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しの
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絶対!付き合って欲しい!!
その夜、私はまたここに来た
いつもの場所
冷たい空気。
風が強い
胸の奥も、同じくらいざわついている
背後から声
振り向かなくても分かる
静かな返事
冗談も、からかいもない
私は杭を手にしたまま、振り返る
距離は十分。
あまり近づかないようにする
喉が乾く
今日、疑いが確信に変わる。
沈黙
逃げるなら、今。
でも…
あまりにも静かな肯定
胸の奥で、何かが割れた
「王家の吸血鬼」
私が追っていた存在
家族を…奪ったかもしれない一族
一歩だけ、近づいてくる
剣を強く握る
その目は真っ直ぐすぎる
逃げ場がない
声が荒れる
抑えられない。
心臓が止まりそうになる
ぞくりとする。
怖いはずなのに
嫌悪より先に、別の感情が込み上げる
ゆあんの声が低くなる
夜風が強く吹く
言葉が震える
ゆあんは、すぐに否定しなかった
目を逸らさない
嘘をついている目じゃない
でも。
ゆあんが、ほんの少しだけ目を伏せる
認めるんだ。
言い訳しない。
両手を広げる
無防備すぎる。
胸が痛い
こんな顔、ずるい、
声が掠れる。
まっすぐすぎる
逃げたい。
でも、私は一歩踏み出す
杭を、心臓の位置に向けてくる
距離が近い。
ゆあんの体温は低い
でも鼓動はある
震えが止まらない
任務
復讐
誓い
全部、頭の中で叫んでいる
それなのに。
剣は刺さらない。
私の方が。
ゆあんが、そっと囁く
前にも言われた言葉。
思わず胸ぐらを掴む
初めて、感情が溢れた
言葉が続かない
ゆあんは抵抗しない
ただ静かに見つめる
さっきとは真逆の言葉
でも、この言葉が心に刺さる
私は杭を落とした
金属音が、夜に響く
やっと絞り出した言葉。
ゆあんは微笑んだ
思わず睨む
完全な敵にはなれなかった
夜はまだ終わらない
吸血鬼とハンター。
それでも私は——
彼を、斬れなかった。