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その日、はるかは珍しく一人で教室に残っていた。
窓の外は夕陽で赤く染まり、教室にはかすかに風が吹き込んでいる。
だけど__
廊下の向こうから、女子たちのキャッキャとした声が聞こえてきた。
若狭くん、今回のテスト何点だった〜?え、やばーい天才じゃん!))
え、でも普段ガン飛ばしてんのにさ、勉強できるってズルくない?))
ってか!ちょっと笑っただけであの破壊力ってなに?マジで反則))
はるか
名前に反応して、はるかはそっと立ち上がる。 その名前は、今朝、自分が口にしたばかりだった
「今牛 若狭」
不器用で、無愛想で、ぶっきらぼうで。 でも、不意に見せる優しさと目線が、ずっと胸に引っかかっていた。
廊下に出て、声の方を覗いてみると__
若狭が、囲まれていた。
無表情でポケットに手を突っ込んだまま、女子たちに何かを聞かれては適当に返している。
その横顔は、いつも通り“無関心”そうに見えたけど__
はるか
若狭
ぶっきらぼうに言い放ち、くるりと踵を返す。
その瞬間、若狭の視線がふと、はるかに気づいた。
はるか
目が合った。
ほんの一瞬だけど。
なのに、はるかの心臓は、跳ねた。
はるか
若狭は何も言わず、ただ、すれ違って歩き去っていく。
でもその背中を見ているだけで、どうしようもなく心がザワついた。
はるか
その日の帰り道
真一郎
放課後、いつものように真一郎が陽気に声をかけてくる
その後ろにはマイキーと春千夜もついてきていた。
春千夜
真一郎
春千夜は
春千夜
とつぶやき、マイキーは相変わらずアイスをぺろぺろ。
はるかはふと聞いてみた。
はるか
真一郎
マイキー
マイキーが無表情のままサラッと爆弾を投下。
はるか
春千夜
はるか
真一郎は笑って肩をすくめた。
真一郎
はるか
はるか
だけど__
はるか
胸の奥が、ぎゅっと痛くなった。
はるか
そして_
夜、帰宅途中の若狭は、夜道をひとり歩いていた。
人気のない商店街のシャッターの前で、少しだけ足を止めてポケットから取り出したのは__
はるかが落とした、小さなピン。
若狭
ただ渡せばよかったのに、なぜかタイミングを逃して、ポケットにしまったまま。
若狭
頭をかく。
若狭
誰にも見られないように、ふと小さく笑って、夜の闇に消えていった。