一覧ページ

LINE523

第1話 - あ

2023年04月10日

#恋愛

結城真矢

タマ

マユさん、今日はいつ家に来てくれるのかしら。

マユ

お義母さん、おはようございます。

マユ

あの、今日は用事がありまして…

タマ

はあ？何ですって？

タマ

あのね、毎日家に来て家事をするのがあなたの役目でしょ？

マユ

役目、と言われましても。私にも用事がありますので。

タマ

あなたはうちの嫁でしょ？

タマ

うちに嫁に来たからには、夫の家に尽くすのが役目です。

マユ

結婚してからほとんど毎日家事していますよ。

マユ

私が専業主婦でも、用事があってできない時があるんです。

タマ

まあ、姑に口答えするなんて！

タマ

だから同居しようって言ったのに。

マユ

同居って言われても。

マユ

お義母さんの家も私達の住まいも2LDｋのアパートですよ？

タマ

息子、コウヘイが一軒家を建ててくれたら問題ないわ。

マユ

いやいや、コウヘイさん一軒家は持つ気ないようですよ。

マユ

しかも奨学金の返済がまだあるので…

タマ

だったらあなたが働けばいいじゃないの！

マユ

あの、お義母さん。妻が働いてるなんて夫に甲斐性がないって

マユ

言ってるものだと言って仕事を辞めさせたじゃないですか。

タマ

本当に口答えばっかり！

タマ

あのね。マユさん。嫁とは婚家の為に尽くす存在なの。

タマ

本当なら夫の親と同居。夫の親の為にも家を建てたり

タマ

子どもを産み育て、心を込めて介護をして見送るのよ。

マユ

人生のプランや、お互いの親の先の事についてはコウヘイさんと

マユ

話し合っていますから。

タマ

私が言っているのは婚家の話！

タマ

何であなたの実家まで面倒を見なきゃならないのよ。

マユ

いや、私の親ですから…

タマ

あなたはうちの嫁にきたの。実家はないと思いなさい！

マユ

いやいや、そういう考えは受け入れられないので。

タマ

何ですって？マユさんあなた何の為にコウヘイと結婚したの？

マユ

何でって、この先コウヘイとずっと一緒に居たいと思ったからで…

タマ

それならコウヘイの親の面倒も見る義務もあるわ！

マユ

義務って…

タマ

だから今日も家に来て、家事をやるのよ。

マユ

…わかりました。

タマ

あ、夕飯も作っておいてね。私今日のお昼は友達とランチなの。

〜次の日〜

タマ

マユさん。

マユ

お義母さん、おはようございます。

マユ

あの、今日は本当に大事な用事があって…

タマ

はあ？嫁が実家に尽くす以外に大事な用事ってあるの？

マユ

本当に用事があるので、その後で伺わせてもらいます。

タマ

駄目よ。今すぐ来なさい。

マユ

そんな…

タマ

あとね…昨日の夕飯は一体何？

マユ

何って、サバの味噌煮でしたけど。

タマ

とても食べられたものじゃなかったわ。

タマ

味付けも変だし。何よりサバの質が悪い。

タマ

それはすいませんでした。

マユ

お昼にホテルのランチ行ったから余計にひどく感じたわ。

マユ

あなたのお母さまって、何も教えてこなかったのかしら。

タマ

嫁としての気概が足りないのじゃないかしら。

マユ

申し訳ございません。お料理がお口に合わなかったようですね。

タマ

ええ。だから次はきちんと食べられる食事を用意する事！

マユ

は、はあ。

タマ

コウヘイったらなんでこんな不出来な嫁をもらったのかしら。

マユ

そこまで仰らなくても…

タマ

同居はしない。家事をやらせてもダメ。跡取りも産みやしない。

マユ

跡取りって…私達結婚してまだ半年ですよ？

タマ

黙りなさい！

タマ

いいですか。我が家に嫁いだからには嫁のしきたりがあるのよ。

マユ

はあ…

タマ

その1　夫と夫の親には誠心誠意尽くすこと。

タマ

その2　夫の後ろを三歩下がって歩き夫の言う事には逆らわない事

タマ

その3　実家はなくなったと思う事

マユ

それはさすがに…

タマ

例え実家の親が危篤だろうと帰る事は許しません。

タマ

その4　3年子なきは去れ。

タマ

その5　子どもは必ず男児を産む事。

タマ

まあ、最低限これくらいはこなしてくれないとね。

マユ

そんな…

タマ

守る気がないのなら、嫁としては認められません。

タマ

すぐにでもコウヘイと離婚させます！

マユ

離婚だなんて。

タマ

離婚が嫌だったら今すぐに家に来なさい。

マユ

はい。わかりました…

〜1週間後〜

タマ

マユさん。

マユ

お義母さん、おはようございます。今から家事に向かうので。

タマ

いいえ。それには及びません。

マユ

えっ？いいのですか？

タマ

ええ。今日は大丈夫よ。

マユ

何か、ありましたか？

タマ

いちいち詮索するんじゃないわよ。

タマ

強いて言えば、あなたの家事すべてが酷すぎるから考えているの。

マユ

そうですか…

タマ

ええ。だからしばらくは家事をしに来なくていいわ。

タマ

お友達との旅行もあるしね。

マユ

わかりました。

〜さらに1週間後〜

タマ

マユさん。

マユ

お義母さん、おはようございます。

タマ

あなたに言っておかなければならない事があります。

マユ

はい。なんでしょうか。

タマ

コウヘイとは離婚してもらいます。

マユ

え？

タマ

やはりあなたはコウヘイの、いいえ我が家の嫁には相応しくない。

マユ

そんな…

タマ

この1週間、よくよくわかったの。

タマ

コウヘイにはもっと相応しいお嫁さんがいるってね。

マユ

私が至らなくて申し訳ございません。

マユ

ですが、すぐに離婚というのは受けれられません。

タマ

姑の言う事は絶対です！

タマ

それにコウヘイにいい縁談が来ているのよ。

マユ

えっ？

タマ

この1週間、家で家事をしてもらったらそれはまあ見事で。

タマ

料理もまるで料亭のようだったわ。

マユ

コウヘイからは何も言われていませんが。

タマ

コウヘイだって、納得してくれるはずよ！

マユ

ではまだコウヘイも知らないのですね？

タマ

親の言う事は絶対なの。しかもお相手は名家のお嬢さんよ。

タマ

結婚すればうちの格だって上がるのよ。

マユ

今は結婚は本人が決める事ですよ。

マユ

コウヘイから言われるならともかく

マユ

お義母さんから一方的に言われて離婚なんてできません。

タマ

これは決定事項です！

タマ

嫁の心得も守れない嫁なんて要りません。

タマ

とっととコウヘイと離婚してちょうだい！

マユ

そんな…

〜3日後〜

タマ

マユさん。コウヘイと離婚したようね。

マユ

はい。コウヘイさんからも言われたので。

タマ

そうそう。夫の言う事は絶対なのよ。

タマ

ただコウヘイは再婚には納得してくれないのよね。

マユ

そうですか。

タマ

誰かさんと違って若くて美人で、家柄も良くて家事も完璧なのに…

マユ

はあ、そうですか…

タマ

まあ先方と会って徐々に仲を深めていけばいい事よね。

タマ

離婚から結婚まで100日空けなきゃいけないし。

タマ

それまでに結婚を決めてくれればいいのよ。

マユ

それもコウヘイが決める事ですし。

タマ

ふん、もう離婚したあなたには関係ないわ。

タマ

そうよ。もうあなたとは姻族関係がなくなったのよ。

マユ

そうですね。

タマ

もう今後連絡は取る事はないから。ま、あなたも気を落とさずに

タマ

あなたはあなたなりの幸せを見つけてね。

マユ

はあ…

〜100日後〜

タマ

マユさん！どういう事なの？

マユ

あら、お義母さん…じゃなくてタマさん。

マユ

もう連絡は取らないんじゃなかったんですか？

タマ

皮肉は今はいいから！

タマ

どういう事なのよ！コウヘイと離婚したんじゃなかったの？

マユ

ああ。その事ですか。

タマ

新しいお嫁さんとようやく結婚できると思ったのに！

タマ

役所から婚姻届けは受け付けられないって言われたのよ。

タマ

コウヘイも連絡が取れないし。

マユ

実は私とコウヘイ、再婚したんです。

タマ

へ？

タマ

そんな、あり得ないわ！コウヘイは離婚の意志があったんでしょ？

マユ

コウヘイと話し合ったんです。

マユ

一度離婚して、再婚できる100日後に再婚しようって。

タマ

そんな事許されないわ！コウヘイには新しいお嫁さんがいるのよ！

マユ

許されないと言っても、コウヘイが決めた事ですし。

マユ

夫の言う事に逆らわない事、でしたよね？

タマ

でも、親が許可していないわ！

マユ

私の親は許可しましたよ。親の言う事は絶対でしたよね？

タマ

あなたの親は関係ないわ！

マユ

でもコウヘイ、私の家に婿入りしたんです。

タマ

へ？

マユ

再婚の時にコウヘイは私の苗字になりました。

タマ

ファッ！

マユ

私が嫁なら、コウヘイは婿ですよね？

タマ

まさか…そんな…マユさんあなたコウヘイを騙しているのね？

マユ

正真正銘コウヘイの意思です。

マユ

そもそもコウヘイは私との離婚も、別の女性との再婚も

マユ

納得していませんでしたよね？

タマ

離婚して新しいお嫁さんと付き合えば、この結婚の良さを

タマ

理解してくれたはずだわ。

マユ

その女性の家がお金持ちだからですか。

タマ

それもあるけど、先方もコウヘイを気に入っているし

タマ

何より家事、気遣いが嫁として完璧なのよ。

タマ

後は跡継ぎを産んでくれれば文句のつけようもないわ。

マユ

そうですか。でも、婚姻届けを本人以外が記入したら

マユ

いくら親とは言え犯罪ですよ。

タマ

コウヘイと連絡がつかないんだから仕方がないじゃない！

マユ

コウヘイはその女性と結婚する意志はないんですよ？

タマ

結婚してもらわないと困るのよ！

タマ

いいじゃない。美人だし家事も完璧だし。

マユ

いやいや、いくら美人で家事も完璧だからと言って

マユ

男遊びが激しい女性はごめんだってコウヘイさんが言ってました。

タマ

へ？

マユ

調べてなかったんですか？

タマ

い、いや親が名家でお金持ちだし、

タマ

実際に会ってる時も上品なふるまいだったのよ。

マユ

確かに資産家のお家の方ですね。でも…

マユ

異性関係はかなり派手で不倫も1度や2度ではないらしいですね。

タマ

フェ？

マユ

彼女の不倫の慰謝料はすべてご実家が肩代わりしたそうですよ。

マユ

その額も1千万近くだとか。

タマ

嘘よ！

マユ

奔放な娘を片付けたくて結婚を持ち掛けらたんじゃないですか？

マユ

高額な持参金をチラつかせて。

タマ

うっ、確かにお金の事は言われたけど。

マユ

興信所に調べてもらったら簡単に分かりましたよ。

マユ

お金につられて息子を無理矢理結婚させようとするなんて

マユ

酷い人ですね。コウヘイも失望していました。

タマ

お金もあるけど、名家の一員になれるのよ？

タマ

私もセレブの1人になれるところだったのに。

マユ

タマさん、借金ありますよね？

タマ

へ？

マユ

こちらも調べてわかりました。

タマ

プライバシーの侵害よ！

マユ

コウヘイと結婚させようとした家、金融業を営んでいて、

マユ

タマさんそこの金融業者から150万ほどの借金がありますね？

タマ

うぐっ

マユ

あなたは借金がなくなる上にお金も入る。

マユ

先方は厄介者が片付く。ウィンウィンってところでしょうか。

タマ

そこまでわかったならねえ、お願い。

タマ

私を助けると思ってコウヘイを返してちょうだい。

マユ

お断りします。

タマ

そんな事言わないで！お願い！

タマ

結婚しないと先方から利子を倍にするって言われてるの。

マユ

そもそもタマさんが借金しなければ良かった話じゃないですか。

マユ

お義父さんが亡くなってから

マユ

高級ランチや旅行と随分楽しんでいましたものね。

タマ

うう…お願い！贅沢はもうしないから。

タマ

お金貸してください！もう後がないの！

タマ

あなたのご両親にもお願いできないかしら！

マユ

どこまで図々しいんですか？

マユ

自分の借金は自分でなんとかしてください。

タマ

そんな…！

〜後日談〜

マユ

コウヘイと女性との結婚が叶わず、本当に利子を倍にさせられた

マユ

タマさん。年齢が年齢だけに今さらパートも雇ってもらえず

マユ

途方に暮れていましたが、コウヘイが最後の親孝行と言って

マユ

借金関係に強い弁護士を紹介しました。

マユ

案の定違法な金利だったらしく、業者は摘発され、

マユ

タマさんは弁護士や福祉団体の協力で借金返済や生活の立て直しを

マユ

しています。

マユ

再婚して改めて夫婦になった私達ですが

マユ

この度妊娠している事がわかりました。

マユ

新しい家族のためにも頑張っていきたいと思います。

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

結城真矢

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

LINE523

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#恋愛の新着小説
一覧

関連するタグ

LINE523

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#恋愛の新着小説一覧

関連するタグ

#恋愛の新着小説
一覧