公園を出たあと、俺は夢と歩いていた。
時雨 澪
…なァ、家どこなんだよ、お前。
不意にでた、言葉。
夜宵 夢
さあ。私にも、わかんない
時雨 澪
は、?
夜宵 夢
家、って何。帰る場所?眠る場所?誰かが待ってる場所?
時雨 澪
全部じゃねーの。普通は。
ああ、俺は普通じゃないけど。
誰も待ってないし
眠れないし。
夜宵 夢
…普通?
そいつが、ぽつり、呟いた。
夜宵 夢
…それ、君にとっての普通でしょ。
私は、そういうの全部、遠いものだと思ってた。
私は、そういうの全部、遠いものだと思ってた。
言葉の意味が分からなくて、混乱した。 でも、夢の表情は笑っていた。 ──いや、目は笑っていなかった。
夜宵 夢
私ね、君のことちゃんと確かめたかったの。
この手で、確かめたかった。
この手で、確かめたかった。
時雨 澪
…は?
夜宵 夢
本当に、あのとき君が泣いていたのか。
本当に、あのとき君が壊れそうだったのか。
本当に、あのとき君が壊れそうだったのか。
夜宵 夢
私、知ってるよ。
君が1人きりで泣いてた夜のことも。
誰にも見せられないくらいに苦しくて、
名前を呼ばれたくなかった時期のことも。
君が1人きりで泣いてた夜のことも。
誰にも見せられないくらいに苦しくて、
名前を呼ばれたくなかった時期のことも。
時雨 澪
なんで、知ってんの。
知ってることは不思議と"嫌"ではなかった。
夜宵 夢
だって、ずっと見てたから。
夢の手に触れた。
風が通り抜ける。 季節が変わりかけていても、夢の手は冷たかった。
夜宵 夢
私ね、"澪"って名前好き。
時雨 澪
ふーん、そう。
夜宵 夢
水の流れのように、静かで、儚くて─でも、冷たい。
時雨 澪
俺は、そんなふうに思ったこと、無い。
夢が、少しだけ俺の手を握った。 酷く細くて、弱い手だった。 でも、なぜか逃げられなかった。
夜宵 夢
…あ、ごめん。じゃあ、またね。
夢は崩れそうなその顔で、ふにゃっと笑った。 ──その笑顔は、前に見た自然な笑顔じゃなかった。
夜宵 夢
また、"夜"に会おうね。
時雨 澪
…うん。
不思議と、返事をしていた。






