難所生活しながらも
充電残量を気にしながら仕事はしていた
収入がゼロになった訳では無いから
お金は蓄えもあるし収入もある
それならと少し離れた地区で
小さくはあるが家を購入することに
幸いなことにテンポよく決まり
新しい家への移動中
元の家は津波で全て壊された
思い出も荷物も何もかも流された
原型も留めていなかったから
もう一度あそこに建てるとなると
かなりの費用と時間がかかる
もう戻れないのだ
青
紫
紫
赤
紫
黄
紫
紫
赤
紫
赤
紫
黄
紫
紫
紫
黄
紫
紫
紫
紫
赤
青
黄
紫
紫
黄
紫
紫
黄
紫
黄
数日後
橙
紫
赤
青
橙
橙
紫
紫
橙
青
橙
赤
紫
橙
紫
橙
橙
紫
青
黄
紫
黄
紫
橙
黄
橙
黄
紫
橙
青
赤
その数日後
長男の部屋兼仕事場
紫
え...?
電話...
ちょ、ちょっとまって...
紫
桃
桃
紫
紫
桃
桃
紫
紫
桃
桃
桃
紫
紫
紫
桃
桃
紫
桃
桃
紫
紫
桃
紫
桃
桃
紫
紫
さとみくんは
両足に包帯が巻かれていて
車椅子姿だった
頭にも包帯が巻かれていて
腕にはいくつもの絆創膏
桃
紫
桃
紫
桃
紫
桃
桃
紫
桃
紫
桃
桃
桃
紫
桃
桃
紫
桃
桃
そう言いながら
さとみくんは右手で自らの足を撫でた
桃
桃
紫
桃
桃
桃
紫
桃
桃
紫
桃
桃
桃
桃
紫
桃
紫
桃
桃
紫
紫
桃
紫
桃
紫
桃
桃
紫
桃
紫
とりあえず無事なのは良かったけど...
あんまり無事とも言えないよなぁ...
ただ今日の診察で頭の包帯は取れたし
足はリハビリを続けるしかないみたいで
家に帰れる日はまだ遠そうだ
今回は命あったから良かったけど
あの喧嘩が永遠の別れになる 可能性もあった
尚更言葉って大事だなと
そう思った
後日談
桃
桃
赤
桃
紫
紫
桃
紫
桃
さとみくんが帰ってきて
飛びつくのをとめさせたあと
さとみくんがソファに腰を下ろすと
みなワラワラとかけよっていく
ソファの下に座り足の間に頭を預けたり
隣に座って肩にもたれかかったり
勝手に膝を枕にしたり
桃
赤
青
橙
桃
紫
桃
結局足の指先に軽度の麻痺が残った
ただ歩くのにそこまで支障はないようで
見た感じはいつも通りだ
みんなの連絡を返さなかったのは
麻痺が残るか分からない状態で
完全に大丈夫だと安心させられない
それなら大丈夫とわかり怪我が治ってから
連絡を返した方がいいと思っていたとの事
あの後も定期的に報告が来るだけで
俺以外返していなかったらしい
コメント
5件
フォロー&ブグマ失礼します! 今.生きている一瞬一瞬が大切なことに気づきました。
投稿ありがとうございます! 今回の地震があってからのお話、なんか心に響きました、 今この瞬間、生きることが出来て私は幸せなんだって思えます。