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星乃一歌
望月穂波
結界が消えたあとの街は いつも通りの空気を取り戻していた。
静かで、何もなかったかの ような夕暮れ。
日野森志歩
一歌は少し離れた場所で まだ息を整えている。
全身が強張ったまま動けなかったけど 咲希の姿を見て少しだけ安堵していた
志歩と穂波は近づいて 笑うように言った。
日野森志歩
咲希
望月穂波
穂波は震える手で咲希の腕に 触れようとした。
その瞬間――
咲希
咲希の身体は、何かが切れたように すっと力を失って そのまま、地面に崩れ落ちた。
星乃一歌
一歌が、小さく声を漏らす
日野森志歩
咲希
日野森志歩
志歩が、引きつったように 口を開いた。
望月穂波
望月穂波
咲希
咲希は何も言わない。 ただ、倒れたまま動かない
日野森志歩
日野森志歩
星乃一歌
一歌の声が震えていた。
星乃一歌
胸の奥で、なにか冷たいものが 体全体に広がっていく。
星乃一歌
日野森志歩
望月穂波
日野森志歩
涙をこらえきれずに 穂波が崩れ落ちた。
望月穂波
日野森志歩
志歩が叫ぶ。 けれどその声も、どこか焦っていた。
穂波が泣きじゃくりながら 声を振り絞る。
望月穂波
望月穂波
日野森志歩
志歩は無言で咲希ににじり寄ると その肩に手をかけ、ゆさぶった。
日野森志歩
星乃一歌
一歌は、その光景を ぼんやりと見ていた。
ようやく我に返ったように 一歌が声を上げる。
星乃一歌
星乃一歌
望月穂波
穂波は震える指で スマートフォンを取り出す。
その必要は無いよ
唐突に、場違いなほど 落ち着いた声が響いた。
キュウべえ
一歌が振り向く そこにいたのは――
白くて、不気味なほど 感情のない目をした小動物。
星乃一歌
日野森志歩
望月穂波
望月穂波
穂波が泣きながら頼み込む。
キュウべえ
星乃一歌
一歌の問いは、感情が追いつかないままに吐き出された。
キュゥべえは、咲希の倒れている 場所に視線を向ける。
キュウべえ
キュウべえ
キュウべえ
時間が止まったような静寂 誰も動けない。
咲希の冷たい手が 目の前にあるというのに。
星乃一歌
この悪夢は、キュウべえの言う通り 夢なんかじゃない。
“忘れてはいけない痛み”だ。
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