い い よ

ふと名前を呼ぶと、

振り返って微笑むあなた。

いつからだろう、

君の笑顔を見ると 胸が苦しくなるようになったのは。

同じ笑顔なのに昔と何か違うの。

あの暖かさや優しさが 薄れてゆく気がするの。

どうしても高専(あそこ)にいた時の方が 楽しそうに見える。

あなたは本当にこれでしあわせなの？

⚠注意書き⚠

・夢主の心情多め ・描写少なめ ・いつもと少し書き方違います ・長めの読み切り ・自己満夢小説 ・懐玉・玉折、呪術廻戦0ネタバレ ・離反夏油 × 高専から一緒の夢主

⚠この夢小説は米津玄師 様の 「カナリヤ」という曲を参考にしています。

以上OKな方だけお進み下さい𓂃◌𓈒𓐍

9月、まだ暑さの残る秋口に、

あなたに言われた言葉。

日々やつれていくあなたを 見ているのが辛かった。

一緒に行けばまたあなたの 優しい笑顔が見れると思った。

だから一緒に来た。

旅は道連れ。 二人揃って呪詛師の世界に堕ちた。

美々子菜々子に笑いかける あなたの笑顔は、

慈愛に溢れていて、

聖母のようで、

なのにどこか冷めているんだ。

数年前、まだ高専にいた頃。

みんなで海に行ったことがあった。

五条があなたに水をかけると、

あなたは怒りながら水をかけ返す。

それをパラソルの下で眺める私と硝子。

あの時のキラキラしたあなたの笑顔が、

楽しそうな笑い声が、

頭に焼き付いていつまでも離れない。

「や、やめてくれ！」

「許してくｯ」

ﾄﾞﾁｬｯ

そう言って信者の非術師を殺すあなた。

あなたや菜々子や美々子がどれだけ人を殺しても、

あなたは頑なに私にはさせてくれなかった。

きっと逃げ道をつくってくれているんだ。

私があなたから逃げたくなった時の、 逃げ道を。

返り血を浴びた顔でそう微笑むあなた。

あなたの望む世界と 私の望むものが違っていること、

きっとどこかで分かっているんでしょう？

だのに私を高専から連れ出したのは、

私のあなたへの 愛に甘えているのでしょう。

弱いあなたは私が守るから。

弱者生存を重んじるあなたが、

非術師を冷徹な目で見るようになった。

それを隠さないようになった。

別に昔のあなたしか 愛せないわけじゃないけど、

昔のあなたを好いていたのは確か。

それでもいいよ、あなたとならいいよ。

もう二度とあの頃に戻れなくても。

もうあの時の笑顔が見れなくても。

あなたとならいいの。

最後まで歩いていこう。

夕日を眺めては瞳に涙を浮かべるあなた。

たまに見せるその表情。

儚くて、そして美しい。

あなたが何を 思い浮かべているのか分かって、

胸がズキンと痛んだ。

親友や学び舎を裏切ったこと、

私を連れ出したこと、

後悔しているんでしょう？

あなたの手に自分のそれを重ねる。

あなたに言い聞かせる。

自分で決めたそれに後悔している 間抜けなあなたを、

何より支えたいと強く強く思った。

いいよ、あなただからいいよ。

誰にも理解されなくても、

どんなに辛い道のりでも、

馬鹿げた願いでも。

2017年 12月24日

高専内の建物の影に 体を預けるあなたがいた。

もう、あなたって本当に馬鹿ね。

あなたとならいいよ。

最後に何も残らなくても。

こうなると分かっていた。

それでもあなたに着いて行ったのは、

あなたを止められなかったのは、

あなたの愛への甘えね。

いいよ、あなただからいいよ。

たとえ独りになってしまっても。

これは一人の男を愛し、追い続け、

信じ続けた女の話。

い い よ fin