しんぺい神
……

ひとらんらん
……

オスマン
……

兄さん
未だ連絡無し……か

「待つ」との姿勢を示した南部を治める領主及び権利者
ひとらんらん
待つって判断は、間違ってたんじゃ?

ひとらんらん
もし先輩なら、待つことなんてしない

ひとらんらん
あの人は、求めたら手に入るまで粘る人だ

ひとらんらん
だから、この軍に残り続けた

ひとらんらん
あの人は、そこらの女性より逞しいよ

しんぺい神
そんなこと…誰もが知ってるよ

しんぺい神
幹部候補から一般兵の地位までの下落を経験することなんてないからね

しんぺい神
そこから這い上がって

しんぺい神
僕らの誘いであっても、返り咲いた

しんぺい神
そんな人、この世にはなかなか存在しない

しんぺい神
そこには同感する

しんぺい神
けど、本部の皆は、ある意味先輩に似ている

オスマン
”全てを得ふこと、成すことを率先し、得るものを努力と評す”

オスマン
”一度手に入ったものは、必ず元に戻るし、それを倍にまでして手に入れる”

オスマン
その精神を、グルッペンを中心に持っているからね、皆

オスマン
それは時に武器となり、人を殺す凶器となる

オスマン
求めるという事は、最悪の場合、人を狂わす出来事を誘発されるから

兄さん
求められたくない人間は逃げ惑うが、追い掛けられるという行為自体に恐怖を感じる

兄さん
より理性をなくし視野が狭まり、時に自分の逃げ道を潰す

グルッペン達のやり方は、野生の獣そのものと言っても良いだろう
小動物を追い詰め、今にも喰らおうとしている凶暴な動物
しんぺい神
その逃げ道の先に……大型動物の味方がいれば、諦めがつく……

しんぺい神
簡単に言えば”絶望”しちゃうよね

しんぺい神
本能的にも、”逃げられない”って思っちゃう

しんぺい神
先輩は今、その状況にいる

しんぺい神
いやその手前かな?

しんぺい神
まだ逃げてるし

ひとらんらん
先輩の…恩師も逃げてたよね

兄さん
”土着神”だったか?

兄さん
幹部では無いのに、”神”の異名を持った軍人

オスマン
尚且つ、先代たちの教育係で……

しんぺい神
国家転覆を目論んだ犯罪者

ひとらんらん
世間的にはそう言われてる

ひとらんらん
けど、俺は違うと思ってる

オスマン
え?証拠十分で、処刑までされたよね?

オスマン
今更、無実の証拠でもあるの?

しんぺい神
ひとらんが疑問に思ってるのってさ

しんぺい神
”シャルロット家がなぜ、土着神に身内を渡したか”

しんぺい神
だよね?

しんぺい神
近親婚、外部の血を一切受け入れず他者を拒み続け、権力に固執していたあの家が

しんぺい神
なぜ、土着神に対して当主となる先輩を預けたのか

オスマン
噂程度だけど、その土着神もとい秋神という人物は貧困層出身だったらしい

オスマン
それが本当だと、余計に分からないよね

オスマン
権力に溺れ、それを欲するがあまり

オスマン
世間の目も気にせずに、近親婚を推し進めていた家系だ

オスマン
彼らにとって、高貴な血筋は有意義な武器でもある

オスマン
それを手放してまで、土着神という人物に預ける意味はない

兄さん
ましてや、軍部にそんな人間が行き来出来ていたのにも、疑問が残る

兄さん
今は無くなったが、昔は立場に関しての規制がとても多かった

兄さん
貧困層と富裕層で、住む場所が分けられていたぐらいだからな

兄さん
そのような時代で、ましてや女性が軍部に入隊なんて、有り得なかったはずだ

しんぺい神
確かに……でも、幹部内には女性の方もいらした

しんぺい神
その影響が、軍部にはあったのかも知れないよ?

ひとらんらん
とりあえず、シャルロット家は権力にうるさい

ひとらんらん
それなのに、自身より地位が低いとされる土着神に先輩を預けた

ひとらんらん
その意図があるのかは分からない

ひとらんらん
けど、それが先輩にとっては救いで、土着神とっては嫌な予感だったのかもしれない

しんぺい神
”嫌な予感”?

ひとらんらん
……

ひとらんらん
先輩は、いつも問題の渦中にいた

ひとらんらん
今の行方不明事件も、先代の自殺多発事件にも……根本には先輩が関わっている

兄さん
まさかだが、ひとらん

兄さん
それを【呪い】とでも言うのか?

ひとらんらん
いや!そうじゃない!

ひとらんらん
だけど……あまりにも先輩の身の回りで悲惨なことが起こりすぎてる

しんぺい神
誰かが仕組んでいるんじゃないか?ってこと?

しんぺい神
誰が、なんのために

オスマン
……

オスマン
シャルロット家の失脚及び先輩の殺害…だとしたら

しんぺい神
!?

ひとらんらん
!?

兄さん
おい、オスマン!

オスマン
あくまでも可能性の話だよ

オスマン
もし、先輩を含むシャルロット家に恨みを持つ者が居たとして

オスマン
次期当主とまで言われていた先輩を、易々と殺される訳にはいかない

オスマン
確か、養子になったのは先輩が10歳の頃

オスマン
まだ初等教育を受けて数年しか経ってない

オスマン
その程度だと、自分の身を守るのも拙かったはずだ

オスマン
いくら、戦場に愛された女神である先輩でも

兄さん
幼いが故に、総本山の人間が監視する訳にもいかなったのか?

ひとらんらん
あの家にいる、姿を見せない長老派閥は表に立つシャルロット家を駒としか見てない

ひとらんらん
それでも、サクラ先輩を亡くすのは惜しいと思ってたんじゃないかな?

しんぺい神
だから、長老のツテである土着神に白羽の矢が立った

しんぺい神
そして、何かの縁で先輩はそんな土着神を恩人だと崇めた……

しんぺい神
それが、誰かに仕組まれたシナリオだと疑わずに

実家、シャルロット家の話は全て彼らの推測に過ぎない
しかし、世間で知られているシャルロット家が本当ならば
しんぺい神
(嗚呼……この憶測が当たっていない方がいい)

しんぺい神
(けど、なんだろうな)

しんぺい神
(胸騒ぎがして、凄く気分が悪い)

しんぺい神
(これは……嫌な予感がする)

しんぺい神
(俺らの未来もひっくり返しそうな……大きな予感が)

兄さん
……嫌な予感がするな
