青×桃
桃side
いふ
ないこ
ただの幼馴染だと思っていたまろに告白されて一ヶ月、俺は未だ彼に返事が出来ないままでいた。
いつも隣にいたとはいえ、 やっぱり告白されて返事もしていないとなると、互いに気まずいわけで。
この一ヶ月の期間、 俺とまろが側にいる事は少なかったし、会話も極力する事は無かった。
ないこ
いふ
話す瞬間となると、基本は課題の回収と生徒会の仕事だけ。
プライベートで俺から話に行く事は無かったけど、まろもまろで俺に話しかける事も無かった。
...そして気づけば、 彼の周囲には俺ではない、 沢山の生徒達が集まっていた。
いふ
俺たちが久しぶりに対面したのは、 昼休みに学食へ行った時。
日替わりランチの唐揚げを頬張っていた俺は、盆を両手に抱え、 こちらを見下ろすまろを横目で見る。
ないこ
いふ
箸を片手に周囲を見渡すと、 珍しく学食は大勢の生徒たちで賑わっていて、空いている席は無かった。
俺の隣は偶然空いていた為、 まろがここに近づいたのだろう。
ないこ
いふ
うどんが載った盆を机に置き、 席に腰を下ろしたまろは、「いただきます」と小さく手を合わせた。
それを横目で確認し、 無言で食べ続けていた俺は、 やがて一つのスイーツを手に取る。
一日20個限定の苺タルト。
今日の俺はこのスイーツを買うために、号令と同時に学食へ駆けて行ったと言っても過言では無い。
ないこ
一口頬張るだけで蕩ける様な甘い味が、俺の口内に広がる。
なるべく長い時間美味しさを感じられる様に、ゆっくりと味わって食べていると...ふと隣から視線がした。
ないこ
いふ
そう言って目線を泳がせたまろへ、 俺は「ふーん」と言葉を吐きながら、 自分の右手が握るフォークを見て彼に尋ねた。
ないこ
いふ
瞳を輝かせたまろは、 昔と全く変わっていなかった。
甘い物好きは幼少期の頃から、 変化はないらしい。
ないこ
いふ
俺たちが食べたい物を渡す時は、 大抵食べさせ合う事が多かった。
それが体に染みついていた俺は、 無自覚で彼にその行動をする。
やがてまろは小さく唸ってから、 俺の手首を掴んでフォークを自分の口へ運んだ。
いふ
ないこ
俺は何事も無かったかのように スイーツの皿へ視線を戻し、 また一口頬張る。
ないこ
隣を確認すると、彼の赤くなった頬と耳元が垣間見える。
その様子はまるで恋する乙女そのもので...なんて言っても俺にはわからない、まろの気持ちが。
正直まろに告白された時... 何も思わなかった。
嫌だ・やめて欲しいとも、 嬉しい・付き合いたいとも感じない。
本当にどこを切り取っても"無"。
なんでだろう、 俺はまろの事が"好き"な筈なのに。
でも少し考えたらわかった。俺は...
ないこ
でもそうなると俺の心の中には、 もっと疑問が浮かんでくる。
...そう、なぜ俺は"特別"がわからないのに、まろはその"特別"を知っているのだろう、と。
俺とまろはいつも隣を歩いてきた。
幼稚園、小学校、中学校、高校... 俺たちはいつも似た行動をして、 同じに出来るものは、 なるべく同じ状態で過ごしてきた。
だから条件は一緒のはず。
ないこ
同じ道を通ってきていたと思っていたのに、気づいたら彼と俺の道は別れていた。
"特別"を知る事が出来るまろの道と、 "特別"を知る事が出来ない俺の道。
...隣に立っていると思っていた彼は、 知らないうちに俺と違う道を歩いていたのだ。
何故そうなったのかは 今の俺に検討も付かない。
俺の知らない... 例えば家の中で何かあったとか。
でも今まで彼はそんな素振りさえ、 一切見せてこなかった。
ないこ
俺には知らないことを、 まろは知っている。
俺と同じだと思っていた君は、 知らぬ間に前へ前へと進んでいってしまう。
俺だって__そっちに行きたいのに。
ないこ
未だに顔を赤く染めるまろは、 その場から逃げるように盆を持って去っていく。
そんな彼の背中を、 俺はただひたすら見つめていた。
ないこ
誰にも聞こえない声量で呟く。
俺はもう、 君の隣を歩く事は叶わないのかな...?
コメント
2件
最高です👍
とりあえず何冊BL本を内藤様宛に送ればよろしいでしょうか((