あのホテルから脱出した俺たち

｢病気？｣

俺には急に発症した"最悪な病気"があった

それは、自分の中にもう1人の自分が 居るというものだった

これだけ聞くと、説明している俺が厨二病みたいになるが、本当の話だ

キラキラ目をしたパンダ柄のフードが付いた可愛らしい青年が机に身を乗り出すほどの近距離でこちらを見つめている

でも、彼が思うようなものでは無い。 これはあまり良くない症状なのだ

言葉が詰まった

もう1人の自分を打ち明けたところで、 何になるのだろう

どうせこいつもすぐに諦めていく

分かりきったうえで、答えた

しばらく沈黙が続いた

どうせお前も

俺はその場から立ち上がり、 後ろにいる彼に一言言った

扉のドアノブに手をかけた

ｸﾞｲｯ

後ろに重さを感じた

振り向くとnakamuが、俺の腕を 引っ張っていた

ﾁｭﾝﾁｭﾝ

子鳥のさえずりが聞こえる

気づけば外は明るく、 周りに人はいなかった

nakamuが出てくる夢なんて久しぶりだな

それにしても、

nakamuの捜査を初めてから結構経つけど...

頭痛が少しずつ強くなっている気がする

その度に、新しい記憶や 思い入れのある内容を思い出す

もしかすると、記憶が少しずつ 戻ってきているのかもしれない

だとすれば、

ｶﾞﾁｬﾝ

ﾍﾞｼｯ

これは、俺がまだ中学二年生の時の話

俺は信号が赤なのにも関わらず線路で止まった

ｷ----🚃

ﾄﾞﾝｯ

頭に ？ が浮かぶほど 数秒ポカーンとしていた

え..だれこいつ、

全く知らない誰かが助けてくれた

何を言ってるんだこいつは

ﾆｼｯと笑うその笑顔は、 自分が見た人生の中で1番輝いていた

それが、nakamuとの出逢いだった