花恋
これは私に好きな人ができた日から始まった物語。

花恋
あの時彼と出会って、私はいろんな感情を知った。
そして、彼は私の道を狂わせたーーーーーー

あれは小学生5年生の頃………
私は幼馴染、蓮に恋をしていた。
花恋
蓮、おはよっ!

蓮
おう!おはよ、花恋!

花恋
寝癖ついてるよ〜(笑)

蓮
え!マジ?!どこ?!

花恋
ここだよ〜(笑)
直してあげよっか〜?(笑)

蓮
………頼む

花恋
ええ!?

蓮
なんだよ、早くしろよ(照)

花恋
珍しい…、蓮が素直…
台風来るかも………(笑)

蓮
そ、そんなことねーし!

花恋
…はい!直ったよ〜

蓮
…さんきゅ!

花恋
で?なんかあったの?

蓮
な、なんもねーし……

花恋
嘘ついたって無駄だよー、だって私、蓮の幼馴染だよ?(笑)

蓮
………絶対誰にも言うなよ?

花恋
あったり前じゃん!私、口硬いし!

蓮
しってるよ。幼馴染だし。

花恋
っ!

蓮
お、俺さ………今日美咲に告るんだ……!!

花恋
へ……?
蓮って、美咲のこと好き、なの……?

蓮
じ、実はそうなんだ………!

花恋
………そ、そっか。
えっと、頑張ってね……!

蓮
おう!
……花恋?なんか顔色悪いぞ?
大丈夫か?(花恋のおでこに手を当てる)
熱はないみたいだけど………

花恋
だ、大丈夫だから!!
私より、自分の心配しなよね!

蓮
ま、それもそうかもだけどさ、花恋だって、美咲とはちょっと違うけど、
俺にとっての大切な人、だしさ。
具合悪いなら、ちゃんと保健室行けよ?

花恋
………ほ、ほら、早く告ってきなよ!!
応援、してるから……!
あ、あと、……ありがと。

蓮
はは、別にたいしたことしてねーよ?(笑)
でも、さんきゅ。
頑張ってくるわ。

本当は蓮の好きな人は私だと思ってた。
ことあるごとに絡んできたし、同じ係だったから。
でも、それは私の勘違いだった。
花恋
(蓮、何考えてんの……?!思わせぶりなの!蓮は!!
ずっとそう。小さい頃から、ずっと………!

花恋
(私の方が、美咲よりも、蓮を見てたのにな………)

花恋
(確か、美咲って蓮のこと好きだったよね?
じゃあ両思いかー………)

花恋
(よかったね、って私はきっと美咲に言わなきゃいけないんだろうな……)

花恋
(言いたく、ないな………)

しばらくそうして黙って下を向いていた。
そんな沈黙は、美咲の明るい声で壊された。
美咲
か、花恋ー!

花恋
…………ど、どしたのー?
なんかあったー?

美咲
あ、あのね!私、蓮くんと、付き合うことになったの……!!

花恋
………そ、そっか。

花恋
よかったね。………っおめでとう。美咲、蓮のこと好きだったもんね………

美咲
うん!ありがと!
もう夢みたいだよ!

蓮
み、美咲ー!!

美咲
蓮くん!?どしたの?

花恋
蓮?

蓮
今日、一緒に帰らねえ?(照)

美咲
へ!?いいの?

花恋
………………よかったね、美咲。

美咲
うんっ!

花恋
っ……じゃ、また明日、美咲、蓮。

美咲
また明日!

蓮
また明日。

私は、いつだってそうだ。
告白してないのに、フラれる。
それでも私は明るく笑っていた。
だって、気まずくなるのは嫌だから。
だから私は恋をしない。
もう失恋したくない。
中学一年生。
私はそう決めた。
紗良
花恋、おはよ!

美咲
おはよ!

花恋
紗良、美咲、おはよ。

悲しいことに、私の学校は小中はエスカレーター式で、
美咲も同じ学校、同じクラスだった。
蓮も、クラスは違えど学校は一緒だった。
でも、話したくなくて、会いたくなくて、蓮の顔は最近見ていない。
それに、美咲と話す時は、いつもどこか後ろめたい感情が潜んでいる。
蓮のこと、実は私も好きだったって言ったら美咲はどんな顔をするんだろう。
そう考えることもあるけれど、でもそれはあくまで考えるだけだ。
だって、美咲も私の友達だから。
それにもう私の恋心は過去形だ。
現在進行形の恋心を壊すほど、私は酷くない。
だから、これからも私は美咲の恋を応援する。
小学五年生の自分の気持ちを殺して。
紗良は、私と隣の席の女の子だ。
裏表がなくて、明るい。
今まで同じクラスになったことがなくて、ついこの間初めて喋った。
恋に興味があるものの、好きと言う気持ちがわからないらしい。
私と理由は違うけど、同じように「恋愛しない組」だ。
正直、紗良はモテると思う。
それでも紗良は彼氏を作らない。
紗良はいつもこう言う。
「だって、好きじゃない人に初恋とられたくないじゃん?」
私はそれがずるくて仕方がなかった。
だって私はフラれる側だから。
男子生徒
紗良さん、あの、ちょっといい、かな?

紗良
私?いいよー

男子生徒
あ、えと、昼休み、体育倉庫の裏に来てほしい。

紗良
おっけー、じゃ、またあとで!

男子生徒
う、うん!

美咲
紗良、告白かなあ……?

花恋
あの雰囲気だし、絶対そうでしょ!

美咲
だよね。
紗良、オーケーすると思う?

花恋
1%も思わない(笑)

美咲
(笑)
紗良、頑なに彼氏作らないよねー(笑)
もったいない、男子生徒くん、結構人気なのに。

花恋
そうなの?

美咲
えー、花恋しらないの!?
こないだも先輩に告られてたらしいよー?

紗良
お待たせ!

花恋
あ、紗良、どうだったー?

紗良
んー、なんか昼休み来てーだって。

美咲
おお、これは120%告白だ…!

紗良
120%(笑)
行かないけどねー

花恋
へ!?行かないの……?

美咲
なんで!?

紗良
だって、行って告白されるの嫌だもん。
気まずくなっちゃう。
それならドタキャンして行かない方が、向こうも傷つかないと思うんだ。
私にフラれた、って言うよりも、私が来なかった、の方がまだいいじゃん。
そしたらきっと、ショック受けるよりも、私への怒りの方が先に来るでしょ?

美咲
そんなことしたら、紗良が恨まれちゃうことない?

紗良
大丈夫だよ。
だって、私には2人がいるし!
ね?

美咲
………うん

花恋
………………

花恋
ごめん、私委員会あるからちょっと抜けるね!

紗良
おけー

美咲
あ、うん!

花恋
………誰もいない、よね?

花恋
…………っ意味わかんない!

花恋
は?ドタキャン!?
意味わかんない!

花恋
なんで相手の好意をそんなふうに扱うの!?

花恋
相手のため?
んなわけないじゃん!

花恋
行くのが面倒なだけでしょ!?

花恋
相手が傷つく!?
来ない方がもっと傷つくんだよ、こっちは!!!

花恋
何もわかってねーくせに、知ったような口聞いてんじゃねーよ!!!

蓮
………花恋?

花恋
だれ!?

蓮
お、俺だけど………

花恋
蓮……!?

蓮
花恋、お前………

花恋
言わないで。

蓮
は?

花恋
今見たこと、絶対に言わないで!!

蓮
わ、わかったよ。

蓮
け、けどさ、なんであんなこと…………

花恋
…………だって、私には、わかっちゃうんだよ……

花恋
大好きな人に、フラれる気持ち。

花恋
痛くて、悲しくて、辛くて、……

花恋
だから、呼び出しをドタキャンしようとしてる紗良が許せなかった。

花恋
でも、それを紗良に言ったら、もう友達じゃいられなくなっちゃうでしょ。

花恋
だから、ここで1人で吐き出してた。全部。

蓮
…………わかるよ。

蓮
俺も、美咲を呼び出して、でも来なかったら、すごく寂しいし、辛かったと思うから。

花恋
蓮にはわからないよ……

花恋
だって、どうせ蓮は振られたことないんでしょ?

蓮
んなわけないだろ、ありまくっとるわ(笑)

花恋
でも、今彼女いるじゃん。
幸せじゃんか……

蓮
そうだな、俺は今幸せだよ。

蓮
好きな人に恵まれて、こうして幼馴染ともまた話せた。

花恋
っ!

蓮
俺、今日ほんとの花恋を知れた気がする。

蓮
きっと、花恋がさっき言ってたのが、花恋の本当の声なんだよ。
でも、その本当の声、俺は間違ってなかったと思うぞ。
嘘つき続けてもいいけどさ、忘れんなよ。お前は間違ってねーってこと。
辛くなったら、また聞くよ。
また、お前の本音聞かせてよ。
紗良のことだけじゃない、美咲も、俺も。
きっと、花恋からしたら、俺にだっていいたいことあるんだろ?(笑)
教えてくれよ?いつになってもいいからさ。
お前の声、しっかり受け止めてやるよ。幼馴染として。

花恋
…………うん。

花恋
ありがと。

蓮
いいよ、別に。

蓮
俺も、花恋のこと、もっと知りたい。

花恋
……っもうすでにいっぱい知ってるでしょ……

蓮
ああ、知ってるよ。

蓮
でも、本当のお前のことは知らないからさ。

蓮
だから、知りたい。
今度はほんとのお前のこと。

花恋
…………っ蓮ってほんとずるい。

蓮
……?

花恋
あ、なんでもない。

花恋
じゃ、そろそろ戻るね。怪しまれちゃうかもだし。

蓮
おう、わかった。

蓮
じゃあな、花恋。

花恋
うん、じゃあね。

花恋
…………そう言うとこだってば

花恋
ずるいよ、蓮。

花恋
そんなこと言われたら、また好きになっちゃうじゃん。

花恋
もう、恋なんかしないって決めたのに。

美咲
ねえ、紗良、ほんとにいいの……?

美咲
後悔、しない?

紗良
いいんだよ、別に。
全部いちいち言ってたら大変だし。

美咲
…………う〜ん

美咲
か、花恋はどう思う……?

花恋
あ、ごめーん!私、昼休みも委員会なんだよね。

美咲
あ、そうなの?

花恋
うん、そうみたい。

男子生徒
あ、あの、紗良さんっていますか?

美咲
あ、えと、そこに……あれ?紗良?

男子生徒
あ、あの、僕、紗良さんに用事があって……

花恋
紗良、さっきまでいたんだけど………

男子生徒
そう、ですか………

男子生徒
あの、紗良さん見つかったら、待ってるから、と伝えてくれませんか。

美咲
あ…………えっと、わかりました……

花恋
………あの、紗良は………

男子生徒
わかってます。
でも、いいんです。
僕が待ちたくて待ってるだけなんで。

美咲
そう、ですか………

花恋
………そっか。

男子生徒
じゃ、僕はこれで。

紗良
ふう、男子生徒くん、行ったよね?

美咲
さ、紗良、どこに行って…

紗良
んー?そこにいたよー?

美咲
へ?どこ??

紗良
そこだってばー、あそこの教室のオルガンの中。

美咲
えー!?なんでそんなこと……

紗良
だって、男子生徒くんと会ったら絶対面倒なことになるなーって思ったからさー

美咲
……………

花恋
…………

美咲
紗良、やりすぎだよ………

美咲
花恋もそう思わない……?

花恋
お、思う……。ちょっと、やりすぎだよ、紗良。

紗良
えー?そうかなー?

花恋
………………っ

花恋
(腹立つー!!!
隠れてあんなセリフ聞いてて、なんでまだそんな呑気なこと言えるの!?意味わかんないし!!)

蓮
花恋。

花恋
…………え、蓮?どしたの??

蓮
悪い、花恋のこと借りてく。

美咲
へ……?
あ…………うん。

紗良
いいけど、美咲じゃなくて花恋なの?なんで??
まさか浮気!?美咲どうするの!?

蓮
ち、ちげーよ!ただ、話があるだけ。そういうのじゃねーから。
な?花恋、そうだよな?

花恋
あ、あったりまえじゃん!

花恋
蓮のこと取る気ないから安心して!美咲。

美咲
あ………うん。

美咲
そ、そうだよね。ごめんね、私こそ……

紗良
ふーん?…

美咲
ど、どうぞあとはごゆっくり!私と紗良は購買行ってくるから……!

蓮
お、おい、美咲!

紗良
美咲、私お弁当派なの知ってるよね!?(笑)

美咲
うう、えっと、じゃあ1人だと心細いから一緒に購買来て!!

紗良
じゃあって何〜!?

美咲
花恋、またあとでね………!!

花恋
蓮、大丈夫……?

蓮
多分………

蓮
あとで美咲にメール入れとく。
俺の弟がお前の妹に告白したくって、そのラブレターを託されたから、姉の花恋に渡しに行ったって言っとくから、花恋も口裏合わせといてくれないか?(笑)

花恋
了解(笑)

花恋
で、なんの用だった?

蓮
花恋、お前さ、さっき紗良に腹立ってただろ?

花恋
え……!?
やば、私顔に出てた?

蓮
いや、全然?
むしろ楽しそうにからから笑ってた。

花恋
な、ならなんでわかったの?

蓮
俺、花恋の後ろにいたんだけど、お前、手をぎゅっと握りしめてたんだよ。
話しかけようとしたら、笑ってるように見える唇も、噛み締めててさ、ああ、こいつ怒ってんだな、って。

花恋
私、そんなことしてたの!?

蓮
よ〜く見ないとわかんないけどな。

花恋
よ〜く見てたの!?

蓮
あ、そういう意味じゃねーからな!?

花恋
あ、うん、それはわかってるけどさ……?

蓮
だって、花恋のあんなとこ見たらほっとけねーじゃん。

花恋
……っ!

花恋
………ありがと、でも、大丈夫だから。

蓮
そっか。わかった。
……また、声かけてもいいか?

花恋
うん、そうしてもらえるのは助かる。
さっきも会話が途切れたから、怒りもすぐおさまったし。

蓮
……おう。

花恋
……美咲の教室、来たはいいけど、もうこっちのクラス帰っちゃったかー……

花恋
誤解、解きたかったんだけどなー……

花恋
電話、してみるか……

花恋
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通話
00:00

花恋
もしもし、美咲?

美咲
花恋………?どしたの?

花恋
あ、あのね、蓮のことなんだけど……

美咲
いいよ

花恋
え?ごめん、聞こえなかった。なんて言った?

美咲
いいよって言ったの。
花恋、蓮くんの事、好きなんだよね?

花恋
…………っちがうよ、ちがう……!そんなことないよ!
え、えと、蓮から今日呼ばれたのはね、蓮の弟が私の妹に告白したくって、そのラブレターを託されたから、私にその手紙を渡しに来ただけで……!

美咲
ふふっ何それ(笑)

花恋
ほ、ほんとにそうなんだってば……

美咲
蓮くんからもおんなじこと言われたよ。

美咲
でもさ、違うでしょ?

美咲
花恋はそんなこと言うためにわざわざ電話したんじゃないよね?

花恋
う………、ごめん、美咲……

美咲
何が?(笑)
言ってくれなきゃ、わかんないよ?

花恋
………蓮のこと、好きでごめん。

美咲
………うん。

花恋
でも、取るつもりはないから。
勝手に私が想ってるだけなの。

美咲
…………たよ。

花恋
え?

美咲
私、知ってたよ、花恋が蓮くんのこと好きなこと。

花恋
え、えええ??!!

美咲
ちょ、、花恋声大きいよー

花恋
ななな、なんで!!?

花恋
なんで知ってたの!!?

美咲
だって花恋、蓮のこと、私と同じ目で見てたから。

花恋
……………んで。

美咲
??

花恋
なんで、それで怒んなかったの……?

花恋
自分の好きな人を、彼氏を取らないで、って普通怒るでしょ……?

美咲
じゃあ、花恋は私のこと怒る?

花恋
え?

美咲
自分の好きな人を勝手にとんなって、独り占めすんなって、怒る?

花恋
お、怒んないよ!

花恋
怒れるわけない……

美咲
だよね。

美咲
でも、私がしたことも、それと一緒だよ?

美咲
花恋が蓮のこと好きなの、止める権利は私にはないよ。

美咲
それにもし花恋と私が逆に立場でも、花恋はそうしたでしょう?

花恋
み、美咲、それは、そうだけど、でも、

美咲
いいんだよ、私が許す。

花恋
許すって………、いいの?ほんとに。

美咲
いいんだよ。
恋することを否定することなんて、私は絶対したくない。

花恋
………ありがと、美咲!

花恋
私、頑張るよ。

美咲
うん、頑張って!

花恋
だから、美咲も頑張ってよ?(笑)
遠慮とかしなくていいから!

美咲
……うん、そうだね、そうじゃなきゃ、フェアじゃないもんね!

花恋
だね!

花恋
じゃ、また連絡する。
また明日、学校で。

美咲
うん、また明日!

花恋
なんでだろ、なんだか気持ちが軽い。

花恋
まるで、なにか引っ掛かっていたものが取れたみたい。

花恋
明日も、頑張ろう。美咲と一緒に。

私にとって美咲という存在は、この日大きく一変した。
そして美咲は、私の恋を大きく変えることになる。
間違った道を修正することもあれば、道を狂わせることも。
そんな私たちの恋の道は、今はまだ霞がかかっている。
でも、そんな中に、私は今日、初めて一歩足を踏み入れた。
明るかったり暗かったり。
いいことばかりじゃない、でも悪いことばかりでもない。
私のとって、恋はそんな存在で、
もうしない、と決めたはずの恋をもう一度した私は
間違いだらけで、でも走り続ける。
これはそんな物語。