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nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 病院パロ
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3,白いアネモネ
呼吸が浅くなると、時間の流れが歪む。
なつは、ベッドの上で天井を見つめながら、そんなことを考えていた。
酸素を吸うたびに胸の奥がじんわりと痛み、吐く息はかすれていく。
音のない世界に取り残されたような孤独が、じわじわと広がっていく。
昼の光がカーテン越しに滲んで見えた。
外ではきっと風が吹き、雲が流れているのだろう。
――その景色を、もう一度、自分の足で見に行ける日は来るのだろうか。
みこと
ドアの隙間から、みことが顔を覗かせた。
白衣の袖を軽くまくり、手にはファイルを持っている。
なつ
声が弱くなるのを自分でもわかった。
みこと
みこと
冗談めかした言葉の裏に、ほんの少しの本気が混じっていた。
みことはベッド脇の椅子に腰を下ろし、淡々とバイタルを確認する。
手際の良さと、患者との距離の取り方が絶妙だ。
みこと
なつ
なつ
みこと
短いやり取りのあと、みことは窓の外を見た。
みこと
なつ
みこと
そう言われても、今のなつにはベッドから立ち上がる力もない。
視界の端で、外の光が揺れているだけだ。
午後。
透析を終えたこさめが、廊下でぐったりと座っていた。
らんは廊下の窓から外を眺め、何かを考え込んでいる。
その姿を見て、なつはふと口を開いた。
なつ
こさめは目を細め、
こさめ
と答えた。
らんはしばらく黙ってから、
らん
と呟いた。
その声には、ほんの少しだけ熱があった。
夕方、みことが再び病室に来た。
みこと
なつ
みこと
半ば強引に酸素ボンベを持たされ、車椅子に乗せられる。
病棟の廊下を抜け、非常階段を少しだけ上がると、そこは屋上へ続く扉の前だった。
なつ
みこと
扉が開き、夕方の空気が流れ込む。
扉が開き、夕方の空気が流れ込む。
そこには、沈みかけた太陽が広がっていた。
オレンジ色の光が雲を染め、遠くの山の端に溶けていく。
風が頬を撫で、肺に新しい空気が入る感覚がした。
なつ
自然とその言葉がこぼれた。
みこと
みことは笑わないまま、なつの背後に立っていた。
なつ
みこと
その言葉が、夕日の光よりも胸に温かく残った。
夜。
ベッドに戻ったなつは、天井を見上げながら呼吸を整えていた。
呼吸はまだ苦しい。
咳も出る。
けれど、心のどこかで――また明日も夕日が見られたらいい、と思っていた。
それは、ほんのわずかな希望。
儚いけれど、消えてはいない。
この日以来、なつは空を見る時間が少しだけ増えた。
肺はもう以前のようには働かない。
それでも、夕日の色や雲の形に心を動かすことは、まだできる。
その感情を「生きたい」と呼んでいいのかはわからない。
けれど、あの夕日の色は、確かに胸に刻まれていた。
3・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡400
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コメント
8件
作品一つ一つにしっかりと意味があるの凄すぎる✨️花言葉とかにもこーゆー意味があったんだ!ってべんきょうにもなる!ってか普通に主さんの書き方が天才!!✨️
作風が好きです!毎日ありがとうございます
〜白いアネモネ、花言葉解説〜 「真実」の由来 白い花は西洋で「純潔」「無垢」の象徴。 そこから「偽りのない心=真実」という花言葉が生まれた。 「期待」「儚い希望」の由来 アネモネは早春に花を咲かせるけれど、花期がとても短く、すぐに花びらが散ってしまう。 その性質が「希望を抱いたとしても、長くは続かないかもしれない」という儚さと結びついた。