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ゆっぺ(主)
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コツコツコツコツ…… 会議場へ向かう、静かな足音が長い廊下に響き渡る。少し急いでいるのか足取りは速く、平和の象徴の白いオリーブがゆらゆらと忙しなく揺れていた。
国連
目を閉じ、大きな扉の前で息を深く吸う。手に持った書類の束をぎゅっと握る。いつものルーティンだ。落ち着いて扉を開けたその瞳は、自信と責任に満ち溢れていた。
国連
朗々とした声で、会議場の面々を見つめる。今日は、国連総会の日だ。国連に加盟する全ての国々が一堂に会する場。アメリカやフランスなど主要な国々は勿論…………
国連
Iから始まる国々を確認していた国連の手がふと止まる。あの鮮やかなトリコロールならすぐにわかるはずなのだが………
イタリア
その時、会議場の扉が勢いよく放たれ、イタリアが入ってくる。ゼーゼーと荒い息を吐いており、汗が一筋頬を伝っている。どうやら、随分と急いできたらしい。スーツも所々乱れている。
国連
イタリアが遅刻してくるのは良くあることだ。今日はこの時間に来たからまだマシな方だろう。とはいえ、もう少し早めの行動を心がけて欲しいものだ。国連はため息を一つ吐いて、イタリアの欄にチェックを入れた。
今日はイタリア以外は遅刻も無く、会議も比較的……比較的に、だが滞りなく進んだ。議題を提示し、各国の話し合いをまとめ、時には喧嘩が起こりそうになるのを止めて………やっとのことで採決を取り、会議は無事お開きになった。
国連
休憩所のソファーに腰を下ろし、一息つく。何十回と総会を開いてきたけれど、いつになっても大変なのは変わらない。まぁ、生まれて間もない中、あの冷たく静かな戦争を対応していた時などよりはよっぽどマシだが。 そう思いながらボーッとソファーに沈み込む。アメリカが最近新調したと言っていたっけ。ふかふかでとても心地良い。このまま、眠っ、て…しま、いそう…………
???
頬にピタリと冷たい物が触れる。唐突の外部からの刺激により、国連は目を大きく見開いた。見上げると兄である国際連盟……国盟がニヤリと笑っていた。
国連
国盟
国連
国盟はそう言ってアイスコーヒーを差し出す。近くのカフェのものだ。プラスティックのカップには沢山の水滴が付いている。一部ほんのりとぬるい所があることから察するに、先ほど頬に押し当てられたのはコレだろう。全く、もう少しマシな起こし方があるだろうに。 不服そうな顔をしつつ、コーヒーを一口飲む。冷たくて苦くてスッキリした味。これだけで目が覚めるような気がする。恐らく、カフェインはこんなに早く効くものではないと思うが。
国盟
国連
国盟
国連
国盟
二人で談笑していると、会議場の方から人が向かって来る音が聞こえた。足音を聞くに…二人?
日本
アメリカ
角から現れたのは、日本とアメリカだった。途端に兄の顔が渋っていく。
日本
国盟の顔を見てか、日本が理由を述べる。日本はいつも会議のあとすぐに見直しをしているから特に疑問には思わない。
アメリカ
アメリカも日本に同意した。しかし……あの会議の後にパーティーか。アメリカの体力にはどうやっても勝てそうにない。今日は疲れているし、と断ろうとした矢先兄が口を開く。
国盟
アメリカ
国盟
国連
国盟
アメリカ
面倒くさいと感じたのか、アメリカが日本を連れて足早に去っていく。二人を見送ったあとも、国盟の顔は硬いままだった。アメリカたちが通って行った方向をキッと睨んでいる。
国連
思い切って声をかけてみると、兄は我に返ったように真顔になってから、こちらに向け笑いかける。
国盟
国連
国盟
国連
毎回毎回、国盟は国連を迎えにやって来る。そしてその度に、何処かしらの国に目撃されている。世界をまとめるべき国際連合が、兄に迎えに来てもらっているなど恥ずかしい。それも80年近く、だ。流石に過保護すぎではなかろうか。
国盟
国連
国盟
国連
国盟
国連
立ち上がり、国盟を見上げる。まだ、彼の身長にはギリギリ届かない。いつか、「一人前」になったらその背を越せるだろうか。
国盟
国連
国盟
国連
国盟
国連
国盟
国連
夕日が沈みかけた玄関ホールに二人の笑い声が響く。きっと、この兄はいつまでもこの調子だろう。100年経っても、背を越されても。
国連
ふと立ち止まって呟く。兄と一緒に、いつまでもくだらないことで笑える世界であるために。頑張らなければ。国連は鮮やかな夕日に、一つの誓いを立てた。
ゆっぺ(主)
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