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仮 彼 女 の 1  ヶ 月 。

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仮 彼 女 の 1 ヶ 月 。

2 - 2. ただの“名前”だけの彼女

♥

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2025年07月02日

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戸和 真梨江

付き合ってるって、マジ?

坂口 愛望

まさか、時田さんと?

野沢 麻衣香

全然話してなかったのにね〜、意外すぎ!

月曜の朝、教室はざわざわしていた。

廊下で誰かが言った噂が、教室中を駆け巡っている。

その噂の中心にいたのが───

杏璃だった。

時田 杏璃

(…始まっちゃったんだ、本当に)

机の上に視線を落としたまま、杏璃は静かにため息を吐いた。

視線の先には、何も変わらない教科書と筆箱。

でも、自分の中では“何か”が変わった気がしていた。

小茂田 千琴

おはよ、時田さん

隣の席の女子が、珍しく話しかけてくる。

時田 杏璃

あ…おはよう

小茂田 千琴

井阪くんと、ほんとに付き合ってるの?冗談とかじゃなく?

一瞬、言葉に詰まる。

だけど、約束は守らないといけない。

杏璃は、小さくうなずいた。

時田 杏璃

…うん。そう、だよ

それだけで、その子は「へぇ〜〜」と妙に納得した顔をして自分の席に戻っていった。

教室の前のほう、数人に囲まれて笑っている雄大の姿が見える。

変わらず、明るくて、クラスの中心にいる彼。

でも───。

時田 杏璃

(私とは、話さないんだ…)

“付き合ってる”はずの彼は、杏璃のことなど見向きもしなかった。

その日の、放課後。

杏璃は誰よりも早く教室を出ようとしていた。

カバンを肩にかけて、立ち上がろうとしたその時。

ふと、後ろの席に座っているはずの彼に、声をかけた。

時田 杏璃

ねえ…この関係って、意味あるの?

雄大は、少しだけ驚いたような顔をして振り向く。

井阪 雄大

…どういう意味?

時田 杏璃

“彼女”ってことになってるけど…今日、私たち、一言も話してない

時田 杏璃

ほんとに必要?私じゃなくても、よかったんじゃない?

言葉にすることで、自分の気持ちがはっきり見えてくる。

時田 杏璃

(なんでこんなに、胸が苦しいんだろう)

雄大は少しだけ黙った後、目をそらして答えた。

井阪 雄大

…今日の放課後は、用事があったんだ。別に無視してたわけじゃない

時田 杏璃

…そっか

それだけ。

彼はそれ以上、何も言わなかった。

杏璃はそのまま、教室を出た。

昇降口で靴を履き替えながら、心の中で自分に問いかける。

時田 杏璃

(“仮の彼女”なんて、やっぱり私には向いてない…)

でも、不思議と「やめたい」とは思えなかった。

───仮でもいい。少しでも、近くにいられるなら。

そんな気持ちが、杏璃の中に芽生えはじめていた。

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