S A s i d e
正直、気づきたくなかった。
女の子なんてこの世には いくらでもいて、俺に相手を してくれる子だっていくら でもいるというのに。
親友の存在が気になって仕方 ない。そんな自分がいたんだ。
RI
SA
RI
目の前に立つ親友、莉犬は、 のんきな様子の俺を見て、 大きくため息をついた。
時刻は午後9時。 場所は近所のスーパー。
イヤそうにしているが、なんだかんだ最後まで付き合って くれることは知っている。
RI
SA
RI
ちなみに、俺が選ぶお菓子 の好みもこいつは完全に 把握していた。
梅味のポテチを棚に戻して、 チョコビスケットを俺の腕に たくす莉犬。
早く買ってこい、ってことか。
仕方ない、さっさとやろう。 莉犬を怒らせたら面倒だ。
そう思うなら最初から連れ出さなければいいのはわかっているけれど、それとこれとは別。
その場で待つように言った 俺は、速攻でレジへ向かう。
途中にあったアイスコーナーであいつの好きなイチゴアイスも買っておいた。
SA
RI
買ったアイスを差し出すと、 さっきとは打って変わって顔をほころばせる莉犬。
あ、かわいい。とか思ったことは気のせいにしておこう。
SA
RI
へへっと莉犬が笑った瞬間、 ドクンと胸が鳴った。
あぁ、もう。体がこうも 反応しては認めざるを 得ないじゃないか。
SA
RI
SA
そうは言うけど、 そんなの建前。
言えるわけがない。
中学から一緒にバカやって きた大の親友に、いまさら 『かわいいよ』だなんて。
高校に入って、莉犬は確実に かわいくなった。
中学まではどちらかと いえば大人しい部類だった こいつは、気づけば俺と 同類になっていたんだ。
来る者拒まず去る者追わず、 なんてこいつには似合わない。
高校デビューだか知らない けど、やめればいいのにと 何度思ったことか。
俺に隠していない限り、 中学時代の莉犬に彼氏が いたことはない。
なにもかも初めてのくせして、いきなりいろんな男と 付き合うもんだから、 俺は気が気じゃなかった。
いま思えば、それで莉犬を 過剰に意識し始めることに なったんだけど。
RI
SA
めずらしく変なことを考えて いたからか、気づいたときには莉犬の家に着いていた。
顔をのぞきこんでくるこいつに、また心臓がドクンと波打つ。
……勘弁してくれ。
こんな距離感、中学の頃から 日常のことだったんだぞ。
いちいち反応してどうすんだ。 恋愛初心者かよ、俺。
恋なんて、それなりに してきたはずなのに。
しかも相手は莉犬だ。こんなのありえない、認めない。
そう思うはずなのに、4年も 一緒にいて気づけなかった 莉犬のかわいいところを 俺は着実に見つけていた。
SA
RI
SA
あくまでも平静を装って、俺はその場をあとにするためクルっと背中を向けて歩きだす。
RI
背後からそんな声が 聞こえたから、後ろ手に 右手をヒラヒラとあげていた。
"爽やか"なんて言葉とはまるで無縁だし、面倒くさがりで、 おまけにたまにすごく口が 悪くなる莉犬だけど。
それでも、家まで送ったあとに毎回必ず"ありがとう"と 言ってくれるから、また 送ってやりたくなるんだ。
ある日の昼休み
もぶいち
SA
ある日の昼休み。
2年になって新しく友達に なった男3人と俺で、 ダラダラと時間を過ごして いるときのことだった。
暇だったし、スマホゲームとかカードゲームのたぐいだと 思っていた俺は、特に内容も 聞かずに引き受けてしまった。
もぶいち
SA
が、その内容を聞いて 拍子抜け。
もぶいち
もぶに
もぶさん
みんなはノッてきて、 わいわいと騒ぐ。
もぶに
SA
正直、遊んでる俺が言えた ことではないが、そういう ことはしたくない。
賭けなんて最低だし、 その子を傷つけることは 目に見えている。
けれど、考えている間にもまわりは盛りあがっていて、渋っている俺俺耳にやつらの最初の ターゲットの名前が聞こえた。
もぶいち
SA
思わず、体が反応する。
もぶに
もぶさん
会話が弾む3人。
莉犬が、最初のターゲット?
おいおい、 それ本気で言ってんのかよ。
その名前は、渋っていた 俺の心を簡単に変えた。
……ほかのやつらに取られる くらいなら、俺がもらう。
それがたとえ、 賭けのゲームだったとしても。
どんな手を使ってでも、 莉犬は誰にも渡さない。
SA
俺の手をあげるとみんなは 驚いたけど、"桐コンビ"が カップルになることに対して 盛りあがりを見せた。
もぶに
もぶいち
もぶさん
それぞれが賭けて、 ゲームがスタートした。
俺と莉犬の親友加減から、 恋人のような甘い雰囲気は無理だというのがみんなの推察。
正直俺も同意見だ。
俺が意識しているだけで、 きっと莉犬は俺のことを ただの仲よしにしか 思っていないだろうから。
ずっと心地よかった "親友"という関係を 壊したくはないけれど。
誰かに賭けで莉犬を取られる なんて、耐えられそうにない。
……って、もうこれ 完全に惚れてるじゃん。
マジかよ。
自覚せざるを得ない ところまで感情が進んでは、 もうそれは完全に恋だ。
もぶいち
SA
そう話したところで、 昼休みは終わった。
RI
SA
席に座るのとほぼ同時に、 前の席の莉犬が振り返って 俺に話しかける。
まだ4月のうちは、桐原、 桐谷で出席番号順の席だ。
RI
SA
莉犬がなにか言ったから 返事をしただけ。
でも、いつもなら聞いている はずの内容を聞かないままに 応えたことを後悔した。
RI
SA
一緒に帰るなんて日常茶飯事 だ。だからべつにイヤなわけ では断じてないんだけど。
タイミングを見て、俺はお前にコクらないといけないのに。
帰りが一緒とか、もうそこで するしか……ねーじゃんか。
RI
SA
約束を取りつけた手前、 もうあとには引けなかった。
俺は今日、親友のお前に 告白する。
裏にあるのは賭けだけど、 莉犬への気持ちがある 俺にとってはガチのやつだ。
あぁ、もう。
告白なんて、ずっとされる側 だったからしたことないのに。
バカみたいに心臓の音が 鳴りやまない。
最低なゲームが、 もうすぐ始まる。
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コメント
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