優
(うぅ、寒っ…お腹すいたなー…)
一気に冷えだした住宅街、少しだけ柔らかい珈琲の匂いがする。
指先がかじかんで、スマホすらまともにつつけない。
僕は冷え性だしな。仕方ない…
凛
にーちゃんっ
優
へ…っ……びっくりした…
凛
にーちゃんひどい。俺置いて出かけるなんて
優
だって、起こしても起きないし…
凛
もー…。
優
……
弟は小さい頃から僕にべったりだった。
僕はただ、寂しがり屋なんだ、って思ってた。
けど、違ったんだ。
優
りーんっ
凛
なーに?
優
兄ちゃんのこと好きか?
凛
うん、、どうしたの?
優
凛、ちっちゃーい頃から僕にべったりで笑
優
どこへ行くにも着いてくるもんなー…
凛
だって、にーちゃん危ないんだもん
優
兄ちゃんそこまでドジじゃないぞー?
凛
違う
優
へ?
普段は明るくやんちゃな弟が、 大人のように冷静に言い放った。
凛
にーちゃん、もうすぐ死ぬよ
優
へ……?
凛
だから、俺が守ってるの
凛
……よくわかんないよね、へへ
それは、僕の好きな笑い方。
でも、その時だけは
とても冷たく感じた。
優
……っ
凛
にーちゃん?
優
あ…ど、したの
凛
ね、あそこのコーヒー美味しそうだよ
優
ほんと…いいにおい…
凛
ねね、飲んでいこうよ。朝のコーヒー、悪くないでしょ?
優
そう、だね…
弟は、いつものように明るかった。
昔から変わらない、笑い方
……弟の言った【もうすぐ】って
いつ、なんだろう。