愛と罠

ご本人様には関係ありません 青水 ちょっとｴｯﾁな表現有り 地雷の方はお引き取りください

ぶぶっ

雑踏の中ズボンのポケットが震える

人の波から少し避けてスペースの空いているショーウィンドウの前でスマホを開く

あの人からの通知だった

いつもいつも都合良すぎじゃない？

僕はもやもやする気持ちの代わりにぎゅっとスマホを握りしめる

きっと今日も優しい魔法みたいな甘い言葉を僕に言うんだろうな

でも今夜はちょっと少し寂しいから、なんて

思ってもいないけど

ホントの気持ちは嘘で塗り固めた

画面には先程送ったこの言葉

ただ都合がいいだけの容易い奴にはなりたくなかったはずなのにな

呼ばれた日の家に帰ってからの行動は早い

平日よりしっかりとシャワーを浴びる

脱衣所から出たらあの人が好きそうな服に着替える

最初はこんなんじゃなかった

その日は熱帯夜だった

深夜に散歩がてら歩いていたら、公園のベンチに項垂れたように座るあの人を見つけた

なんだか哀しそうに見えて、つい声をかけてしまった

今でも忘れない、あの…

獲物を罠にはめて捕らえた獣みたいな目

あれから僕はあの人に連れられて、

まぁ、オトナなそーゆー事をしたわけで

その行為は愛があるように見えて、

ぼくを見てはいなくて

可愛げがない僕でも弱い所を見せれば満足してくれるのかもしれないけれど

ねぇ、こっち向いて……？

にこやかに笑う君は、ホストのような甘い目で僕を見据える

僕がそう言っても軽く笑うだけ

いつからかこれが僕たちの合図になってしまった

落ちていく、

君の腕の中で微睡む間だけは曖昧で心地いい夢みたいで

この瞬間だけは君は僕だけのものだから

堕ちていく、

呼吸の仕方なんてもう忘れてしまって

僕の嬌声だけが部屋にはこもって、

君の部屋なのに自分が今どこにいるのか分からなくなる

求めている、

終わらない君の言い訳はもう僕にとっては愛でしかなくて

君が指を這わせて伝う体温が甘いキスみたいで、

傷みたいで

奥まで抉るような感覚は強くなっていって

言葉の代わりにきつく肩を噛まれる

溺れていく、

よく知る君の闇の中に

明日にはもう離れてしまう君のことを苦しいくらい抱き寄せても、

消えていく

カレンダーを捲る度に安心してしまっている自分がいて

あの日からどんどん遠ざかっていく

窮屈で退屈な記憶は徐々に薄れていく

あの人のことを狙っているただの良い子ちゃんには到底分からない

絶対に知られることなんてない

あの人のことを分かってるような素振りは誰にでもできる

僕のことをほんとに分かってるのはあの人だけ

あの人のことをほんとに分かってるのは僕だけ

僕が伸ばした手は絶対に握り返さないくせに

会ったらすぐ

って

きっと僕は堕ちることまで堕ちて戻れない

倒れ込んだベッドは自分のものなのに居心地が悪かった