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LINE866

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LINE866

1 - あ

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19

2023年07月10日

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キヨ

マツさん、遅いじゃないの。

マツ

お義母さん、おはようございます。遅いって今朝の4時ですよ?

キヨ

朝の4時なら、嫁はもう起きている時間です。

キヨ

まさか、姑よりも遅く起きるつもり?これだから平民の嫁は。

マツ

平民ってまたそれですか。今は身分なんて関係ないのに。

キヨ

嫁の癖に口答えするなんて!

キヨ

いいから今すぐに1階の私たちの世帯に降りてきなさい。

キヨ

あなたは2階に住んでいるんだから、すぐに来れるでしょう?

キヨ

本来なら、夫の両親が起きるよりも先に1階に降りてきて、

キヨ

朝食の準備や朝の掃除を済ませているものよ。

マツ

私も自分の仕事や私達の世帯の家事があるんです。

キヨ

本当に口答えばっかり、育ちが悪い証拠だわ。

キヨ

本来なら、あなたのような平民の家柄、しかも高卒の嫁なんて

キヨ

迎え入れるはずもないんです。

マツ

確かにこの家は昔は家老の子孫と聞いています。

マツ

ですが、夫、モトさんは今は家柄とか身分とかは

マツ

関係ないと言ってくれました。

キヨ

そう。息子モトがどうしてもあなたと結婚したいと言うから

キヨ

結婚を許したのです。本来なら例え一人息子の願いでも

キヨ

格下の娘を嫁に迎えるなんて到底できませんでした。

キヨ

モトが結婚と同時に家を建て直してくれたから、

キヨ

結婚を許したようなものです。

キヨ

まあ、本当は以前のような平屋の日本家屋が良かったのだけど。

キヨ

モトがあなたの平民センスに合わせて

キヨ

二階建ての二世帯住宅にしたのも大幅な譲歩なんですからね。

マツ

ですから、時代が違うのです。

マツ

モトさんは確かにこの家の一人息子ですけど、

マツ

職業は私同様、一般企業のサラリーマンです。

マツ

年収だって私とほとんど変わりません。

キヨ

だからそういう口答えするところが駄目嫁だと言ってるでしょう?

キヨ

格上の家に嫁げた事を私達に感謝して、心から尽くしなさい。

キヨ

と、あなたが嫁に来た時から言ってるんだけど。

マツ

モトさんと結婚したからには、お義父さんとお義母さんは

マツ

モトさんの親として敬います。

マツ

けれども、奴隷のような扱いを受ける気はないので。

マツ

足腰が悪くて掃除が大変なら家事代行サービスを頼んでおきます。

マツ

高齢者向けの宅食も頼んでおきましょうか?

キヨ

こういうのは嫁がやるもんです!

マツ

お義母さん、私が口答えしている理由は、

マツ

いくらお義母さん達の世帯で家事をやっても、やれ掃除が雑だ

マツ

味付けが濃い、年寄りの体を気遣っていないだの

マツ

文句ばかり言われているからです。

マツ

だったら掃除も高齢者向けの食事もプロに頼んだ方が

マツ

いいんじゃないですか?

キヨ

だから、嫁であるあなたが私たちを満足させられるよう

キヨ

嫁として精進すれば良いだけの話なの。

マツ

話が堂々めぐりで終わらないですね。

マツ

モトさんも子どもも起きてきたので、これで失礼します。

キヨ

待ちなさい。1階に降りて私たちの朝食も作るのよ。

マツ

私もこれから仕事がありますので。

マツ

家事代行の電話番号を送っておきますね。

〜その夜〜

キヨ

マツさん。夕方にあなたのご実家からお中元が届いたわ。

マツ

そうなんですね。私にも両親から連絡がきました。

キヨ

まったく、相変わらずしみったれた物を寄越すのね。

マツ

お気に召しませんでしたか?

キヨ

毎回毎回、センスもない上安物で貧乏くさいったらありゃしない。

マツ

実家からは、地元名産のお茶と茶碗一式を贈ったみたいですが

マツ

お気に召さないようで、大変失礼しました。

キヨ

本当よ。お茶も一目で安物と分かる色や香りだし

キヨ

お茶碗だって、いかにも工場で大量生産したって色合いだわ。

キヨ

あなたのご実家の格考えれば、これが精一杯なのでしょうけど。

マツ

確かに、私の家は贈り物も収入に見合った物を贈っています。

マツ

ですが、相手への礼儀は尽くしているとは思いますけど。

キヨ

礼節とは言ってもねえ。こんな安物じゃあ、まさに

キヨ

つまらないもの、よねえ。

マツ

そこまで仰るなら、分かりました。

マツ

両親にも家の格が違うと話しておきます。

キヨ

そうよ。だから格上の我が家からは相応の物をお返しておくわ。

〜3日後〜

マツ

お義母さん、今どこにいるのですか?

マツ

用事があって1階を訪ねたのですが、お留守みたいですが。

キヨ

ああ、マツさん。

キヨ

今、私のお友達の家に遊びに行っていたのよ。今帰っているわ。

マツ

そうですか。あのですね、私の母親から電話がありまして。

キヨ

あなたのお母様から?

マツ

なんでもお義母さんから電話が掛かってきて、

マツ

お中元で贈ったお茶をくれないか、という話だったそうですね。

キヨ

ああ、その話ね。

キヨ

あのお茶、安物の割にはまあまあ美味しかったものだから。

キヨ

あなたのお母様に頼んで、もう少しお願いしたの。

マツ

もう少し、という量ではないと聞いていますが。

キヨ

いいでしょ?安物なんだから。

キヨ

それとも、安物でも金額的に負担だったかしら?

キヨ

ごめんなさいねえ。お金は後でお支払いするって言っておいて。

マツ

あのお茶がお気に召されたなら、それは良かったです。

マツ

ですが、あのお茶が欲しければ、母じゃなくて

マツ

私に直接言って欲しかったです。

キヨ

これは、あなたのご実家の格を上げるチャンスでもあるのよ。

マツ

は?

キヨ

由緒ある我が家とは格差が大きすぎて肩身が狭いでしょう?

キヨ

だから我が家に充分に尽くして我が一族の覚えを

キヨ

良くしようとする私の心遣いに気付いて欲しいものだわ。

マツ

その必要はないんですが。

キヨ

あら?あなたはこれはらずっと、格下の平民嫁として

キヨ

我が家の親族からも指差され続けるのよ?

キヨ

そうならない為にも、あなたはもちろんのこと、

キヨ

あなたのご実家も尽力しなきゃ。

マツ

だから、その必要はないと言っています。

キヨ

肩身の狭い嫁ってつらいわよ?

キヨ

ちなみに今日会ったお友達も、旗本の子孫なのよ。

マツ

そうですか。

キヨ

他にも元華族の家柄のお友達も何人かいるのよ。

キヨ

だから、私のお友達にもあなたを紹介したいから、

キヨ

私に気に入れられる努力を惜しまない事ね。

〜1週間後〜

キヨ

マツさん。お茶がまだ届いてないんだけど。

キヨ

私から催促するのも何だから、あなたからお義母さんに

キヨ

それとなく聞いてみてくれないかしら?

マツ

あんなに下に見ている家なんですから、

マツ

遠慮せずに堂々と聞いてみたらいいんじゃないですか?

キヨ

まあ、私だって格下相手にも節度ある態度で接しますよ。

マツ

あれだけ格下格下とバカにしているのですから、

マツ

節度とか気にしていないと思っていました。

キヨ

まあ、姑を馬鹿にするなんて許しませんよ!

キヨ

謝りなさい!

マツ

謝るのは私じゃなくてお義母さんの方ですよ。

キヨ

嫁の癖に、謝れですって?

マツ

いいえ、私にじゃなくて、お義母さんのお友達にですよ。

キヨ

へ?

マツ

お友達に、お茶は届かない事を謝っておく事ですね。

キヨ

イヤよ!絶対にお茶はもらうから。届かないと困るのよ。

マツ

売れないからですか?

キヨ

へ?

マツ

知っていますよ。実家から届いたお茶をお友達に売ってるの。

キヨ

へ?

キヨ

そんな訳ないでしょ。ただ意外と美味しかったから

キヨ

お友達にも分けたら気に入ってもらえたのよ。

マツ

一目で分かる安物を、格の高いお友達にあげたんですか?

キヨ

確かに安物だけど、味は良かったから。

キヨ

値段はともかく、質の良い物は頂くのよ。私達は。

マツ

お義母さんのお友達だっていう方の1人から母に連絡がきたんです。

キヨ

へ?

マツ

その方も、元華族の方ですが、母の友達でもあるんですよ。

マツ

その方が連絡をくれたんです。

マツ

一緒に贈った茶碗も売ろうとしましたよね?

キヨ

それは茶碗を見た友達が気に入ったからよ!

マツ

気に入ったからと言って、お中元でもらった物を売るんですか?

キヨ

もらった物をどうしようと、私の勝手でしょ?

マツ

そんなにお金に困ってるんですか?

キヨ

へ?

キヨ

姑に向かって、しかも家老の家柄に失礼ね!

マツ

知っていますからね。お義母さんの世帯の経済状況。

マツ

随分と困窮されていますよね?

キヨ

そんな訳ないでしょう!

マツ

2世帯住宅の水道光熱費、食費もすべて私達が払っているの

マツ

知らないとは言わせませんよ。

キヨ

子どもが高齢の親の面倒をみるのは当然でしょ?

マツ

面倒を見てもらっている自覚があるなら、

マツ

少しは感謝の気持ちを見せて欲しいんですけどね。

キヨ

お金を出しているのは息子でしょ?モトには感謝しているけど

キヨ

あなたに感謝しなければいけない言われはないわ。

マツ

お義母さん達が住んでいる2世帯住宅、私がローン払っています。

キヨ

へ?

マツ

頭金は私の実家が出してくれました。

キヨ

へ?

マツ

ローン返済もかなり楽になるほどの頭金です。

キヨ

そうなの?あなたのご実家、意外とお金持ちなのね。

マツ

はい。身の丈に合った生活をしているので。

キヨ

でも、いくらお金持ちでも、平民となれば家老の子孫には

キヨ

格が遠く及ばないわ。それは忘れないで欲しいわね。

マツ

まだ言いますか。

マツ

お義母さんの言葉で言うところの格下の家に

マツ

生活を支えてもらっているという現実も忘れないで欲しいですね。

キヨ

うるさいわね!

マツ

お友達にはお茶の件はきちんと弁明されてくださいね。

マツ

それでは私は仕事に戻りますので。

キヨ

待って!それはできないわ!お茶送りなさいよ!

〜その日の夜〜

キヨ

マツさん、どこにいるの?

マツ

お義母さん、お友達には謝りましたか?

キヨ

あなた達、どこにいるの?

キヨ

いつまで経ってもモトもあなたも帰ってこないから

キヨ

モトに電話しても全然出ないし。

マツ

ちょっと家族ででかけていますので。

キヨ

早く帰ってきなさい。

キヨ

マツさん、あなたのご実家、大名の家系なんですって?

マツ

お義母さんのお友達から聞いたんですか?

キヨ

情報源はどうでもいいの。なんでそれを早く言わないのよ!

マツ

大名の家系と言われましても。何代も前から一般家庭ですし。

マツ

お城もずっと昔に文化財として寄贈していますしね。

キヨ

あなたのお母様、市場に出回らないような高級なお茶も持ってるし

キヨ

名器と言われる茶器も持っているのも大名の子孫だからなのね。

マツ

知ってたんですか。なのに私には散々安物だとけなして。

キヨ

そんな事はどうでもいいの!

キヨ

ねえ、お母様に取り次いでもらえないかしら。

キヨ

今までの非礼をお詫びしたいの。

マツ

結構です。

キヨ

あなたには聞いてないの。

マツ

隣にいる母がそう言っています。

キヨ

へ?

マツ

今、母と一緒におりまして。母も呆れています。

マツ

結婚の顔合わせの時、散々平民だ格が違うだの言われて

マツ

私も一言言おうと思ったんですが、両親に止められて。

マツ

きちんとした家なら、ちゃんと調べてくれるだろうって。

キヨ

それには私も落ち度があったわ。

キヨ

だからこれから、家柄も同格だとわかった訳ですし、

キヨ

両家仲良く暮らしていきましょう。

マツ

だから結構です。

マツ

お義母さんの言い分だと、

マツ

大名と家老じゃ格全然違うじゃないですか。

キヨ

うっ

マツ

私達は格なんでどうでもいいです。私たち世帯も、私の実家も

マツ

あなたとのご縁はなかった事にしますから。

キヨ

どういう意味よ!

マツ

私たち、引っ越します。

キヨ

へ?

マツ

引っ越しますので、お義母さん、いいえ、キヨさん

マツ

どうかお元気で。

キヨ

ちょっと待ちなさい!

キヨ

私たちこれからどう生活して行けばいいの?

マツ

最後にモトさんからいくらか送金しますので

マツ

それで今後の生活を立て直してくださいとの事です。

キヨ

イヤよ。私たちは家老の子孫なのよ。

キヨ

惨めな生活はしたくない。

マツ

家老の子孫というだけでは生活できない事は、

マツ

何代も前から分かっていたじゃないですか。

マツ

他の親戚は普通に仕事して生活していますよ。

キヨ

そんなお願い、私たちを見捨てないで!

〜後日談〜

マツ

家老の子孫の本家、というだけで威張っていた

マツ

義両親は、ろくに年金ももらえずにすぐに生活苦に。

マツ

老体に鞭打ってパート仕事に出ているそうです。

マツ

またお茶を売りつけようとしたお友達らからも

マツ

心底呆れられて縁を切られてしまっているとか。

マツ

私達家族は、家を手放したのは正直痛いところですが、

マツ

引越し先でアパートを借りて、モトと子どもと

マツ

3人で新しい生活を始めています。

マツ

貯金ができたら、今度は親の助けを借りずに

マツ

家を建てようと計画中です。

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