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レールの上の人生、切なすぎる、どうか青桃で幸せに結ばれて欲しいところだ
神ですか???? もしよければ後日談とかあればほしいです!
バドエンでもハピエンでもないこの感じが好きすぎる…😭 絵も小説も上手いなんて反則じゃないすか…
ねまてゃ
ねまてゃ
ねまてゃ
ねまてゃ
ATTENTION 青桃 学パロ 桃×モブ女表現あります
"許婚(いいなづけ)"
それは、本人たちの意志とは関係なく双方の親達が合意して結婚の約束を結ぶこと。
MOB1
MOB2
二限目が終わった休み時間。 許嫁と廊下を歩いていると、いつも通り生徒達が廊下にぞろりと顔を出し、俺たちに視線を注いだ。
桃
次々と飛び交う言葉の数々に、毎回俺は辟易する。 初めてこの光景を前にしたとき、日本中の大富豪が集まり偏差値も高いこの学園でもこんなに頭の悪そうな連中がいるものなのかと驚いた記憶がある。
MOB3
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彼女は男子生徒にそう返した後、俺の腕に自分の腕を巻つけてきた。 俺が思わず動揺していると、彼女は少し顎を上げて俺に合図した。 その意図を汲めないほど馬鹿では無い。
桃
俺は渋々、彼女の肩に手を乗せる。 するとキャー!なんて女子の黄色い歓声が湧き上がった。 .....失敗しなくてよかった。
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彼女が腰を折って丁寧にお辞儀し、上体を起こしたのを見計らって俺は手を差し出した。 彼女は笑顔で手を取る。その奥の感情が何も感じられない笑顔で。 そして互いの指と指と絡めた恋人繋ぎを俺たちを追い回す生徒たちに見せびらかしながら、移動教室へと向かった。
人気がだいぶ無くなって、足音だけが響く渡り廊下に辿り着く。 そこまで両者一言も発さなかったのに、彼女は突然口を開いた。
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落ち着いていて大人っぽい、だけど少しの怒りも感じられる声色。 先程までの大衆向けの高く柔らかい声とは大違いだ。
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淡々としているけれど、ふつふつと沸騰するような静かな憤りを感じる。 彼女は有名な企業の社長令嬢で、父親のことを心底尊敬しているらしい。 今の彼女の怒りの根本は、父親の経営事情が乱れるかもしれないという不安からきているのだろう。 俺にとっては、心底どうでもいい。
桃
俺は余計なことは付け足さず、ただそれだけを伝える。 彼女は納得したのかそうじゃないのかよく分からない溜息を零して、またそそくさと歩き始めた。
MOB4
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教室に入る寸前で、また別の生徒が現れて俺たちに視線を移す。 彼女が隣で建前用の声と表情に持ち替えたのを見て、俺も彼女に合わせて笑顔を浮かべてみせた。
先生
桃
教科書の内容を読み上げる先生の声が全く頭に入ってこない。 睡眠不足だからとか、勉強がものすごく嫌いだからとか、そんなのじゃない。 ただ、物思いにふけていた。
許婚.....父さんの会社の経営が若干右肩下がりだから、その打開策ということで本当に突然この結婚は決まった。 当たり前のように小学校受験を強いられ、当たり前のように俺が社長の座を継ぐ話が進み、当たり前のように許嫁が用意される。 全てがレールの上の人生なんて今までずっと楽しくも無かったけれど、まさか結婚相手まで自由にさせてくれないとは思っていなかった。
令嬢の彼女だって望んでいないはずなのに、あの女は本当に父親の為なら何だってするらしい。 従順な飼い犬のようなあいつを隣で見ていると本当に吐き気を催す。 こんな誰も幸せにならない婚約なんて、すぐにでもぶっ壊れればいいのに───
先生
桃
思考を断つように先生から名指しされて、しどろもどろに顔を上げる。 しまった。全然話聞いてなかった。
桃
先生
先生の冷たい言葉に、何も言えなくなってしまってただその場に立ち尽くす。 やがてクラスメイトの大量の視線に耐えられなくなり、俺は逃げるための免罪符を切った。
桃
俺は逃げた。 逃げたかったのはあの教室の空気だけじゃない。
許嫁の件、家の環境、茶化してくる気持ち悪い同級生、全て親にプログラムされた自分の将来。
走る気力こそなかったけれど、保健室の出入り口を堂々とスルーして、すぐ右に曲がれば見える階段を足早に登り始めた。 今逃げたところで今の悩みから全部解放させるわけじゃない。でもそれでいい。 逃げ切れるなんて思ってないけれど、ほんの少しの間心を避難させたいっていうそれだけなんだから。
桃
何段も階段を登って、遂に最後の段を登りおえたとき、見えたのは屋上.....のドア。もちろん鍵がかかっている。
そのドアの周辺の小さい踊り場の床に、そいつは座っていた。 彼は小説から顔を上げて俺を見るなり、驚いたようにその青い瞳を揺らす。 今まで幾度もここに来たことがあるけれど、授業を抜け出して来たのは初めてだ。
青
桃
俺はまろの隣に腰掛けて、クリーム色の壁に背中を預けた。 床のひんやりとした冷たさが、服を通して肌に伝わる。
桃
青
まろは閉じていた小説を再び開き、その長いまつ毛を揺らした。 俺は彼の左肩に自分の顎を置いて、紙に印刷された活字に目を通す。
桃
青
まろの隣に積まれた何冊かの小説。 どれも全部年季が入っていて、何度も何度もページを捲られたのだろうことがよく分かる。 まろは俺の方を見ようともしない。話しかけもしない。ただ俺がかけた言葉に必要最低限の返事をするだけ。 また彼の意識が小説へと引き戻されて、2人だけの空間に静寂が満ちた。
桃
桃
ページをめくる手が止まる。 俺の言葉足らずのセリフでも十分意味を汲み取ったらしく、まろは肩で深く息を吐いた。
青
桃
長い前髪が揺れるその奥で、まろは俺を真っ直ぐ見据える。
桃
青
俺は返事を待たずにまろの頬を両側から挟み、ぐいっと傾けてお互いの額をくっつけた。鼻と鼻の先がぶつかってしまいそうなぐらいの至近距離で、相手の息遣いまで聞こえてくる。
青
桃
桃
真っ直ぐ真っ直ぐ、その青い瞳の奥の奥を見つめる。その青黒い膀胱のもっと先にある思考の裏側に手を伸ばすように。
まろはしばらく黙って俺を見つめた後、その大きく見開かれていた瞳をすっと細めて、彼の頬に添えていた俺の手を優しく撫でて言った。
青
桃
桃
本当に結婚出来なくていい。でも、その3文字だけで満たされるから。 素直な俺の反応が意外だったのか、少し眉を動かしてから、その形の良い唇がそっと触れた。
彼の細い首に自分の腕を巻き付けて、もっともっとってねだるように少し爪を立てる。 いつもの俺のルーティーンみたいなもの。それをまろはしっかり理解して、長い舌が口内のもっと奥まで犯していく。
桃
軽く背中を手のひらで叩けば、すぐに唇が離れた。 口内を繋ぐ銀色の糸が、窓から差し込んだ太陽光に光る。
桃
何となく口にしただけだったのに、俺の発言に彼は何故か吹き出して笑った。
桃
青
青
桃
浮気、か。 これが父さんとか令嬢とか全校生徒にバレたら俺の人生全部終わるんだろうな。
桃
青
桃
今度は俺がはぁっと嘆息を着いてから、まろの青い瞳を見つめ直した。
桃
それだけ伝えると、またどちらからともなく唇が重なる。
......やっぱりお前は、「結婚しよう」っていう俺の言葉には答えてくれないんだね。
でもそれでいいよ。まろと結婚できる未来は無い。 俺の将来は全部レールの上で、全部決まってるんだから。 だったら答えなんて出さなくていい。
この白昼夢みたいな時間に、今は逃げていたい。
𝑒𝑛𝑑