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ラメリス
ラメリスが楽しげにそう告げる。
レイア
ラメリス
ラメリス
その名を聞いた瞬間、俺の脳裏にゲーム内での彼女の設定が鮮明に浮かんだ。
このゲームでの最強キャラ。 魔界の戦姫【アスフォルデル】
かつて天より堕とされた堕天使ルシファー。 その“原罪”として生まれた子こそが、 アスフォルデルと弟のルシエル。
このゲームにおいて、キャラクターの 強さを決める最大の要素。
それは
【進化】
最初はAランクだったキャラでも、そのキャラに適した戦い方をさせ、適切な経験を積ませていけば、Sランクにまで成長することがある。
逆に、どれだけ素質のあるキャラを手に入れても、育て方を間違えれば本来の力を引き出せない。
キャラを生かすも殺すも、 プレイヤー次第。
しかも、このゲームに存在するキャラクターは、基本的にすべて一点物だ。
入手方法は、大きくわけて3つ。
報酬として手に入れる
運良くダンジョンで遭遇する
あるいは、ダイヤを使って購入する
入手方法はいくつか存在したが、一度誰かのものになったキャラクターとまったく同じ個体を、別のプレイヤーが手に入れることはない。
だからこそ、誰を手に入れ、 どう育て、何に進化させるか。
それ自体がこのゲームの 醍醐味でもあった。
そして、市場に出回っているキャラのほとんどはFからBランク。
イベント報酬なんかでも、最初から手に入るレア度は Aランクがほぼ上限だった。
Sランク以上ともなれば、そこから長い時間をかけて育て、進化させて到達する領域なんだ。
だけど
アスフォルデルは、 そんな常識から外れた存在だった。
レイア
本来ならば、大天使の血を継いで生まれてくるはずだったが
母胎にいた頃、その身に流れる天使の血に異変が起きた。
【堕天】
まだ産声すら上げていない胎児の中で、大天使の血と魔族の血が混ざり合った。
普通ならば相反するはずの二つの力。
けれどアスフォルデルの身体は、 そのどちらをも拒絶しなかった。
むしろ二つの血を完全に融合させ 生まれる前に、自らを別の存在へと進化させてしまった。
天使でも、魔族でもない
新たな種族。
【堕神天使。フォールン・セラフ】
生まれながらにして、Sランクを超える素質を持った異例中の異例。
進化が重要な【ノクティリス】において、誕生する前から進化を終えていたキャラクター。
レイア
胸が高鳴るのを感じながら、俺はラメリスの案内で謁見の間へと移動した。
玉座のあるその部屋は、 静寂と荘厳に満ちていた。
高い天井に揺らめく燭台の火。 空気が張り詰めている。
俺はゆっくりと玉座に腰を下ろす。
心臓がドクンと鳴った。
レイア
その瞬間──
ガシャ
レイア
重厚な扉の向こうから、 金属が擦れ合う音が響く。
その音は玉座の間に一歩ずつ近づき、 やがて扉の前で止まった。
しんと静まり返った空気の中で、 ギィ……とゆっくり扉が開かれていく。
レイア
威厳を持って開かれる玉座の扉。
魔王城の玉間がこんなに 静まり返る事があるのだろうか。
このアバターには、恐怖耐性や精神魔法耐性、様々な状態を無効化する能力が備わってるはずなのに…
差し込む光の中に現れたのは、まるで影から抜け出してきたかのような、 一体の黒き戦姫。
レイア
長く艶やかな銀白の髪が揺れ、感情のない紅い瞳がまっすぐこちらを射抜いてくる。
その黒曜の肌は魔族の中でも希少で、硬質な光を湛える鎧の装飾は血のような紅で彩られ、より一層異質さを物語っていた。
口元は微動だにせず、瞬きすらしない。
だがそこには、
圧倒的な力と存在感があった。
——彼女こそが、この魔王城が誇る 最強にして最恐の魔将。
レイア
彼女は一言も声を発さずに、着実に一歩、そして一歩と俺に近づいてくる。
アスフォルデルは、俺の目の前まで来ると表情を一切変えずにその場に膝まづいた。
彼女が跪くと、玉座にいる自分がまるで“本物の魔王”になったような錯覚に陥る。
レイア
レイア
一先ず俺はアスフォルデルに労いの 言葉をかけることにした。
レイア
感情の無い深紅の瞳が じっと俺を見ている。
レイア
一瞬、アスフォルデルの瞳の輝きが 増した気がした。
アスフォルデル
返答はない。
レイア
レイア
俺のその言葉を聞いた瞬間、 アスフォルデルは静かに立ち上がり、 振り返り歩みを進めた。
レイア
ラメリス
俺が彼女の行動に疑問を持ってると、ラメリスが真横で嬉しそうにそう言った。
レイア
ラメリス
レイア
女子って、難しい…
ラメリス
レイア
辺りは暗く、 所々蜘蛛の巣が張られている。
レイア
カサッ
何かの気配を感じ、 俺は咄嗟に動きを止めた。
レイア
ラメリス
レイア
ラメリス
ラメリス
嫌な予感がして、 恐る恐る右腕を目の前に持ってくる。
カサッ
そこには、小さな蜘蛛が乗っていた。
レイア
思わず、手を振り払う。
スピネル
どこからともなく、 謎の声が語りかけてくる。
声は天井の方から聞こえた。
俺はゆっくりと顔を上げる。
目を凝らすと、そこにいたのは、 巨大な蜘蛛だった。
レイア
心臓が跳ね上がった。
だが俺は、どうにかそれを顔に出さないよう必死に堪える。
蜘蛛は音もなく降りてきて、 俺の目の前でぴたりと止まる。
暗がりで初めはよく姿がはっきりみえなかったけど、少しずつ目が慣れてくる。
次第に、 蜘蛛の輪郭がはっきりとしてきた。
レイア
大きな蜘蛛だと思っていたそれは、 いつの間にか姿を変えていた。
そこに立っていたのは、 華奢で品のある青年。
レイア
その時、ふと ゲームのキャラ画面が浮かんだ。
ラメリス
思い出した。
スピネル 蜘蛛の魔物の上位種。 種族名は「アラクネ」。
巨大な蜘蛛の脚があり、配下の蜘蛛を自由自在に操る。 獲物を惑わすため、 普段は人の姿をとっている。
「A」ランクのキャラ
「S」ランクには劣るものの、隠密や暗殺に特化していて、扱い方次第では「S」ランクにも匹敵するほどの能力がある。
レイア
レイア
ラメリス
レイア
レイア
スピネルは薄ら微笑んで答える。
スピネル
スピネル
レイア
スピネルは今回のダンジョンの 解析結果を話した。
スピネル
ダンジョン発生条件に必要なのは
”魔素”
人間にとっては毒に等しい元素。 魔素によって生まれるのが魔物。
そしてもうひとつが
”マナ”
あらゆる魔力の源となる力。
これら二つが、長い時間ひとつの空間に滞留し続けることでやがて融合し、
通常とは異なる“特殊な空間”を 形成する。
それが、ダンジョンの正体だという。
スピネル
入り組んだ迷路のような構造。 各所に配置された魔物たち。
それらすべては、侵入者を足止めし、 決して容易に魔王へ辿り着かせないためのもの。
スピネル
各階層に潜む魔物から得られる 素材や武具。 己の力を高めるためのレベル上げ。 稀にスキルなども。
そして魔王―俺の討伐。
スピネル
スピネル
スピネル
人間界では、この天界ダンジョンへ挑むこと自体、賛否が分かれていた。
ある者は言う。 「攻略すれば、神の加護を得られる」と。
またある者は言う。 「人が踏み込んでいい領域ではない」と。
救いを求めて挑む者。 禁忌として忌避する者。
レイア
スピネル
スピネル
レイア
スピネル
スピネルはそう言って 不敵な微笑みで話を続けた
スピネル
レイア
ダンジョンでは、スキル書と呼ばれる特殊な書物が手に入ることがある。
だが、 それを誰もが扱えるわけではない。
スキルは使用者との“適性”が 強く影響し、 身体や魔力との相性が合わなければ、発動することすらできないのだ。
そのため、扱えぬスキル書は手元に残されることなく 多くが書物のまま闇市へと流れていく。
そして、魔族が天界のスキルに適性を持てるはずもないが、
アスフォデルは例外だった。
神と魔神、 その血を引く存在。
ゆえに彼女は魔族でありながら 天界に適応する“資格”を持っている。
レイア
レイア
スピネル
レイア
それから俺はダンジョンの解析結果をまとめてくれた書類を受け取り自身の部屋に戻った。