ー黛の自室ー
灰
師匠を削除してしまった。
灰
俺が望んだわけじゃないのに。
灰
俺が、物語のキャラクターだから。
灰
俺の意志は、リスナーによって、
“物語の外側にいる傍観者”によって決められたのか。
“物語の外側にいる傍観者”によって決められたのか。
灰
俺の意志は、作り物だっていうの…?
灰
どうして…。
灰
しばらく考えていたが、どのくらい経っただろうか。
灰
ふっと立ち上がって、俺はある事をする為に、
準備に取り掛かった。
準備に取り掛かった。
ー渋谷・スクランブル交差点ー
通行人
「ねぇ、あれ何?」
通行人
「なんか映ってね?」
ブォン
灰
「どーも。
にじさんじ所属、VTuberの黛灰。」
にじさんじ所属、VTuberの黛灰。」
灰
俺は物語の内側から、外側の人々に干渉することにした。
灰
なぜ俺が物語の中なのか、どうしてリスナー達は外側から見ているのか。
灰
街中の大きなビジョンから問いかけた。
灰
大勢の人がビジョンに映っている俺をじっと見ている。
灰
「これを聞いている、“現実を生きる人達”に、
ただ聞きたい事がある。」
ただ聞きたい事がある。」
灰
「こうして直接干渉しに来た。」
灰
「今耳を傾けている、目を向けてくれる人たちには、」
『俺がどう映ってる?』
灰
「俺は、」
灰
「今見てる人たちと同じ、」
灰
「人間なんだ。」
『人間のはずだった。』
灰
俺は自分の思っていた事、疑問を、
現実世界を生きる人達に投げかけた。
現実世界を生きる人達に投げかけた。
灰
「自分がただのいちキャラクターの、
空想の産物にすぎない事を知った。」
空想の産物にすぎない事を知った。」
灰
「ねぇ、“現実”ってどんなの?
俺の住む世界と、どう違うの?」
俺の住む世界と、どう違うの?」
灰
「どうして、」
そっちがリアルで
こっちがバーチャルなの…?
灰
そう言って、俺はビジョンから姿を消した。
通行人
「えぇ〜?」
通行人
「何、今のー?」
灰
俺の思いは、果たして伝わっただろうか。
灰
俺は師匠がやったように、システムハッキングをして
最後の投票を行う事にした。
最後の投票を行う事にした。
灰
選択肢は、
『現実に送り出される』
『仮想に再構築される』
『現実に送り出される』
『仮想に再構築される』
灰
これで、俺の行く末は全て決まる。
灰
物語の外側の人達に、俺は判断を任せる事にした。
ー投票開始ー
灰
(投票が終わったら、果たしてどうなっているだろうか。)
灰
(もう、今までの「黛灰」はいなくなるのか。)
灰
そして、投票が完了した。
灰
投票の結果は、
現実に送り出される 50% 仮想に再構築される 50%
灰
「え…。」
灰
ただ驚いた。こんな事、あり得ない。
灰
(どういう事?皆、選べなかったの?)
灰
「いや、違う。
“選べなかった”んじゃない、
“選ばなかった”んだ」
“選べなかった”んじゃない、
“選ばなかった”んだ」
灰
皆、俺に選ばせる為に、選択しなかったのか。
灰
…ありがとう。
TRUE END3 「灰は灰に」
ここから先に、彼の物語はなく、あるのは彼の人生のみである。