ないこ
モブ1
モブ2
初兎
昼休みがそろそろ終わるという頃、教室に戻ると、案の定ないこが僕の席を陣取っていた 昨日も席使うなって言ったのに
しかも、あいつの周りはいつもいつも甲高い声を上げて騒ぐ女子ばっかりが取り巻いている
初兎
話の途中であることなんかお構い無しに話しかけると、ないこが驚いたようにこちらを見てくる いや、そんな顔したいのはこっちの方なんやけど
初兎
ないこ
聞いてるのか聞いてないのかよく分からない返事をして、ないこが女子達と教室を出ていった
ていうかないこはクラス違うんだから最初からそうしろよ。
ガタン、と乱雑にイスを引いて座る
モブ3
初兎
モブ3
初兎
モブ3
初兎
ぼやっと1年前の記憶を掘り起こす ないこは去年同じクラスだったが、言われてみれば大体女子といた気がする
モブ3
初兎
あんなただ愛想振りまいてるだけの奴に女子みたいだとか言われて馬鹿にされるのは心外だ
初兎
前の席なんだしさ、と付け足した
モブ3
でも、何かを思い出したようにためらっている
モブ3
初兎
ないこは男子ウケはあんまり良くなさそうだし僕の味方してくれると思ったのに 明日は絡まれないといいな、なんて考えていると次の授業の始まりを告げるチャイムが鳴った
初兎
先生にちょっとだけだから、と雑用を頼まれて職員室に行ったら全然ちょっとではなかった 日が落ちかかる中、ダッシュで教室に荷物を取りに行く
ガラガラ、と教室の戸を開けると誰かがそこに残っていた
初兎
そこにいる人はなぜか僕の席で机に突っ伏している なんで昼も今も僕の席ばっかり使われるんだ...とつぶやいたところでその姿が知っている人物だということに気がついた
初兎
なぜかないこが僕の席で寝ていた 今は周りに誰もいないのに。 さすがにイラッときてそいつを叩き起こす
初兎
ないこ
肩をゆらすと案外すぐに起きた てかしょーちゃんってなんだよ、やっぱり僕のこと女子だと認識してる? ほんと腹立つな
初兎
はぁ〜...とわざとらしくため息をついた
ないこ
初兎
ないこ
初兎
ないこ
初兎
急にぐいっと腕を引っ張られてないこの膝の上に座らされる
初兎
バタバタと足を上下に動かして抵抗してもそれよりもずっと強い力で抱き締められる
ないこ
お前のせいで離れられないんだけど、と言っても通じなそうなので代わりに別の言葉を投げかける
初兎
それを発した瞬間、ぴく、とないこの肩が揺れた
ないこ
初兎
さっきまでとは違いないこが急に弱々しい声になり、焦ってしまう もしかして、傷つけた...?
ないこ
初兎
そのか細い声は、本当に何かに悩んでるみたいだった 慌てて否定しようとするが、実際思ってることなので上手く弁明ができない
ないこ
ないこ
初兎
さっきさらっと好きとか言ってたのを思い返す ...いや、真に受けてどうするんだ。もし好きだとしても多分女子を攻略し尽くして一時の迷いで僕をからかってるだけだ。
ただ、目の前でうなだれているこいつを放っておく訳にもいかず仕方なく励ます
初兎
ないこ
その瞬間、顔を上げて表情をほころばせた その単純さに、思わず笑みがこぼれてしまう
初兎
僕の髪を指ですくい上げて絡めとられる
ないこ
初兎
ないこ
髪を触るのをやめると、ぱらぱらっと宙に舞う それと同時に、ないこが僕を離して立ち上がった
ないこ
ぴしゃりと戸を閉めて僕は一人教室に残された
初兎
それでも一応は本気に見えたあいつの告白に、少しは考えてやるか、なんて気になっていた
初兎
あれから1週間くらい経ったが、ないこは一向にこのクラスに来る気配がない 返事考えといてとか言ったのは向こうの癖に
初兎
ないこによく群がってる女子達も席を外しているので多分どっかに行って喋ってるんだろう
モブ3
初兎
そう、むしろ安心している 勝手に席を占領されないことにも、無駄に騒がれないことにも。 別にあいつが僕のことを好きでも好きじゃなくてもなんでもいいけど、こっちが一方的にからかわれたままじゃ割に合わない
初兎
モブ3
突然ひらめいて、こいつにあるひとつの頼み事をした。
ないこ
急に知り合いに呼び出され、部活を抜けてまで教室へと向かう
朝とか昼とかいくらでもタイミングはあるはずなのに、なぜわざわざ部活を抜け出さないといけないような時に呼ぶのだろうか
それに、呼び出した張本人はよくしょーちゃんと話している人で、正直今はあまり対面したくない。
必然としょーちゃんのことを考えてしまうから。
返事を考えておいてほしいなんて言ったものの、実のところはそれを聞くのが怖くて現実から逃げている。
それでも教室はだんだん近づいてくる そもそもあのクラスに最近行っていないのであいつと話すのも久々だ
ないこ
扉を開けるとそこにいたのは俺を呼び出した人ではなく、しょーちゃんだった
しょーちゃんに近づいても、俺の存在に気づいているはずなのに彼は俺の方を振り向こうとしなかった
ないこ
呼びかけてもどこかを見つめたまま振り返ろうとしない それでも気にしないようにして話しかける
ないこ
初兎
やっと口を開いてくれたかと思えば少し怒りを含むような口調で、その圧に押されそうだった
それに、その言葉に身に覚えがありすぎて息を飲み込む でも、返事を聞くのを逃げたことも少しは許してほしい あれだけ席使うなとか言われても聞かなかったし、去年も嫌がられてたのにクラスで絡んだりしてたから多分断られる。 それどころか最悪誰かに言いふらされるんじゃないか、とかばかり考えてしまう
初兎
そう言いながらしょーちゃんはずいずいとある一席に向かって歩いていく そしてそれをすっ、と引いてゆっくり座る
ないこ
再び黙りこくってしまったしょーちゃんの行動に疑問を持ちながらも平常心を保とうとする
ないこ
初兎
小さくて、今にも空気中に消えていってしまいそうな声 でも、確かにはっきりと聞き取れた
ないこ
どくどくどく、と心臓が波打つ 心のどこかで期待はしてたけど、本当に好かれてるだなんて思わなかった
ないこ
初兎
それを聞いて、反射的にしょーちゃんに後ろから抱きついた 顔は見えないけど、照れてくれてたらいいな、なんて思いながら。 彼のさらさらで日が当たると透ける髪が、頬に触れてくすぐったい
初兎
ないこ
初兎
しょーちゃんがそのままの姿勢で、首の角度だけを変えて俺の顔をとらえる
初兎
初兎
しょーちゃんが小声でその内容を囁くのを、俺は集中して聞く
しょーちゃんが言い終えると、自然に口角が上がってしまった。
その願いのままに、俺たちはそっと唇を重ねた。
コメント
3件
( *¯ノ³¯*)ヒューヒュー♪̊̈♪̆̈
ちょっとまじ毎回神作すぎてる 🐇くんのツンデレ感がいいっ!!!!(
ふへ、ふへへ、