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コメント
1件
言葉は冷たく聞こえるかもだけど本当は心配してる感がある気がして……感動しました 続き楽しみにしてます!
ガチャ
ちぐさ
見えたのは暗闇
でも、__
ちぐさ
視界がいきなり明るくなる
無意識に、開けたばかりの目を細めた
天井の蛍光灯が白く光っている
多分、電気を付けられたから
らお
お兄ちゃんがドアの傍に立ってる
俺と同じ中学の制服を着てる
多分、今帰ってきたばかり
お兄ちゃんは3年だから
入学式の日は休みなはず
だけど、お兄ちゃんは昨日
「部活の新入生勧誘を手伝うために登校するんだよ」
って、言ってた
らお
らお
ちぐさ
いつの間に寝てしまってたのか分からなかった
ちぐさ
時計を見ると、午後6時前
帰ってきたのは昼過ぎ
て事は…5時間近く寝てたんだ…
昨日の夜、あんまり、眠れなかったせいかも
ちぐさ
そう言えばッチラシ、ッ
俺はすぐ、放送部のチラシを、隠すように掴んで立ち上がった
それを引き出しに仕舞う
それから、制服を着替えようとしたけど
お兄ちゃんがまだ部屋の中に居るので手を止めた
ちぐさ
視線で「なんでまだいるの?」と問いかける
お兄ちゃんは、普段は大きい目を細めてじっとこっちを見ている
らお
ちぐさ
らお
ちぐさ
らお
ちぐさ
らお
らお
ちぐさ
らお
ちぐさ
らお
ちぐさ
らお
ちぐさ
らお
らお
ちぐさ
らお
お兄ちゃんの声が
少しだけ、重く、低くなったのを感じた
らお
改めて他人から言われると、ずしりと来た
家族であるお兄ちゃんは、俺が抱えているもののことを当然知っていて
こうして偶に心配してくれる
でも、所々で本当は理解してくれてないと感じる時もあった
当然だ
普通に喋れる人に、俺の気持ちなんて分かる訳がない
らお
ちぐさ
らお
らお
らお
らお
ちぐさ
らお
らお
らお
らお
ちぐさ
自分のこれからへの不安は常にある
お兄ちゃんの言う通り、学生の間は何とかなっても
社会に出たら状況は大きく変わる
自分で稼がなければいけないのに
普通に会話ができない人間を雇う会社なんてそうそうないと思う
吃音について調べた時に知ったのだけど
企業には障害者雇用枠といって
国から何人かの障害者を雇うことを義務付けられるという制度があるらしい
でも俺は、その枠には当てはまらない
今の日本で、吃音を障害として認めてもらうのは凄く難しいことだそうだ
だから、俺は普通の人と同じ立場で
就職活動や仕事をしなくてはいけない
上手に言葉を話せる人達と同じ土俵に立って
同じことをこなさなければならない
そう考えた時、心に浮かぶのは「不安」どころじゃなく
「絶望」だった
らお
ちぐさ
思わず、強い口調になっていた
でも、気付いた時にはもう遅かった
ちぐさ
ちぐさ
らお
ちぐさ
言おうとした言葉を、お兄ちゃんに先取りして言われる
他人と話す時によくある事だ
ちぐさ
ちぐさ
ちぐさ
ちぐさ
ちぐさ
ちぐさ
ちぐさ
本当に、自分にとって吃音よりも辛いことなんてなかった
もし、吃音が治るのなら
どんな苦しさや痛みにも耐えられる
どれだけ殴られたって
全身をナイフで切り刻まれたって
毒を飲めと言われたって
その先に普通に声が出せる未来があるのなら
俺は受け入れる
寧ろ、進んでそうしたい
でも、実際は治す方法なんてない
インターネットで知った
『治療法は確立されていない』
という言葉が、読んだ時の絶望と共に蘇った
部屋の中が静かになる
ちぐさ
俺は反射的に俯いた
だが、お兄ちゃんはじっと俺を見ている
道路工事の音は、もうやんでいた
耳に入ってくるのは
壁に掛けられた時計の秒針が動く微かな音だけ
らお
らお
ちぐさ
俺は『ああ』とか『うん』とか、そう言う短い言葉ですら偶につっかえる
でも
割と言いやすい言葉もあって
その中でも、さ行が言いやすかった
逆に、言い難いのがか行とた行だ
柏崎
自分の名前の、か行
それと『コーヒー』や、『ルール』とかの
伸ばす言葉も言いやすい
らお
らお
らお
らお
らお
言われて、考えてみる
確かにそうかもしれなかった
一人言がつっかえないのは、それが既に当たり前のことで
言えないかもしれない
と言う意識が自分の中で全くないから