登山にやって来た俺と妻だったが登っている最中に落石により妻が頭部に怪我を負ってしまった。
普段ならば繋がるはずのスマホも何故か圏外。周りには不自然な程人が居ない。
夫
何でスマホが圏外なんだ!
このままじゃ妻の命が危ないっ!
夫
あれは...山小屋!?
数百m程度先に山小屋のような建物が見えた。地図にはこんなところに山小屋があるなんて書いて無かったが...?
夫
とにかく行ってみるしかない!
夫
誰かっ!誰かいらっしゃいませんか!?
俺は山小屋の様な建物の扉を叩き、一生懸命に声を出した。
すると
ガラッ
女性
中から5、60代と思われる女性が出て来た。
夫
妻が登山中に落石を頭に受けて意識が無いんです!
出血も止まらなくて...
女性
少し見せていただいてもよろしいですか?
そういうと女性は数十秒程度妻をジロジロと見て言った。
女性
夫
夫
どうにか妻を助ける方法は無いでしょうか!?
女性
一つだけ。奥さんを助ける方法
夫
それは本当ですか!?
女性は不吉に笑い言葉を続ける
女性
夫
何だっていい、妻が助けられるならそれで...!
女性
ではこの目隠しを着けてあなたの大事な物を想像して下さい。
夫
俺は目隠しを着けて考えた。 何が一番大切な物なのか。
何年も働いてやっと手に入れた夢のマイホームか? それとも愛車か? それとも...
考えても考えても答えは出ないまま数分が過ぎると
女性
目隠しを外してください。
夫
まだ俺は何を犠牲にするか決めてないんですが...。
女性
女性
奥さんを助けて欲しいと願ったのにいつまでも何を犠牲にするかウジウジと決めなかったから。
女性
何がどうなっても怒ったりはしないで下さいね?
夫
失礼ですが、何をおっしゃっているのか意味が分からな...
そう言いかけた所で強烈な眠気に襲われてしまい意識が遠のいた。
そして目が覚めると...
夫
ここは?
女性
あなた?
この天井。 この敷き布団。 まず間違いなくここは我が家だ。 だが何だこの気持ちは。 俺は何か大切なことを失っている様な...?
女性
冷めないうちにどうぞ。
夫
不思議な感覚に襲われながらも妻の作ってくれた料理に手をつける。
一口食べた所で感じる気持ち悪い食感。 ねちっこい油。 とても不快な味。 だが同時にすごく美味しいと思ってしまう自分もいる。 何だこの食べ物は!?
文句の一つくらい言ってやろうと妻の顔を見ようとした直後口内に料理の味が蘇る。
夫
いや匂いは...
思わず妻の顔を見る。 そして思い出した。
夫
俺の妻をどこにやった!!
女性
どうなっても怒らないでって?