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人々の泣き叫ぶ声。 鼻を突く、血の匂いと焦げた匂い。 人を奪う、銃声。 爆発の音。
伊作が着いた頃には、それが終わり、 誰も残っていない
───無惨な静けさだった。
伊作
掴む手は、全て冷たく、 誰の息遣いも聞こえることがない。
全ての人が、「生」を手放した後。
思い知った自分の無力さに、伊作は、
泣くことすらも出来なかった。
ただ、彼の寂しげな呟きが 夜に吸い込まれた。
伊作
彼の手に掴まれていた包帯だけが、 パタパタ、静かに風に靡いた。
遠い記憶。
留三郎
ずっと彼が自分を、 落とし穴から引き上げてくれた。
伊作
留三郎
同室じゃないか
その彼の声が、 絶望しつつも学園へ足を戻す 伊作の頭に響いた。
『優しさが散った。』