孔時雨
ハハッ、またカモにされたか
甚爾と別れて、時雨さんが 運転する車に乗る。
そんなふうに笑う 時雨さんは他人事だ。
頬を膨らませて怒る私に 時雨さんはまた笑う。
孔時雨
機嫌直せよ
嵌永優莉
わっ
そう投げ渡された物を 反射的にキャッチする。
それは私の好きな メロンパンだった。
嵌永優莉
…どうせヒモにするなら時雨さんみたいな気の利くクズが良い
孔時雨
ご指名どーも
孔時雨
でもヒモ男にそんなもん求めちゃいけねぇぜ
運転しながらそう言う 時雨さんに、
私はメロンパンを齧りながら 弱々しく言い返した。
嵌永優莉
…わかってるもん
孔時雨
着いたぞ
嵌永優莉
はーい
時雨さんに声をかけられ、 携帯電話から顔を上げる。
今日の標的は闇企業の お偉いさん。
依頼人はソイツに金を 巻き上げられた男性。
お金が無いくせに借金してまで 私を雇ったんだから、
よっぽどソイツが 憎いのだろう。
嵌永優莉
( まっ、私には関係ないか )
これは仕事だ。 給料分は働かなくちゃ。
やることはやって、 深入りはしない。
それがこの仕事を する上でのマイルール。
嵌永優莉
じゃ、ちょっくら行ってきますわ
準備運動をするかのように 首を回し、
私は車を降りて 標的が住む別荘に向かった。