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返事を返そうとした次の瞬間、

コンコン。

と、控えめなノック音が窓の方から聞こえた。

監督生

り、リリア先輩…?!

リリア

こんなところからですまんな

監督生

今玄関の鍵開けますね…!

バタバタと慌ただしく階段を駆け下り、扉を開く。

監督生

っ…!

戸を開いた先にはすでに彼の姿があった。

び、びっくりした…。

監督生

ど、どうぞ中に

リリア

うむ、ありがとう

監督生

こんな時間にどうされましたか?

至って平静を装い聞いた。

リリア

なに、可愛いお姫様を慰めに来ただけじゃ

監督生

お姫様って、またまた…

リリア

お主のことじゃ、また1人で抱え込んではいないか?

監督生

どう、でしょうか……

震える声を抑え、ぎこちなく笑った。

監督生

リリア先輩は心配性過ぎますよ。自分は大丈夫です

にこりとリリアが笑って見せる。

信じてくれた、のかな…?

リリア

お主のその『大丈夫』は、大丈夫じゃないときの大丈夫じゃな

監督生

……

リリア

赤子は寝るのも仕事じゃが、泣くのも仕事のうちじゃ。さぁ、わしの胸を貸してやろう!

しかし、頑なに頭を縦には振らない。

リリア

お主もお主で強情じゃな…

その優しさに甘えてしまったら全てが壊れてしまう。そんな気がした。

リリア

ほれ、今だけ特別価格じゃ!

リリア

わしがお主をぎゅっと抱きしめてやろう

それでも尚、彼のその気持ちに触れる勇気が出ない。

吐き出してしまえばきっと楽だろう。

しかし、自分自身がそれを許さないのだ。

甘えてはいけないと。弱いままではこの先、押し潰されてしまう。

リリア

ほれ、どうした?

リリア

…来ないのであれば_

本音は甘えたい、甘えてしまいたい。

けれど、

一歩が踏み出せない…。

リリア

こちらから行こう

監督生

…えっ

監督生

ぇ、え、えっ…

監督生

ちょちょちょ、ちょっと待って…!ストップ!と、止まって先輩!

監督生

心の準備がっ…!!

こちらににじり寄ってくる彼は、とても楽しげな表情を浮かべている。

リリア

もう十分、『待て』はしたじゃろ?

リリア

これ以上は待てぬ

リリア

…観念せい!

監督生

ぅわっ…!

ぼふりとソファに体を投げた。

監督生

……

リリア

くふ、びっくりしたか?

むくりと顔を上げたリリアが、ぎょっとして目元をさすった。

リリア

おっと、少々度が過ぎたか?

特段、悲しいわけでも怖かったわけでもない。

ただなんとなく、泣きたくなった。それだけ。

リリア

おーおー、遠慮なく泣くがいい

喉の奥で嗚咽が引っ掛かる。

リリア

うむうむ、お主は偉いな

監督生

っ……

リリア

たまには『監督生』ではなく、お主を見せてくれてもわしは一向に構わないぞ

一度溢れてしまったものを止めることなどできない。

リリア

落ち着いたか?

監督生

はい

監督生

ごめんなさい、こんなお見苦しい姿をお見せしてまって…

リリア

何を言うか、言ったじゃろう

リリア

赤子は泣くのも仕事じゃと

リリア

泣きたくなったら、今度からはわしを呼ぶがいい

リリア

飛んでいく

リリア

…わし以外に、お主の隙間を侵されるでないぞ?

監督生

…?

その言葉の真意は分からなかったが、にこりとぎこちなく笑みを浮かべた。

オンボロ寮の監督生

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