撮影が始まった。
始まってから何度もあのスタッフさんと目が合う。
そして、あの時と同じ、嫌な笑みをうかべている。
いつもは楽しい撮影が、今日はすごく長く辛いものに感じた。
前半の撮影が終わり、一旦楽屋へ戻る。
哲汰
直弥、なんかあった?
直弥
っなんで?
哲汰
いや、なんか表情がかたい気がして
直弥
そうかな、
直弥
最近忙しかったから疲れ溜まってるのかもしんない
哲汰
そっか、まだ次の撮影まで時間あるしゆっくり休んどきなね
直弥
ありがとう
直弥
(―――哲汰、嘘ついてごめん)
スタッフ
後半始めていきます
スタッフ
3・3で別れて撮影、インタビューしていきますね
ワンエン
お願いします
後半の撮影もスムーズに終わり、楽屋に戻ろうとした時だった。
スタッフ
あ、草川さん!
スタッフ
先程のソロ撮影のことで少しお時間いいですか?
そう声をかけてきたのは、例のスタッフさん。
あの日の恐怖がよみがえり、足がすくむ。
哲汰
……直弥?
哲汰
どうした、一緒に行こうか?
スタッフさんに呼ばれているのに 黙って立っている俺を不思議に思ったのか、哲汰が口を開く。
直弥
いや、大丈夫。行ってくるね
俺は足早にスタッフさんの所へ向かった。