いるま
こさめ
暇72
すち
静かに音を立て、四人が部屋を後にする
残されたのは俺とみことだけ
LAN
瞼を閉じたみことに目を落とす
LAN
理由もなく俺はみことに謝る
LAN
LAN
LAN
みことは静かに、俺の独り言に付き合ってくれる
俺は幼い頃から、自分の感情が表現しづらく、自分でもよく分からなかった
それは家庭環境によるものなのか…はたまた、自業自得なのか
今となってはどうでもいい話だけど。
ただ、このような仕事をしている限り
自分の感情表現というのは大切になってくる気がする
メンバーや、他のグループ、他の活動者さん、スタッフさん
一番はリスナー
配信や日常動画
自分の言葉で何かと発信することは多い
というか、ほぼそう
活動で「しんどい」だったり「辛い」だったり
そういうマイナスな感情は勿論出さない
でも俺の場合、嬉しいだとか…そういうことさえも…
気づけば、俺はカッターを片手に鏡の前に立っていた
LAN
そう静かに呟き、カッターを自分の手首に、勢いよく振り下ろした
その時
一瞬、何が起こったのか分からなかった
気づけば、カッターを持っている方の手が
誰かの手によって、押さえつけられていた
?
LAN
俺の手を押さえていたのは
みこと
そう、先程まで眠っていたはずの「みこと」だった
LAN
みこと
みこと
LAN
LAN
みこと
LAN
みこと
LAN
「なんで」
そう吐き捨てたような口ぶりの彼の目にはハイライトがなく
「LAN」という人間が何処か別の所に居るような。
抜け殻のような声のトーン。
誰も寄せ付けないような、孤独の雰囲気。
背筋が凍るような冷たい視線。
この時、俺は初めて
「LAN」に対し、恐怖を覚えた
でもそれもほんの一瞬のこと
LAN
みこと
いつもの彼に戻っていた
…いや
正直俺は少し前から気づいていたのかもしれない
時々チラつかせる、彼の顔
俺がさっき恐怖を覚えた感覚
それがきっと…
本当の彼なのかもしれない、と
みこと
LAN
彼を救えるのは誰?
そう考えた時
誰一人、頭に浮かんでこないのは何故だろう
みこと
みこと
LAN
泣きたいわけでは無いのに
自然と涙が溢れ出てくる
みこと
LAN
みこと
LAN
いるま
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こさめ
すち
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俺達四人はずっとこんな雰囲気
まるでお通夜みたいな。
まぁそりゃそうか
多分、みんな同じ気持ちだろう
"なんでみことが"
冷静な今、色々な疑問点が出てくる
すち
そう
そもそもみことは何をしに外に出ていたのか
作業の合間にコンビニに行った、とか
俺達はそんな"事実"だけが知りたかった
いるま
暇72
こさめ
それと、俺が気になっている事がもう一つ
いるま
そう、LANのこと。
普段だったら通知したらすぐに返信がある
仕事人間のらんは、そういう奴。
寝ている時も、遅くても20分以内には返信が来る
今日のらんは約40分は遅れていた
それほど眠りが深かったのか、と考えるのが自然だろう
すち
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「ずっと無表情で外を眺めていたのが気になった」
それは俺も同じ
何を考えているわけでもなく
ただ、俺達と目を合わせようとしなかった
みことさえも見ようとしなかった
俺達から距離を置き…まるで「来ないで」と示しているようだった
こさめ
こさめ
いるま
すち
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いるま
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