短編集

片思い

仕事終わり 店に行くといつもの位置に座っている○○

話す内容は決まって〇〇の恋愛相談

そんな軽い言葉で受け流す

俺の適当さを見抜いてか○○は少し怒ったように言った

しまった、と思った時には遅かった

冗談ねぇ、、本気にしてもらうには距離を詰めすぎか

友達、、親友とも言える関係

それがいつからか俺の中で○○は友人ではなく好きな人に変わっていた

思ってもない言葉はスルスルと出てくるのに、好きの2文字は喉に突っかえて出てこない

この関係を壊すことが怖くアプローチもままならないまま○○と友人関係を続けている

この1時間弱○○はほかの人の元ではなく俺の横にいる、、

いつかはこの時間無くなるのだろ

カチッ、カチッ

タバコに火をつける

前とは違い最近は○○は好きな人と遊びに出掛けることも増えたらしい

ふぅーっと煙を吐き終わりタバコを仕舞うためにポケットに手を入れた

ポケットにはエメラルドのネックレスがあった

友人に贈るには高すぎる物だった

2週間後

「よ！」

ひとりでタバコをふかしながら酒を呑んでいると

突然声を掛けられた 反射的に振り返る

○○はいつもと少し違い頬が緩んでた

その理由にたどり着いた時

心臓が握られたような感覚になった

ポケットのネックレスを掴んでる手が暑くなる

喉の奥がキュッとなった

なんとか絞り出したその言葉に○○は驚いた顔をした

あーアドバイスなんてしなければ良かった

彼氏、、その写真の先にいるのは俺ではない

○○が出した写真の男は優しく誠実そうな男性だった

そういう○○の笑顔を引き出したのは他でもないこの男で

自分では無いことの悔しさで涙が滲みそうだった

そう言う○○の笑顔は眩しくそして残酷だった

いっそ関わらない方が楽だ だから

俺は笑顔で答えた

あぁやはり思ってもないことはスラスラと出てくる

これはある春の中ごろの片思い