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第1話 - あ

2023年03月05日

#恋愛

結城真矢

ナツ

貧乏女！

ナツ

聞いたよー。あんたの貧乏性は筋金入りだね。

ナツ

まだ、あんなに古い筆箱使ってるんだって？

ナツ

信じられなーい。私だったら格好が悪くて持ってられないわ。

ミカン

酷い・・・

ミカン

私にはおばあちゃんがくれた、大事な筆箱なのに。

ナツ

あー。どうりでババ臭いと思ったわ。

ナツ

買えばいいのに、あんたがそんなんだから皆に貧乏女って言われるのよ。

ナツ

あんたの母親は朝から晩までこまネズミみたいに働いても、

ナツ

あんたにおこづかいもくれないの？

ナツ

かわいそー。

ミカン

おかあさんのことをそんな風に言うなんて・・・。

ナツ

何だっていうのよ？

ナツ

私はまた、彼氏にバッグを買ってもらったんだー。

ナツ

この間買ってもらったバッグより高いんだってー。

ナツ

もちろん、ブランドものだよ？

ナツ

誕生日でもないのに、ラッキー。

ナツ

彼氏は社会人だから、何でも買ってくれるんだー。

ミカン

あっ、そうなの・・・

ナツ

いつもみたいにSNSにあげてるから、見といてよ。

ナツ

欲しくても、あげられないけど。

ナツ

ところで、ミカンは彼氏はいないの？

ミカン

いないわよ・・・

ナツ

何でも買ってもらえるのに、かわいそー。

ナツ

貧乏なんだから、彼氏つくればいいのに。

ミカン

貢いでもらうために付き合うなんて、変だよ。

ナツ

貧乏の負け惜しみ。

ナツ

でも、クラスで彼氏いないのって、

ナツ

あんたと他に数人だけなんだよ。

ナツ

わたしらは今年で１８歳なんだよ。

ナツ

彼氏がいないなんて、恥ずかしくないの？

ミカン

そんなこと・・・

ナツ

私だったら、恥ずかしくて夜も眠れないわ。

ナツ

あんたって、昔からそうね。

ナツ

勉強ばっかりして、身にもかまわないんだから。

ナツ

周りからあんたが何て言われてるか知ってるの？

ミカン

そんなの、知らないわ。

ナツ

ほんと、情けないわ。

ナツ

ドブネズミって言われてるのよ。

ナツ

身にかまわずに、朝から晩までセカセカしてるから。

ナツ

あんたと同じクラスってだけで恥ずかしくなってくるわ。

ナツ

みんな卒業が近いし、彼氏とのデートの話で盛り上がってるの。

ナツ

彼氏と一緒に卒業旅行を計画してる子だっているんだから。

ナツ

あんたはクラスで仲間外れってわけ。

ミカン

彼氏がいないのは、私のせいじゃないもの。

ナツ

あー。ウジウジして、はっきりしないんだから。

ナツ

まぁ、あんたみたいなドブネズミと付き合うなんて、

ナツ

ある意味、勇気があるわよね。

ナツ

私が周りの男子に聞いてあげる。

ナツ

ドブネズミだけど、誰か付き合ってくれる人

ナツ

いませんかってね。

ミカン

ひどい…

ミカン

そんなこと言わないでよ…

ナツ

事実じゃないw

ナツ

じゃあね〜

～数日後～

ナツ

あんたにも、彼氏ができたんだってね。

ミカン

そうよ。よく知ってるわね。

ナツ

私は、何だって知ってるんだからー。

ナツ

彼氏ってお金持ち？

ミカン

あんたみたいに、金づる目的じゃないよ。

ナツ

でしょうね。同級生だって聞いたわ。

ナツ

高校生じゃビンボーでしょ？

ナツ

彼氏って誰なの？

ミカン

ソラくんだよ。幼馴染の。

ナツ

えっ、あの大病院の息子だっていう？

ミカン

そうよ。

ナツ

お金目当てだ！

ナツ

お金なんて関係ないなんて言っておきながら！

ミカン

実家はお金持ちでしょうけど、ソラくんがお金持ちというんじゃないもの。

ミカン

何回も言うようだけど、お金目当てで付き合ってるんじゃないわ。

ナツ

ふざけんな、守銭奴！

ナツ

あんたみたいな貧乏人が付き合っていい人じゃない、

ナツ

調子に乗るな！

ミカン

どうして、そんなこと言うの？

ミカン

この間も楽しそうに、バッグを買ってもらったって、喜んでいたじゃない。

ナツ

そうよ。ＳＮＳにアップしていたのを見てくれた？

ミカン

見たわよ。可愛いバッグね。

ミカン

何が気に入らないの？

ナツ

あんたも、あんたの母親も気に入らないわ！

ナツ

ドブネズミはドブネズミらしく生きればいいのよ。

ナツ

あんたには貧乏がお似合いなのよ。

ミカン

口は悪いけど友達だと思ってたのに…。

ナツ

誰が友達なのよ！私にはこんな辛気くさい友達なんていないわ。

ミカン

ひどい・・・

ナツ

誰があんたみたいな貧乏くさい女が好きな男がいるのよ。

ナツ

男はみんな、私みたいな可愛い女が好きなのよ。

ナツ

それを、あんたに証明してみせるわ。

ナツ

見てなさいよ。

ミカン

どうするというの？

ナツ

それは内緒よ。またね。

～数日後～

ミカン

ちょっと、私の彼氏にちょっかいださないでよ！

ナツ

どうして？

ミカン

学校の前で待ち伏せたり、家までついて行ったりしてるそうね。

ミカン

そんなことして、恥ずかしくないの？

ナツ

何が恥ずかしいっていうの？

ナツ

私がそこまでして嫌だなんていう男性が、どこにいるっていうの？

ミカン

彼は迷惑しているわよ。

ナツ

そんなはずはないわね。

ミカン

どこからそんな自信がわいてくるの？

ナツ

ソラくんはあんたなんかより、わたしのほうがいいって決まってるわ。

ミカン

ナツには社会人の彼氏も、バッグをくれる人もたくさんいてるでしょ？

ミカン

それでも、不満があるの？

ナツ

私はね、あんたみたいな貧乏な女が、

ナツ

分不相応な相手と付き合ってるのは間違いだと思っているの。

ナツ

間違いは正さなきゃだわ。

ミカン

自分が言ってること分かってるの？

ミカン

無茶苦茶だわ。

ナツ

どうしてソラくんはあんたみたいに地味で冴えない女と付き合ってるのかしら？

ナツ

私だったら、誰に言っても恥はかかないでしょうに。

ミカン

ソラくんは、ナツのことはタイプじゃないと言っていたわ。

ミカン

派手なタイプの女性は息が詰まるんですって。

ミカン

ソラくんのお母さんがそんなタイプだから、合わないらしいわ。

ナツ

そんな作り話なんて、信じないわ。

ミカン

ソラくんのお母さんは、後妻なんだって。

ミカン

美人だからお父さんの目に止まったらしいの。

ナツ

いいことじゃない。

ミカン

でも、随分苦労しているらしいわ。

ミカン

教養がついていかないから、

ミカン

しないでいい苦労してるみたいだって、

ミカン

ソラくんは言ってたわ。

ナツ

だからなんだっいて言うのよ！

ミカン

母親のことで、小さい頃いじめられて、大変だったんだって。

ミカン

小さな街だから、噂はあっという間に広がるって、こぼしていたわ。

ミカン

だから、同じタイプのナツを見ても、トキメカないんだって。

ナツ

何よ。だから何だっていうの？、私を牽制したいっていうの？

ナツ

まさか私をライバル視してるの？

ナツ

あんたみたいに地味で冴えない女がライバルなんて、あり得ないでしょ？

ナツ

あんたが何て言ったって、私の気が変わる訳じゃないんだし、

ナツ

時間の無駄じゃないの？

ミカン

つい最近付き合いだした彼はどうなってるの？

ミカン

何でも買ってくれるって、喜んでたじゃない。

ミカン

ナツには優しい彼氏がいるんじゃない。ソラくんにまでちょっかいださないでよ！

ナツ

うるさいなー。

ナツ

あんたみたいな貧乏人とソラくんじゃ釣り合わないのよ！

～数日後～

ナツ

ねぇ。ソラくんの誕生日ってもうすぐよね。

ミカン

そうね。

ナツ

ソラくんの誕生日にブランドの財布をプレゼントしようと思ってるの。

ミカン

まだそんなこと言ってるの？

ミカン

ソラくんに相手にされてないでしょ？

ナツ

まだ私の魅力に気づいてないだけだわ。

ミカン

ソラくんの通う高校で待ち伏せたり、家までついて行ってるから、

ミカン

噂になってるよ。

ミカン

隣街のソラくんの学校は男子校なんだから、

ミカン

そんなことしたら噂になるのは当然よね。

ミカン

いい噂じゃないんだから、もうやめときなさいよ。

ナツ

なによ。偉そうに。嫉妬してるの？

ナツ

ソラくんを取られそうで、焦ってるんでしょ？

ナツ

あんたがソラくんと付き合うなんて、分不相応なんだから。

ナツ

金持ちは金持ちと付き合うべきなの。

ミカン

何その理論…

ナツ

あんたは母子家庭で貧乏でしょ？

ナツ

お母さんは、お弁当屋で働いているんだってね。

ナツ

みんな知ってるわよ。

ナツ

ドブネズミはドブネズミらしく、這いずりながら生きていくのがお似合いなのよ。

ミカン

またそんなこと言って…

ナツ

ソラくんは、私と付き合うのが正しいの。

ナツ

財布をプレゼントしたら喜んでくれるかな？

ナツ

私に惚れちゃうかもね。

ナツ

ソラくんの誕生日、早く来ないかなー。楽しみ。

ミカン

パパ活で稼いだ汚いお金で買った財布なんて喜ぶわけないでしょ？

ナツ

へ？

ミカン

社会人の彼氏はどうなったの？

ミカン

別れたんでしょ。噂になってるわよ。

ミカン

ナツはいつもSNSでアップしてるけど、つい最近アップしてないでしょ？

ナツ

何よ…

ナツ

それがどうしたっていうの？

ミカン

振られたんだってね。なんでも、ナツのがめつさについていけないって、

ミカン

彼氏がこぼしてたことも、噂になってるよ。

ナツ

何ですって！そんなの嘘よ。

ナツ

私から、振ってあげたのよ。

ミカン

いつもＳＮＳに投稿していたバッグも、自分で買ってたものも多いんだってね。

ミカン

それで、お金が回らなくなって、パパ活してるって。

ナツ

誰がそんなこと言ってるの？

ナツ

そんなの嘘に決まってるじゃない。

ミカン

ここは小さな街なんだから、噂なんてあっという間に広がるんだよ。

ミカン

パパ活のことだって、複数の人と付き合ってたら、

ミカン

噂になって当然じゃない。

ミカン

夜の街をおじさんと手を組んで歩いてるらしいじゃない。

ミカン

一人や二人が目撃者だなんてレベルじゃないわよ。

ナツ

嘘よ！

ミカン

学校でも付き合ってる人がいるんだってね。

ミカン

学校にバレるのも時間の問題だって、言われてるらしいわよ。

ナツ

あんたが言って回ってるんじゃないでしょうね？

ミカン

そんな事、する訳ないじゃない。

ナツ

じゃ、誰がそんな事言ってるの？

ミカン

ソラくんだって、ナツが夜の街をおじさんと手を組んで歩いているのを、

ミカン

偶然見てしまったって言ってたわ。

ミカン

塾の帰りに友達と歩いていたら、

ミカン

ナツがホテル街に消えていくのを目にしたそうよ。

ナツ

そんな…。

ミカン

ソラくんは金に汚い女性とは付き合いたくない。

ミカン

そう言っていたわ。

ナツ

そんな風に思われていただなんて。

ミカン

自業自得なんじゃない？

ナツ

ひどい。私だけのせいじゃないわ。

ナツ

黙ってたけど、うちの両親、つい最近離婚したの。

ナツ

離婚してお母さんについて行ったんだけど、

ナツ

お母さんは仕事に忙しくて、私にかまってくれなくなったの。

ナツ

寂しかったんだ。

ミカン

寂しいからって、何をしてもいいなんてもんじゃないわ。

ナツ

構ってもらいたかったんだ。

ミカン

だからって、やっていいことと悪いことがあるじゃない。

ナツ

私は悪いなんて、思っていないもの。

ナツ

みんなが私のことを好きなだけじゃない。

ミカン

まるで反省してないわね。

ミカン

私のこと母子家庭の貧乏人だって言ってたわよね。

ミカン

ナツだって同じなんじゃない！

ミカン

それなのに、ドブネズミだなんて言って、

ミカン

ひどいじゃない。

ナツ

悪かったわよ・・・

ミカン

今更よ…

ミカン

同情なんてしないわ？

ミカン

さようなら

～後日談～

ミカン

その後、ナツは不純異性交遊とパパ活の件、

ミカン

いじめなどが浮上してきて、学校を退学になった。

ミカン

まだまだ、余罪がありそうだった。

ミカン

本人はというと、まったく反省の色がない。

ミカン

しかし、色々なことが重なり、引きこもりになった。

ミカン

退学後もきらびやかなSNSが忘れられず、パパ活とバイト三昧で、

ミカン

張りぼての投稿を続けている。

ミカン

高校を卒業後、ソラと同じ大学に合格。

ミカン

二人で幸せなキャンパスライフを送っている。

ミカン

母はお弁当屋で知り合った実業家と再婚して、のんびりとした生活を送っている。

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