短編集

桃赤

R系の描写ちょっとだけあります

なんで、こんなことしか言えないんだろ

世の恋人達はどうやって両想いになったのか

どうやってアピールをして

どんな告白をして

どうやって恋人同士になれたのか

教科書にも載ってないのに、どうやって

こんな、可愛げの欠けらも無い俺なんか

嫌いにならないわけが無い

黄ちゃんが言うには

「好きって言えば意識くらいはしてくれますよ」

「もうそれしかないです！勇気出してください！」

なんて、

当たって砕けるしかないらしい

今日、桃ちゃんと一緒に帰る約束をした

そのまま俺の家で勉強会をするらしい

その約束をした日も散々酷い言葉をかけてしまって

「えっ、勉強教えてくれんの！？ラッキー！」

「うるさい、仕方なく教えるだけ」

「これで赤点なんかとったら許さないから」

全く、先が思いやられる

黄ちゃんがにこにこしながら俺を桃くんに引き渡す

仲良く話すふたりを見て思う

傍から見ればこのふたりの方が恋人同士に見える

本当に、告白しても大丈夫だろうか

もし、万が一、付き合えたとして

俺で、大丈夫なのだろうか

やばい、

無意識に口から出ていた

桃ちゃんは目を細めて愛おしそうな顔で微笑んだ

好きな人、いるんだ

もう、付き合ってるのかな

付き合ってなくても、桃ちゃんなら

すぐに、両想いになるだろうな

こんな顔をさせるのは、誰なんだろう

俺といるのに、俺以外のことを考えて

頬を真っ赤に染めて

俺じゃ、あんな顔できない？

俺じゃ、だめなの？

俺だけ見て

もう、半泣きたったと思う

俺以外の誰かが、あの顔をさせているのが悔しくて

こんなことでもやもやしてる自分が情けなくて

勢いに任せて告白したことが恥ずかしくて

色んな感情が混ざって

もう、死にそうで

もう、いつものように冷たくあしらうことなんかできなかった

気づけば桃ちゃんの顔が近くにあって

ちゅ、と軽いリップ音と共に

桃ちゃんの顔が離れていった

見上げた顔はにやにやと締りのない顔で

俺はこんなにも真っ赤な顔なのに

余裕そうな顔して

多分今、顔が爆発しそうなくらい真っ赤になってる

じりじりと桃ちゃんが迫ってくる

後ろには壁

前からは桃ちゃん

逃げ場なんか、何処にも無い

俺の耳元で、囁く

俺の耳元で囁き続ける桃ちゃん

俺はもうキャパオーバーで

なにも考えられなくて

弱々しい力で桃ちゃんを押し返すことしか出来なくて

俺の身体を抱えあげて、

優しく、ベッドに押し倒す

俺は返事をする暇もなく

桃ちゃんのキスに飲まれていった